2020年は新型コロナウイルスの流行によって、年始には予想もできなかった年となっています。こうした時代のBtoB営業は、もはや従来と同じ手法では通用しなくなっています。その背景にある顧客行動の変化、それに対応するための新しいBtoB営業のポイントについて解説します。
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これまでの営業スタイルは通用しない時代に
以前からさまざまな業界で進んでいたビジネスのデジタル化・オンライン化ですが、ここに来て一気に加速することが予想されており、これまでの営業スタイルが通用しない時代になっていくと考えられています。では、具体的に「これまでの営業スタイル」とは何を指すのでしょうか。
飛び込み営業やテレアポ
1つが、飛び込み営業やテレアポです。これらは古くからある手法で、「新人の頃によくやらされた」という社会人もいるのではないでしょうか。しかし、企業のセキュリティ概念が変わってきた現在では、迷惑行為としか受け取られない可能性があります。突然電話がかかってきたり訪問を受けたりしても顧客の心象を悪化させるだけで、成功率も低いのです。
また、人材育成面でも飛び込み営業・テレアポは効果的ではありません。成功率が低い手法なので、自然と求められるものは「気合い」や「ガッツ」になってしまい、KPIとしてもコール数や訪問数、アポの取れた数が重視されるようになります。しかし、成約率が低いからとにかくコール数を増やすというのは、効率的な手法とは言えません。成約までのプロセスを改善していく手法ではないため、業務が属人化しやすく、さらには営業担当者のノウハウ・スキルも育たないので、社員が辞めてしまうことも多くあるでしょう。
既存顧客へのルート営業だけでは先細りに
もう1つ挙げておきたいのが、既存顧客へのルート営業です。以前はルート営業のみで成り立っていた企業もありましたが、今後はほとんどの業界で新規開拓なしには生き残っていけない世界になります。
そもそも既存顧客とは信頼関係を構築できているので、商品は売りやすいものです。ただし、離脱された場合の対策が必要です。しかも、後述するように顧客行動は変化しており、離脱の可能性は残念ながら高まっていくでしょう。このため、新規顧客とも地道に関係を築き、既存顧客の離脱に常に備えておかなくてはなりません。
また、既存顧客だけに頼った事業構造では、新商品開発がしにくくなるというデメリットもあります。対象者やニーズが限られてしまい、盛り込める新しい観点が少なくなるためです。新規顧客を獲得し市場を広げていくためには、新商品が必要になることもあるでしょう。しかし、そのためにはまず、既存顧客依存型から脱却し新しい顧客の声を収集していくことが肝心になるのです。
顧客の行動は変わってきている
このように変化が求められるBtoB営業ですが、その背景には顧客行動の変化があります。
求められるのはソリューション
象徴的な要素として挙げられるのが、顧客がソリューション提案を求めるようになったことです。これは、多くの分野で画一的な商品を大量生産するビジネスモデルが立ち行かなくなっていることに遠因を求められるでしょう。消費者のニーズは、よりカスタマイズ・パーソナライズに向かっています。このような市場に商品を供給する企業も、当然ながらそれに対応していかなくてはなりません。このため、企業は取引先にも画一的な商品を求めなくなっています。画一的な製品やサービスを導入していては、自社の顧客にもフレキシビリティのあるサービスを提供できないためです。ここでサプライヤ企業に求められるのは、優れた機能を備えた商品力ではなく、自社の課題を本当に解決するソリューションなのです。
購買活動は急速にオンラインに移行
加えて、もう1つ重要な顧客行動の変化として挙げられるのが、購買活動のオンライン化です。2019年のガートナー社の調査によれば、企業が購買活動においてもっとも多く割く時間はインターネットでの調査です(27%)。一方、サプライヤ企業との面会は17%にすぎません。通常は複数社を検討しているので、1社あたりに割く時間は5~6%程度ということになるでしょう。これは、以前よりもサプライヤ側が顧客の意思決定を左右することが難しくなっていることを意味しており、従来型の営業が通用しないことが明らかになっています。
これからの時代のBtoB営業の姿
顧客行動が変化している現在、BtoB営業も変わらなくては生き残れません。新しいBtoB営業の姿について、いくつかのポイントを考えてみましょう。
Webを通じた情報提供が必須に
顧客行動がよりオンラインに移行しているということは、サプライヤ側としてもWeb上で顧客接点を作らなくてはなりません。この際に重要なのは、単純に自社の商品・サービスをWeb上で一方的に宣伝するのではなく、顧客の情報収集形態に合わせるということ。具体的には、顧客の困りごとを解決する「お悩み解決型サイト」が有効になるでしょう。Webで情報発信をすることで、自社の解決できる課題に興味を持っている新規の見込み顧客にアプローチすることが可能です。
顧客の購買を支援するバイヤーイネーブルメント
