インサイドセールスー新時代の営業必勝パターンを完全理解

インバウンドマーケティング

いま企業のマーケティング担当者や営業部門から熱い視線を浴びている「インサイドセールス」。コンテンツマーケティングマーケティングオートメーションなど、BtoB企業におけるセールス&マーケティングを大きく変えつつあるこの仕組みについて、その概要と役割、メリット、導入にあたっての注意点をご紹介します。

インサイドセールスとはなにか?

インサイドセールスはひと言であらわせば「内勤営業」。すなわち外に出ずに電話やメールを使って営業活動を行う部署のことです。アメリカで1980年代の終わり頃から使われ始めた言葉で、もともとは1950年代から行われていた「テレマーケティング」と区別するために登場しました。

テレマーケティングが電話による直接販売を目的とするダイレクトマーケティングの一種であるのに対し、インサイドセールスは販売やアポイントメント獲得(いわゆるテレアポ)を直接の目的としません。

BtoB企業におけるインサイドセールスは見込み顧客に対して電話やメールでニーズをヒアリングし、セミナーの案内や事例資料などの提供を通して検討の手助けを行うことで、まだ潜在的な状態にあるニーズの顕在化を後押しします。そして具体的な購買検討の準備が整ったところではじめてフィールドセールス部門にバトンタッチし、商談化していきます。

インサイドセールスは顧客が望まない限り「売り込まない」のが鉄則。

あくまで、見込み客に必要な情報を提供して、顧客の背中をやさしく押すのが役割です。現在はSaaS型のソフトウェアを販売するIT系、専門性の高い技術系のBtoB企業をはじめ、高価格帯の商材を扱うBtoC企業においても導入が進んでいます。

米国では2008年のリーマンショック以降、毎年7.5%以上のペースでインサイドセールス市場が成長。通常の外勤営業(フィールドセールス)からインサイドセールスへの営業リソースのシフトが急速にはじまりました。

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図1)「米国における営業時間配分の推移」出典:Bureau of Labor Statistics, TOPO 2015年3月

いまインサイドセールスが必要な背景

なぜいまインサイドセールスが注目されているのでしょうか?その背景には買い手側である顧客の行動の変化があります。

ネットで情報武装する購買者

過去20年の間に私たちの生活を変えた最大要因としてインターネットを挙げることに異存のある方は少ないと思います。インターネットの登場と普及は生活者のあらゆる行動を一変させましたが、購買行動はその最たる物の一つです。

生活者は購買行動において事前の情報収集活動に多くの時間と労力をつぎ込み、星の数ほどの選択肢の中から間違いのないベストな選択肢を選び取ろうとしています。

そしてこの行動は「商品が高額」で「検討期間が長く」「論理的な意思決定を行う」企業間取引(BtoB)において、より顕著であると言えます。

実際、企業間取引において

  • その意思決定プロセスの57%を営業担当者との接触前に済ませており(図2)
  • 情報収集においては企業のWebサイト、業界サイトや専門サイト、ニュースサイトといったオンライン上のコンテンツを重要視している(図3)

という調査結果が出ています。定期的に訪問してくるだけの営業担当者の情報源としての価値は大きく下がっていると言えるでしょう。

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図2) 出典:Corporate Executive Borad社 B2B企業1,400社の購買担当者に対する調査

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図3)「業務上の情報源における企業サイトの位置付け」株式会社トライベック ブランド戦略研究所

しかし、Web上での情報収集には「検索リテラシー」などとも呼ばれる一種の「コツ」が必要です。「概要」や「総論」のような情報は容易に検索可能ですが、情報ニーズが専門的になればなるほど、ニッチになればなるほど検索の難易度は上がります(日本語に限定すればなおのこと見つかる情報量が少なくなります)。

ここでインサイドセールの登場です。

興味をもって自ら情報収集をはじめた見込み顧客に対し、その個別のニーズに応じて適切なタイミングで適切な情報を提供し、買い手側の検討プロセスを後押しすることが、インサイドセールスには期待されているのです。

インサイドセールスの役割

インサイドセールスの役割は大きく次の3つに集約されます。

  1. 見込み顧客育成(リードナーチャリング
  2. 見込み顧客の絞り込み(リードクォリフィケーション)
  3. マーケティング部門と営業部門の橋渡し役(マーケティングプロセスの効率化)

一つずつ見ていきましょう。

1.見込み顧客育成(リードナーチャリング)

Webサイト訪問や展示会での名刺交換など、企業が接触する見込み顧客は多種多様です。しかしすぐに問い合わせ〜商談に繋がるようなホットリードはほとんど無い、というのは皆さんも実感しているのではないでしょうか。

実際、Webサイトを訪れる訪問者のうちすぐに問い合わせを行う「今すぐ客」は1%にも満たないのが現実です。

問合せをしなかったが見込みのある「これから客」を見つけ出し、「今すぐ客」へと育てるのがインサイドセールス最大の役割です。ここが「アポを取る」というテレマーケティングと大きく異なる要素です。(図4)

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図4)「Webサイト訪問者の内訳とインサイドセールスのカバー範囲」

2.見込み顧客の絞り込み(リードクォリフィケーション)

リードナーチャリングとセットで行われるのがリードクォリフィケーションです。

「これから客」に対して資料提供やセミナー等を通してニーズの育成をはかり、その結果見込み顧客にどのような態度変容がおきたか、ニーズの顕在化状況を評価します。

リードの中から購買の可能性が高そう=確度が高い見込み顧客を選別して営業部門に引き渡すことで効率の良い営業活動を支援する役割です。

この時、見込み顧客の状況(予算状況、決裁権など)や提供したコンテンツに対する行動(資料請求状況、セミナー参加状況、サイトアクセス状況など)を点数化(スコア化)して評価を行うことを「リードスコアリング」と呼び、この活動を支援してくれることから近年「マーケティングオートメーション」が注目を集めています。

下記(図5)に当社イノーバのスコアリング項目の一部をご紹介していますので参考にしてみてください。

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図5)「イノーバにおけるスコアリング項目抜粋」

3.マーケティング部門と営業部門の橋渡し役

BtoBビジネスにおいて、リードの「数」と「質」のバランスは永遠のテーマといえます。リード数をKPI(重要業績評価指標)とするマーケティング部門が一生懸命リードを取ってきても、売上をKPIとする営業部門は「ニーズが顕在化していない質の悪いリードをこんなに渡されても困る」とばかりにフォローを後回しに……

より確度の高い引き合い案件に注力する結果、大規模な展示会で数千枚の名刺を獲得したはいいけれど、商談化したのは結局数件だった…そんな笑えない話もしばしば耳にします。

実はこの笑えない話は、マーケティングプロセス上に存在するギャップが原因でおこります(図6)。

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図6)「マーケティングと営業の間に潜む溝」

インサイドセールスは、このマーケティングと営業の間にあるギャップを埋めてくれます。

潜在顧客のニーズが顕在化するまで、必要な情報を提供しながら丁寧にフォローし、見込み顧客化へと育てていきます。

リードクォリフィケーションを経て営業に渡すリードがどこからきたものなのか、どのような経緯を経て、どのような情報の提供を通してニーズが顕在化したのか、といった情報を合わせて伝えることで営業はスムーズに商談に入ることができます。

顧客側からすると、担当営業が来社してくれた時点ですでに現状や課題を把握してくれているのですぐに具体的な提案を聞くことができる、というわけです。(図7)

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図7)「インサイドセールスが繋ぐマーケティングプロセス」

インサイドセールス導入のメリット

インサイドセールスが上記の役割のもと、きちんと機能すると、下記のようなメリットがあります。

1.少人数で多くの商談を創出できる(コスト削減効果)

電話、メールでのフォローを主活動とするインサイドセールスは通常の営業(フィールドセールス)に比べ単位時間あたりの顧客接触数を増やすことができ、少人数で多くの商談を創り出すことが可能です。

2.商談からの受注率向上/リードタイムの短縮ができる(営業リソースの有効活用。効率アップ)

営業に渡すリードはしかるべきナーチャリングとリードクォリフィケーションを経ていますので「いざ営業が訪問するとただの情報収集だった」というアポイントメントを減らすことができます。

商談の粒がそろいますので、営業パーソン個人の力量による成約率の商談からの受注率が向上します。ナーチャリング活動によって顧客側にも一定の情報のインプットがありますので、初回訪問時から具体的な商談に入れます。

ナーチャリング期間はかかるかもしれませんが、商談化してからのリードタイムは短縮できると言えるでしょう。

3.個別の顧客ニーズを把握した上での適切な提案&サービス提供ができる(顧客満足度向上)

インサイドセールスによるリードナーチャリング活動の中心は「ヒアリング」です。見込み顧客の現状や課題を把握し、それに対して情報提供にて支援を行います。

前述の通り、リードクォリフィケーションを経て営業に渡される時にこれらの情報はすべて共有されますので、営業は初回から顧客の課題にピンポイントにささる、精度の高い提案を行うことが可能です。

顧客の課題に対する深い理解がありますので、提供サービスの品質も向上し、顧客満足度の向上も期待できるでしょう。

当社ではインサイドセールス導入から半年間で営業の生産性が3倍に改善しました。これは営業サイクルの短縮化と優良見込み顧客へのフォーカス、営業がクロージング業務に集中できるようになったことによる成果です。

インサイドセールス導入において気をつけるべきこと

良いコトずくめに見えるインサイドセールスですが、導入にあたって気をつけるべきポイントも存在します。

1.要員の確保は慎重に

インサイドセールスは比較的新しい職種です。経験者を雇おうと思っても転職市場にほとんど存在しないでしょう。

では営業経験者を、ということになりますが、通常の外勤営業経験者に求められる要件とインサイドセールスのそれは必ずしも一致しません。売上優秀な営業マンほど”売り込む”マインドセットを捨てられず、インサイドセールスとして機能しないケースもあるようです。

かといって、新卒などの未経験者を配置してしまうと、貴重な見込み顧客への初回接触時にいきなりリードを”潰してしまう”リスクもあります。

インサイドセールスに必要なのは見込み顧客に寄り添い、現状を理解する「聴く力」や、会話を通して課題に気付かせる「質問力」と言われています。

また、これは商材にもよると思いますが、さまざまな業界の動きや先端技術に対する「好奇心」や、顧客とのコミュニケーションから「学ぶ力」も重要ではないでしょうか。

2.KPIとリードの受け渡しルールを明確に

インサイドセールスをマーケティングと営業の架け橋として機能させるためにはリードの評価定義と受け渡しルールをきちんと定め、各部署で共通認識を持つことが極めて重要です。

これが徹底されていないと渡したはずのリードがフォローされない、複数の部署で同じリードをフォローするダブルワークが発生するといったトラブルに発展します。

また、陥りがちな間違いとしてインサイドセールスのKPIを「架電数」や「アポイントメント数」に置いてしまうことが挙げられます。

「架電数」だけを目指してしまうと相手の状況をよく検討せずに”とりあえず電話”するようなことなり、「アポイントメント数」だけを追ってしまうとニーズが高まっていないリードに無理に訪問を入れることで営業に無駄な稼働を強いることにつながります。

どちらもインサイドセールスの本来の役割を見失うことになりますので注意が必要です。

なお「リードがこの状態になったら営業に引き渡す」というリードクォリフィケーションの要件定義と共有が甘いと、部署間の責任のなすりつけあいにもつながりかねません。

ここは部門間でよく話し合い、各部門納得の上で目標値と合わせて決定することが重要です。下記(図8)に当社におけるインサイドセールスから営業への引き渡し条件の例をご紹介します。

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図8) 「イノーバにおけるリードクォリフィケーション要件例」

部門間で共有可能な顧客データベースの整備が前提

マーケティング、インサイドセールス、営業というマーケティングプロセスに関わる各部門が連携して一つのリードを受け渡しながら成約を目指して行くにあたり、顧客情報の共有は極めて重要です。

Excelによる管理も不可能ではないかもしれませんが、運用工数とリスクを鑑みると現実的にはSalesforceなどのはじめとするSFA/CRMといった営業支援、顧客管理システムや高度なリード管理を実現するMA(マーケティングオートメーション)の導入とセットで考えた方が合理的でしょう。

こういったツールを活用することで、各部門がリアルタイムにリードの状況を把握できるだけでなく、翌週や翌月といった近い将来に入ってきそうなリード数や商談数をある程度予測することができます。

また、成約後にリードソースや過去のコンテンツとの接触履歴を遡ることでキャンペーンやコンテンツの貢献度やROI(投資対効果)の算出と改善にも役立ちます。

インサイドセールスの活動に不可欠な「コンテンツ」

無事体制が立ち上がりインサイドセールスが稼働し始めると、多くの企業がすぐに直面する課題、それが「コンテンツ不足」です。

見込み顧客にさまざまな企業があるように、それぞれが抱える課題も千差万別です。ニーズが顕在化し、検討に入った後の製品紹介資料などは一つあれば良いですが、ニーズが潜在的な段階の見込み顧客に対しての情報提供には幅広いコンテンツが必要になります。

業種や業界、ビジネスモデル、取り組みの現状や担当者の知識レベルといった、見込み顧客の状況と情報ニーズに応じたコンテンツを用意しなければなりません。(折角個別の見込み顧客のニーズをヒアリングしたのに、結局全リードに対して同一文面のメルマガを一斉配信…では意味がありませんよね)

インサイドセールスの活動は見込み顧客の購買プロセスに寄り添って、必要なコンテンツを適切なタイミングで提供することで意思決定の後押しをすることです。インサイドセールスとコンテンツは両方揃って効果を発揮することを理解し、導入時にはぜひ両輪で検討することをおすすめします。

まとめ

いかがでしたか?

今日の内容をまとめたいと思います。

  • BtoBビジネスにおける買い手側の行動変化の結果、商談前の情報提供が重要になっている
  • 見込み顧客の検討段階に応じた情報提供を通してニーズを育て、商談を創り出す「インサイドセールス」に注目が集まっている
  • インサイドセールスの役割は主に3つ
    1. 見込み顧客育成(リードナーチャリング)
    2. 見込み顧客の絞り込み(リードクォリフィケーション)
    3. マーケティング部門と営業部門の橋渡し役(マーケティングプロセスの効率化)
  • インサイドセールスが機能すると
    1. 少人数で多くの商談を創出できる(コスト削減効果)
    2. 商談からの受注率向上/リードタイムの短縮ができる(営業リソースの有効活用。効率アップ)
    3. 個別の顧客ニーズを把握した上での適切な提案&サービス提供ができる(顧客満足度向上)
  • インサイドセールス導入のポイントは
    1. 要員の確保
    2. KPI、リード受け渡しルールの徹底
    3. 部門間で共有可能な顧客データベースの整備
  • インサイドセールスの活動にはコンテンツが不可欠

マーケティングプロセス自体に手を入れるインサイドセールスの導入にはそれなりの手間と時間がかかりますが、社内にノウハウが蓄積していくことで営業効率の向上、個人の能力に過度に依存した営業スタイルからの脱却をはかることができます。

新規顧客の獲得に課題を感じている方は、ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。

インサイドセールスについてさらに詳しく知りたい方は弊社にて定期開催している無料の「インサイドセールスセミナー」にもぜひご参加ください。マーケティングとインサイドセールスの現場を率いる責任者が、事例を交えて運用のポイントをお伝えしています。

また、BtoB企業におけるインバウンド型のマーケティングの実践にご興味がある方はeBook「実践BtoBマーケティング(入門編)」もあわせて参考にしていただければと思います。