自社コンテンツの収益を増加させるには、顧客単価を高める施策が重要となっています。
顧客単価を高める方法のひとつとして注目されているのが、「アップセル」です。
アップセルは顧客ごとの単価を高めるだけでなく、長期的な関係性を構築することにもつながるマーケティング施策になるでしょう。
一方で、アップセルの特徴や必要な準備を知らなければ、その成果を引き出すことは難しいです。まずは以下を参考に、アップセルの基本やポイントをチェックしていきましょう。
既存顧客や見込み顧客の育成については、こちらの『リードナーチャリング実践の6つのステップ』もぜひ参考にしてください。
アップセルとは?
アップセルとは、顧客に現在購入しているものよりも「高いグレードの商品・サービスへの変更」を検討してもらうための施策です。
顧客1人あたりの単価を高めることができ、新規顧客を増やさなくても利益を上げられるのが特徴となっています。
さらにアップセルは、顧客のLTV(ライフタイムバリュー)を上昇させることにつながる点でも注目されています。
LTVとは「顧客生産価値」を意味し、顧客1人との取引によってどれくらいの利益を得られたのかを確認する指標です。
アップセルによる顧客単価の上昇はそのままLTVの上昇に影響するため、企業の利益確保を実現する手段にもなります。
LTVについてはこちらで詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
アップセルには、例えば以下のようなパターンがあります。
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より高級な商品、サービス、プランの購入に乗り換えてもらう
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商品のまとめ買いを提案する
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定期購入コースの契約をおすすめする
現在の購入方法・内容と比較して、より高価なものにシフトしてもらうことがアップセルの基本です。
既存の顧客がターゲットになるためアプローチがしやすく、自社コンテンツの良さをさらに深く知ってもらうことができます。
アップセルによる顧客単価の増加は、有効な施策のひとつとなるでしょう。
クロスセルとの違いとは?
アップセルと一緒に使われる施策として、「クロスセル」があります。
クロスセルとは、顧客が購入するものとは別の商品やサービスをおすすめする手法です。
こちらも追加で商品購入を促すことで、顧客単価を上げることができるマーケティング施策となっています。
アップセルとは違い、クロスセルでは顧客が購入したものに関連する商品を紹介するため、顧客自信が気づいていない自分のニーズに合ったものを提供できる可能性もあります。
ECサイトでレコメンド機能によるおすすめ商品の提示などを行って、積極的なクロスセルを実施することもアップセルとは別の方向から顧客単価を高める方法となるでしょう。
なぜアップセルやクロスセルが注目されるのか?
近年アップセルやクロスセルに注目が集まっている理由には、顧客との関係性の変化にあると言えます。
かつてのマーケティングは新規顧客を増やすことを中心に、利益を高めていくことが重視されていました。
しかし、現代はあらゆる企業がECサイトなどを簡単に立ち上げることができるため、顧客にとっての購入先となり得る選択肢は豊富となっています。
そのため企業は既存顧客が自社コンテンツから離れていかないように、より深い関係を作ることにも気を配る必要が出てきたのです。
また、新規顧客の獲得と比較して、既存顧客を維持する方がコストが安いという背景も関係しています。
フレデリック・F・ライクへルドが提唱する「1:5の法則」によると、新規顧客の獲得は既存顧客を維持するのに比べて5倍のコストがかかるとされています。
コストバランスを考えるという意味でも、マーケティング手法の改善は必要とされていたのです。
このような理由から重要視されるようになったのが、アップセルやクロスセルといった顧客単価を増加させる手法です。
自社に多くの利益を提供してくれる顧客一人一人と、長期的に付き合いをしていけるような施策を考案することが、現代のマーケティングでは求められやすくなっています。
今後はこれまでのように多くの顧客に訴求しつつ、アップセルやクロスセルを狙って顧客単価を高めていくことが重要となるでしょう。
アップセルの対象となる顧客とは?
アップセルは、ターゲットとなる既存顧客を絞り込んだ上で行うべき施策です。
以下からは、アップセルの対象となる顧客の特徴を紹介します。
ロイヤリティの高い顧客がターゲットになる
アップセルでは、基本的にロイヤリティの高い顧客がターゲットになります。
ロイヤリティが高い顧客とは、自社のコンテンツに対して信頼や愛着を感じている顧客のことです。
顧客ロイヤリティが高いほど、こちらからの提案を聞いてもらいやすくなるため、アップセルやクロスセルといった提案が成功しやすくなります。
顧客ロイヤリティの高い顧客を見極めるためには、NPS(Net Promoter Score)を用いて数値化することが考えられます。
NPSで「コンテンツを誰かにおすすめする」と答えた「推奨者」の顧客を対象にアップセルを実施することで、成功率を高められるでしょう。
まだロイヤリティの低い顧客にアップセルを提案しても、受け入れられることは少ないです。
逆に企業からの提案を鬱陶しく感じられ、マイナスの効果を引き出してしまうこともあるでしょう。
アップセルを実施するときには、顧客のセグメントをしっかりと行った上で、ターゲットを選定することが重要です。
アップセルを実施するための準備
アップセルを実施するためには、いくつかの準備が必要です。
以下を参考に、アップセルを進めていくための基本的な準備についても確認しておきましょう。
顧客情報の収集と分析
アップセルを行うためには、顧客情報の収集と分析が欠かせません。
どんな特徴を持つ顧客が対象となるのか、自社コンテンツの何が気に入っているのかといった点を把握する
ことで、アップセルの詳細を設定できます。
CRMなどの顧客管理システムを活用し、まずは顧客情報の収集と分析を実施していきましょう。
リードナーチャリングを同時に進める
アップセルを行う際には、リードナーチャリングを同時に進めていくこともポイントです。
リードナーチャリングとは「見込み顧客の育成」のことで、顧客の将来的な購入を促していく手法を意味します。
既にロイヤリティの高い顧客だけに集中するのではなく、リードナーチャリングも積極的に行ってアップセルの対象となる顧客をさらに増やしていくことも重要です。
PDCAサイクルを回す
アップセルの実施時にも、PDCAサイクルを回して常に改善を目指していくことが求められます。
アップセルは顧客と長期的な関係を作っていく施策になるため、PDCAによるデータの蓄積が将来別の顧客へのアプローチなどにもつながっていくでしょう。
また、各部門と連携を行って得られた情報をフィードバックし、アップセルの施策をどんどん改善していくことがポイントです。
現場で得られた情報がそこでストップしないように、企業全体で情報を共有していくシステムを構築していきましょう。
アップセルの注意点
アップセルを実施する際には、いくつかの注意点もあります。
アップセルを成功に導けるように、注意点についても確認しておきましょう。
押し売りにならないように注意する
アップセルを行う際には、企業の利益を優先した「押し売り」にならないように注意する必要があります。
顧客のニーズとアップセルで紹介する商品にズレがあれば、それがどれだけ価値のあるものでも顧客からすれば押し売りと判断されてしまうでしょう。
あくまで顧客自らが「アップグレードしたい」と思わせる商品を選別し、自然な形でアップセルを行ってもらうのが理想です。
アップセルのタイミングを見極める
アップセルの実施は、タイミングを見極めることも重要です。
ロイヤリティの高い顧客であっても、新しいタイプの商品を初めて購入したタイミングでアップセルを行っても、商品をグレードアップさせるメリットを伝えづらくなります。
タイミングを誤るとアップグレード商品の価値を理解してもらえず、今後改めおすすめしづらくなるというデメリットがあります。
例えば顧客が現在の商品にある程度の満足を得つつ、さらに良いものを求めるタイミングを見計らって、アップセルを実施するのがポイントです。
タイミングに関してはもPDCAを繰り返し、自社コンテンツにとってもっともアップセルの成功率が高いタイミングを見つけていくといいでしょう。
アップセルによる顧客単価の上昇が企業を支える
アップセルによる顧客単価の上昇は、企業に長期的な利益をもたらします。
顧客との関係を良好に保ち、より良い商品やサービスを提供していくことは、今後も企業における重要な施策のひとつとなっていくでしょう。
この機会にアップセルの基本を確認し、自社コンテンツ上での具体的な施策につなげてみてはいかがでしょうか。
既存顧客や見込み顧客の育成については、こちらの『リードナーチャリング実践の6つのステップ』もぜひ参考にしてください。