また、顧客が求めるものは商品力ではなく課題の解決であり、同時にその意思決定にサプライヤが影響を及ぼしづらくなっていることも述べました。このため、営業のアプローチとしては、売り込みではなく関係構築と課題を把握するためのヒアリングや有益な情報提供に主眼が置かれることになります。
日本ではまだそれほど広まっていませんが、米国ではこうした流れが先行し「バイヤーイネーブルメント(Buyer enablement)」という言葉も登場しています。これは、従来の自社の営業を主体とした営業活動の考えとは異なり、顧客の購買担当者を主体として彼らが「良い意思決定をできるよう支援する」活動と定義されます。先にも挙げたガートナー社が2018年に提唱した考え方です。具体的にサプライヤ側が行うこととしては、データの分析や適切な助言、他社との比較といった有益な情報を提供することになります。
→ バイヤーイネーブルメントについては、こちらの記事もご参照ください(BtoB営業に求められる発想の転換、バイヤーイネーブルメントとは?)。
顧客との関係構築を専門に担うインサイドセールス
また、同じく顧客との関係構築について注目されているのが、インサイドセールスです。従来の営業活動では、見込み顧客のリストが作成されれば、基本的にすべての顧客とアポを取り面談するのが営業担当者の業務でした。しかし、これでは確度の低い顧客にも足を運ぶこととなり、非効率です。インサイドセールスは電話やメールを使って顧客にアプローチし、一定の関係構築を図ってから営業にリードを渡します。この段階を踏むことで、営業担当者は確度の高い顧客とだけ商談することができるのです。
これは単なるテレアポとは異なり、顧客が購買ファネルのどの段階にいるのか見極め、適切な情報提供をすることで関係構築を図るという役割を担っています。この特徴から、長期的な顧客との関係維持が可能になるというメリットもあります。
→ インサイドセールスについては、こちらの記事もご参照ください。
重要なのは流れの構築と仕組み化
こうした新しい活動は、決して営業担当者による対面やビデオ会議での商談が必要なくなるということではありません。重要なのは、そこに至るまでに信頼関係を構築すること、そしてそのアクションがWebを通じて行われることです。
Webから流入した見込み顧客にインサイドセールスからアプローチし信頼を得ていれば、課題解決のための提案も受け入れられやすくなるでしょう。そして、この一連の流れを組織として作っていくことが今後のBtoB営業に求められることです。
2020年以降に予想される流れ
先に挙げたガートナー社によるバイヤーイネーブルメントのレポートが2018年だったように、こうしたBtoB営業の変化については数年前から語られてきました。しかし、2020年の新型コロナウイルス流行の影響で、この流れは急激に加速、パラダイムシフトが起きると予想されています。以下のような変化を改めて意識しておくべきでしょう。
非対面取引の加速
感染症拡大防止のために、オフィスに出社することが当たり前ではない時代になりました。働き方改革という側面での在宅勤務の普及が取り沙汰されていますが、これは従来のような対面取引が困難になり、減っていくということです。ビデオ会議が商談の主な場となり、さらにはオンラインのみで完全にクローズする営業手法も一般化しつつあるといえます。
インターネット上での情報収集の加速
また、見逃せないのが、展示会が中止になっていることです。これは大規模な情報提供のプラットフォームが1つ失われたと見るべきで、代替としてインターネットでの情報収集がこれまで以上に加速しています。企業側から見れば、ブログやお役立ち資料、ウェビナーといったWeb上での情報発信から顧客接点をつくる機会が増えているといえるでしょう。
営業担当者の力よりも組織的なアプローチが重要に
このようなトレンドに追随していくためには、マーケティング部門と連携した組織的なアプローチが欠かせません。営業担当者個人が案件を何とかできた時代は終焉を迎えています。
こうした流れに対応することは企業にとってのメリットも多くあります。というのも、Webマーケティングからインサイドセールス、そして商談といったマーケティング~営業の流れを構築することは、業務の属人化を防ぎ、より安定した商談・受注の創出を可能にするからです。
変わるBtoB営業が意味するもの
本稿で述べた顧客行動の変化は、今後も止まることはないでしょう。購買担当者に、幼少時から日常的にインターネットで情報収集をしてきたミレニアル世代がますます多くなっている今、取引のオンライン化は極めて自然な流れなのです。さらに2020年の新型コロナウイルス流行の影響で、この流れは急激に加速、パラダイムシフトが起きると予想されています。ここで重要なのは、営業担当者個人の直感でも「ガッツ」でもなく、いかに社内が連携して組織的にアプローチができるか。顧客を「プッシュ」しない営業スタイルに最初は慣れないかもしれませんが、むしろ複数の角度からより多くの施策を打っていくことが求められます。顧客の変化を正しく理解し、柔軟で強い組織づくりを目指していきましょう。
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参考: