コンテンツマーケティング提案の基本と実践方法
近年、デジタルシフトが加速する中で、コンテンツマーケティングへの注目が高まっています。自社の強みを活かした価値ある情報を発信し、顧客に選ばれるブランドになるには、戦略的なコンテンツマーケティングが不可欠です。
しかし、コンテンツマーケティングを成功に導くには課題も多く、社内の理解と協力を得ながら、体系的な取り組みを進めていく必要があります。本記事では、説得力のあるコンテンツマーケティング提案の作り方から、社内を巻き込んで成果を出すための実行プロセスまで、実践的なノウハウを惜しみなくお伝えします。
コンテンツマーケティングとは何か
コンテンツマーケティングの定義
コンテンツマーケティングとは、顧客にとって価値のあるコンテンツを創造・配信し、顧客との関係性を構築しながらビジネス上の成果につなげていくマーケティング手法です。
ただ単にコンテンツを量産するのではなく、ターゲットとなる顧客像(ペルソナ)を明確にした上で、顧客が抱える課題やニーズに寄り添った有益なコンテンツを、適切なタイミングで届けることが肝心です。
コンテンツマーケティングの目的と効果
コンテンツマーケティングを行う目的は、大きく以下の4つに集約できます。
- ブランド認知の向上
- 見込み客の獲得
- 顧客との関係性強化
- 顧客のロイヤリティ向上
コンテンツを通じて自社の専門性や思想を伝えることで、ブランド認知や信頼を高められます。また、顧客の課題解決に役立つ情報を継続的に発信することで、問い合わせや商談といったコンバージョンにつなげやすくなります。
コンテンツは購入後の顧客教育やサポートにも活用でき、満足度を高めリピート率のアップやアップセルにも一役買います。顧客ひとりひとりとの絆を深められるのも、コンテンツマーケティングの大きな魅力と言えるでしょう。
コンテンツマーケティング提案の作り方
提案前の準備 - 現状分析とゴール設定
自社の課題と目標を明確化
提案を作る前に、自社の置かれている状況と達成したい目標を整理することが重要です。
- 現在の認知度やブランドイメージはどうか
- どのような顧客にアプローチしたいか
- 競合他社に対する強みや差別化ポイントは何か
- コンテンツを通じて実現したいゴールは何か
定性・定量の両面からしっかりと分析し、コンテンツマーケティングに取り組む意義を明らかにしましょう。漠然とではなく、具体的な数値目標を設定することも忘れずに。例えば、「1年後に月間3,000人の見込み客獲得」「新規顧客の獲得コストを20%削減」など、明確なターゲットを持つことが大切です。
ペルソナの設定とカスタマージャーニーマップの作成
効果的なコンテンツを制作するには、ターゲットとなる顧客像を具体的にイメージする必要があります。ペルソナのプロフィールを詳細に設定し、リアリティのある人物像を描き出します。
- 性別・年齢・職業・役職
- 日頃の情報収集の仕方
- 抱えている悩みや課題意識
- 価値観・趣味嗜好
- 当該サービスに期待すること
これらを洗い出した上で、カスタマージャーニーマップを作成します。顧客が抱える課題が発生したところから、解決に向けて情報を集め、検討・比較を経て意思決定に至るまでのプロセスを可視化するのです。
顧客視点に立って、それぞれのフェーズでどのような情報を求めているかを推察することが肝要です。カスタマージャーニーに合わせた適切なコンテンツを用意することで、成果に直結しやすくなります。
提案書に含めるべきポイント
コンテンツ戦略の概要
提案書では、コンテンツ戦略の全体像を示すことが求められます。
- ペルソナ像とカスタマージャーニー
- コンテンツの方向性とテーマ領域
- 狙うべき検索キーワード
- 各フェーズに適したコンテンツ案
- 最適な発信チャネル
これらを簡潔にまとめ、コンテンツを通じてどのように顧客に価値を提供し、自社のブランディングや見込み客獲得につなげるのか、ストーリーを描きます。
ゴールまでの道筋を明示しつつ、社内の関係者が戦略の全貌をイメージしやすいよう、図解を効果的に活用するなど、分かりやすさも重視しましょう。
具体的な施策案
コンテンツ戦略を実行に移すための具体的な施策案も、提案書には不可欠です。
- 各フェーズ毎のコンテンツ企画
- ブログ記事・動画・資料などコンテンツ別の制作計画
- オウンドメディアの設計
- SNS施策
- メルマガ施策
- コンテンツ連携等の導線設計
施策の優先順位やステップについても言及し、PDCAを回しながら効果を最大化するためのプロセスも併せて提案します。
また、SEOを意識したコンテンツ設計、ユーザー体験を高める工夫など、戦術面のポイントにも触れ、専門性の高さをアピールするとよいでしょう。
運用体制とスケジュール
コンテンツマーケティングは一朝一夕で成果が出るものではありません。継続的に高品質なコンテンツを量産し、地道に発信し続けることが求められます。
提案書では、社内の各部署の協力を仰ぎつつ、円滑にコンテンツ制作・発信を進められる運用体制を提案します。外部リソースの活用も視野に、最適な役割分担を設計しましょう。
