マーケティング、とくにコンテンツマーケティングを行うのであれば、ペルソナは欠かせません。ペルソナといって一般的に思い浮かべるのは、BtoC、つまり消費者に向けたペルソナでしょう。
しかしBtoBのマーケティングにも、やはりペルソナは必要なのです。しかもBtoBのペルソナにはBtoCのペルソナとは異なる要素があります。果たしてそれはどのような要素なのでしょうか。ここではBtoBのペルソナについて、構成要素や作り方、注意点などを紹介します。
BtoBのペルソナとは
BtoCでは、商品を購入するのは個人です。そのため、ペルソナでもターゲットとする個人を設定します。
ペルソナとは
ペルソナとは、「自社の商品・サービスに対する理想の顧客」を具体的な人物像として設定し、モデル化したものです。架空のキャラクターではあるものの、実在の人物のように細部まで設定します。マーケティングにユーザーの視点を取り入れ、マーケティングの精度を高めるためのものです。
ペルソナについては、次の記事も参考にしてください。
「ペルソナ」とは?意味・マーケティングでの活用方法と作り方をわかりやすくご紹介
BtoBのペルソナとは何を指すか
しかしBtoBでのペルソナは、購買者だけをターゲットにしてペルソナを作成できません。購買に関しては、最低でも情報収集をする担当者と、最終的な決定権を持つ決裁者が存在するからです。よってBtoBのペルソナはBtoCのペルソナよりも作成しにくいといえます。
またBtoBでは個人を特定できないため、「ペルソナの設定が効果的ではない」と考えられる場合もあるのです。しかし担当者のペルソナと企業のペルソナの両方を設定すれば、効果のあるペルソナを作っていけます。
BtoBにおけるペルソナの構成要素5つ
BtoBのペルソナは、次の2つの要素を兼ね備えています。
- 企業のペルソナの要素
- 購買担当者、最終決定者のペルソナの要素
よってBtoBのペルソナは、BtoCのペルソナよりも多くの構成要素を持っているのです。BtoBのペルソナの構成要素は、企業情報、基本所属、職務情報、定性情報、情報収集傾向の5つにわかれます。ここからはそれぞれについて見ていきましょう。
企業情報
企業に関する情報です。ペルソナを作成したい企業の業種 / 業界、企業規模、売上、市場成長トレンド、所在地、企業カルチャー、業界内ポジションなどが構成要素になります。
基本所属
企業の中にいる個人の情報です。マーケティングによってリーチしたい人物、つまり情報収集の担当者や最終決定者の構成要素ではあるものの、どちらで作成するかはマーケティングの段階により異なります。
年齢、性別、職種、役職、年収、学籍、居住地、家族構成などが構成要素です。
職務情報
「基本所属」で定めた人物の業務に関する情報です。主な業務内容、業務上のゴール、ゴール達成を阻む課題、追っている KPI、購買プロセス上の役割、決裁権の有無と範囲などが構成要素になります。
定性情報
ペルソナの人物像です。BtoBではBtoCよりもこの情報の重要度は低くなります。しかし商品やサービスに関する認知を得るには、不可欠な要素です。
たとえば、性格、心理的傾向、興味、関心事、プライベートでの悩み事、消費・購買傾向、よくある購買動機、よく行くお店・エリア、趣味・好きなブランド、支出の多い分野などが構成要素になります。
情報収集傾向
潜在顧客に認知してもらうためには、ターゲットがどのように情報収集しているかを調べる必要があります。たとえばよく見るTV、よく読む雑誌、よく見るWebサイト、よく使うデバイス、よく使うアプリケーションなどが構成要素です。
BtoBにおけるペルソナの作り方
ここからは、BtoBマーケティングにおけるペルソナ作成の手順を紹介します。
定量情報を集め、対象セグメントを決める
まずこれまで集めた顧客情報から、定量情報を集めて、それをもとに既存の顧客をセグメントします。
分類に利用する「定量情報」とは、年齢や性別、職業、居住地、購入している商品・サービスなどの属性を中心とした情報です。数字で明確に表せるデータが多く、既存の顧客情報に含まれているものもたくさんあります。
セグメント分けしたものから、ペルソナ作りの対象となるセグメントを選びましょう。対象となるのは、顧客の中でも数の多いセグメント、有望なターゲットとなるセグメントです。
定性情報を集める
ペルソナを作成すると決定したセグメントから、代表的な顧客についてインタビューを行い、定性情報を集めます。1人ではなく、最低でも数人へのインタビューが必要です。
ターゲットに関する情報をどこから収集するかについては、次の記事を参考にしてください。
顧客インサイトの抽出とグループ化
それまで集めた定量情報と定性情報を合わせ、ペルソナを構成すると考えられる要素を抽出します。抽出した要素から類似したものを集めてグループ化し、そのグループの特徴を整理して可視化したあと、ラベリングしていきましょう。
スケルトンの作成
グループのなかで多くのメンバーに共通する要素や特に重要と考えられる特徴を「重要な要素」として選び、ペルソナの骨格(スケルトン)を作成します。スケルトンとは、ペルソナにとって重要な要素を一覧にまとめたものです。
ペルソナの作成/ストーリー化
スケルトンに肉付けしながら、具体的な人物像を作り出しましょう。具体的なストーリーや背景、エピソードを加え、スケルトンや要素の羅列から疑似人格、キャラクターを作り上げます。
こうして作り上げた疑似人格が「ペルソナ」です。
ペルソナは1つの商品に1つと決まっているわけではありません。「ターゲットとなるセグメントが絞りきれない」「同じくらい人数の多いセグメントがいくつかある」場合、複数のペルソナを作成します。
BtoBにおけるペルソナ作成での注意点
ペルソナの作成には、次のような注意点があります。それぞれについて見ていきましょう。
思い込みを捨てて作成する
ペルソナは、マーケティング担当者のイメージする理想の顧客ではありません。あくまでも顧客から情報を集め、データや合理的な根拠にもとづいて作成するものです。より実態に近いペルソナを作るよう心掛けましょう。
作成したペルソナは検証する
完成したペルソナは、直接顧客に接する機会の多い営業に見せて、「リアルな人物像」「顧客にいるタイプ」になっているか、確認してもらいましょう。よりリアリティのある疑似人格の作成が重要だからです。
定期的に見直す
顧客の課題やニーズは日々変化します。ターゲットとする顧客層が1年前と変わっているかもしれません。作成したペルソナは、定期的に見直し、ブラッシュアップしましょう。マーケティングや営業活動を通じてチェックしてもらい、そこから改善する流れを繰り返して、リアルな顧客像に近づけていきます。
最後にカスタマージャーニーマップを作成する
ペルソナを作成したら、最後にカスタマージャーニーマップを作成します。
カスタマージャーニーとは、顧客が商品やサービスを知り、最終的に購買するまでのプロセス、つまり商品の認知から、思考や行動が変化して購買にいたるまでの流れを時間軸で表したものです。認知から購買までの各段階に合わせてマーケティングを行います。
カスタマージャーニーを作るには、顧客の視点が必要です。そのためには、作成したペルソナが重要な役割を果たします。
BtoBでも効果的なマーケティングにはペルソナの作成が重要
BtoCならペルソナを熱心に作成しても、BtoBでペルソナを作成する企業は少ないかもしれません。またターゲットを企業と考えると、ペルソナという発想は馴染まないという意見もあります。
しかしターゲットが企業であっても、実際に意思決定を行うのは人間です。ペルソナの作成によって顧客視点を導入し、マーケティングの精度を高める点では、BtoBでも変わりはありません。
BtoBでもペルソナを作成してみましょう。それによりこれまでと異なる発見やアプローチが可能になり、マーケティングの効果をこれまでより大きく生み出せるかもしれません。