加えて、コンテンツ制作や公開までのスケジュールを示すことも重要です。ロードマップとして提示し、関係者が見通しを持てるようにします。
ただし、あまり細かく固定的なスケジュールを立てるのは賢明ではありません。実施しながら得られる気づきを柔軟に取り入れ、軌道修正できる余地を残しておくことが肝心です。
予算とROIの予測
提案内容を実行するための予算規模も明記しましょう。社内稟議を通すためには、費用対効果の見込みを示す必要があります。
投資対効果(ROI)を予測するためには、類似事例などを参考にしつつ、獲得リード数や成約率などをシミュレーションします。あくまで机上の計算にはなりますが、各施策の期待効果を可能な限り定量的に示すよう心がけましょう。
初期の段階では顕著な成果が見込めないケースも少なくありません。長期的な視点を持ちながら、トライアンドエラーを重ねる必要性についても言及すると説得力が増します。
コンテンツマーケティング成功のカギ
一貫性のあるメッセージと価値提供
コンテンツマーケティングで成果を上げるには、個々のコンテンツの品質もさることながら、全体を通した一貫性が重要になります。
発信するメッセージや切り口に一貫性を持たせ、ブランドの世界観や独自の視点を確立することが求められます。それぞれのコンテンツが別個に存在するのではなく、有機的につながり、相乗効果を生み出せるよう設計します。
一貫性を保ちつつも、顧客との接点となる多様なフェーズに合わせ、コンテンツの表現を変化させることも肝心です。ペルソナの課題解決に寄り添いながら、絶え間なく価値を提供し続けることを意識しましょう。
顧客視点に立った有益なコンテンツ
より効果の高いコンテンツは、企業視点ではなく顧客視点で制作されます。
ペルソナを深く理解し、共感することが出発点です。表面的な課題だけでなく、深層心理にあるニーズにも届く情報や示唆を盛り込みます。その課題が「なぜ」生じ、「どのように」解決できるのか、具体的かつ本質的な情報をまとめましょう。
コンテンツを通して、顧客の意思決定をサポートする姿勢が重要です。ときには、業界の常識や自社の価値観を超えた斬新な切り口を打ち出すことで、強烈なインパクトを残すことも可能です。
ただし、売り込みがましい印象は禁物です。顧客の立場に立ち、純粋に役立つ情報を心を込めて届けることが何より大切だと肝に銘じましょう。
マルチチャネルでの効果的な配信
コンテンツの品質と並んで重要なのが、配信方法の最適化です。
オウンドメディア、ソーシャルメディア、メールマガジン、外部メディアなど、顧客との多様な接点を抑えた上で、最も効果的なチャネルを選択し、連携させることが求められます。
例えば、オウンドメディアの記事をSNSで拡散したり、コラムと連動したメルマガを配信したりと、コンテンツ同士を有機的に結びつけることで、接触機会を増やし、エンゲージメントの向上も狙えます。
また、検索意図に合わせたSEO施策を講じたり、ターゲティング広告と組み合わせたりと、複合的なアプローチを仕掛けることも有効でしょう。顧客の行動特性を見極め、適切なチャネルとフォーマットでコンテンツを届けることが肝要です。
PDCAサイクルを回す継続的改善
コンテンツマーケティングは継続的なPDCAサイクルの中で、磨き上げていくことが重要です。
初めから完璧を目指すのではなく、仮説を立ててコンテンツを発信し、効果検証とフィードバックにもとづいて改善を積み重ねることが成功の鍵を握ります。
数値を見ながら冷静に分析を行い、より効果の高い打ち手を見出していきましょう。最新のマーケティングトレンドにも常にアンテナを張り、ユーザーの嗜好の変化も見逃さないようにします。
外部環境の変化に合わせて方針を柔軟にアップデートできるかどうかが、コンテンツマーケティングの成否を分けることにもなります。仮説検証を素早く回しながら、コンテンツの質とプロセスを磨き上げることが求められるのです。
提案後の実行プロセス
社内の巻き込みと体制づくり
提案が承認されたら、いよいよ実行段階に移ります。
単にコンテンツを量産するだけでは、真の成果は望めません。社内の巻き込みと部署間連携が何より重要になります。
提案段階から、経営層や関連部署とコミュニケーションを重ね、コンテンツマーケティングの意義を共有しておくことが望ましいですが、本格始動に際しては改めて方針を説明し、協力を仰ぐ必要があります。
特にコンテンツの源泉となる情報を持つ部署との連携は欠かせません。定期的な情報共有の場を設けるなど、社内の知見を吸い上げる仕組みをつくりましょう。外注する場合も、発注先とのスムーズな意思疎通が求められます。
キーパーソンを集めた社内チームを編成し、明確な役割分担のもと、一丸となって推進できる体制を整えることが肝要です。
コンテンツ制作・公開・運用
実際のコンテンツ制作と公開、運用段階では、以下の点に留意しましょう。
高品質なコンテンツ制作
提案書で示したコンセプトやテーマに沿って、一つひとつのコンテンツをていねいに磨き上げることが重要です。
ただ単に量をこなすのではなく、読者にとっての有益性を追求します。インパクトのあるタイトル、読みやすい文章、ビジュアルの活用など、読者を引き込む工夫を凝らすことも必要です。
SEOを意識し、検索に強い構成や見出しを工夫すること、信頼を高めるために根拠となるデータを示すことなども重要なポイントとなります。
適切なタイミングでの公開
コンテンツの公開にあたっては、提案書で想定したスケジュールを可能な限り遵守しましょう。ただし、タイムリーな話題を取り入れるなど、臨機応変な対応も求められます。
公開後は、早い段階からアクセス解析を行い、ユーザーの反応をモニタリングします。良質なコンテンツは、公開直後からソーシャルでのシェアなどでバズる可能性もあるため、広がりを見逃さないようにしましょう。
また、公開後のPDCAサイクルを効果的に回すためにも、定期的に効果を振り返る場を設けることが重要です。
効果的な運用とコンテンツ改善
コンテンツの運用段階では、PDCAサイクルをしっかりと回し、継続的に改善を図ることが何より大切です。
アクセス解析ツールを駆使し、ユーザーの行動や反応を詳細に分析しましょう。オウンドメディアへの流入経路、ページ滞在時間、離脱率、CVRなど、重要指標をこまめにチェックします。
SNSでのエンゲージメント、コメントやシェア内容などにも目を配り、コンテンツに対する評価や課題をできるだけ具体的に把握することが重要です。定性的な声にも耳を傾け、ニーズの変化を読み取ります。
数値に基づく仮説と施策を設定し、コンテンツのブラッシュアップや最適化を図ります。時にはテーマ設定の見直しが必要なこともあるでしょう。環境変化にも臨機応変に対応し、修正を加えながら運用の最適化を目指すのです。
コンテンツマーケティング成功事例
BtoB企業の事例
株式会社インテック|ターゲット層に合わせたSEOコンテンツで流入セッション数が3倍に増加(イノーバ事例)
株式会社インテックは、1964年に富山計算センターとして富山県で創業。現在はIT技術の研究・開発からアウトソーシングまでを一貫して支援するトータルソリューションを提供されています。
同社は、Webサイト上に「Bizコラム」というオウンドメディアを立ち上げ、お客様の課題解決のための有益な情報を発信しています。しかし、社内にリードを最大化するためのノウハウが不足していました。
そこで、イノーバのBtoBマーケティング伴走型支援サービスを導入。1年後の目標セッション数を7カ月で達成。コラムページの集客数が半年間で3倍以上になり、課題解決を目的としたユーザーの流入が流入全体の21%から33%に上昇しました。
ダイキン工業株式会社|獲得リードの半数近くが商談化!Webサイトが営業ツールへと進化(イノーバ事例)
ダイキン工業株式会社は、1924年に創業した総合空調メーカー。現在、国内空調事業ではシェアNo.1を維持しています。
同社では、Webサイトが営業ツールのひとつとして認識されておらず、営業担当者に活用されていませんでした。また、Webサイト運用に対する知見をもった人材がおらず、どうやって有益な情報をお客様に届けるべきか、手法が確立できていませんでした。
そこで、イノーバのBtoBマーケティング伴走型支援サービスを導入。アクセス数が前年比で約120~130%になりました。伴走型支援サービスを受け始めて4カ月後の獲得リード数が730件、そこからの商談化が345件、見積もり提出数が185件と、リード獲得から商談化、ご提案までの流れが確立されました。
東京エレクトロンデバイス株式会社|成果の出るコンテンツでリードを獲得。営業部門にも期待されるサイトへ(イノーバ事例)
東京エレクトロンデバイス株式会社は、半導体や電子デバイスを扱うエレクトロニクス商社としてスタート。現在は、IoTソリューションの提案、構築やサポートなどを提供しています。
同社では、戦略商材である「Microsoft Azure」の認知獲得において、Webサイトのアクセス数が伸びず、リードを獲得できていませんでした。
そこで、イノーバのBtoBマーケティング伴走型支援サービスを導入。アクセス数が大幅に伸び、月次のホットリード獲得目標に対し、最大で2倍を超える成果が出ました。また、社内においてWebサイトの重要性が認識され、マーケティングプラットフォームとしての活用が進みました。
BtoC企業の事例
Lidea(ライオン)
ライオン株式会社の暮らしのメディア「Lidea」では、SEOと連動の強いストック型、ニュース性のあるフロー型の記事をバランス良く2週に1本以上のペースで更新。ストック型コンテンツでは、子育ての悩みにキャッチーに答えることで認知と興味関心を獲得しています。
ライオン商品を使ったレシピや掃除、料理、インテリア、家事、ペットまで、暮らしに関するお役立ち情報をファミリー層中心に発信し、2014年10月スタートのSNSでは、FacebookやInstagram、TwitterやLINEなどでも数十万人規模のフォロワーを獲得。
キーワードから流入した読者を自社製品ページへと誘導し、関連するライオン製品をオススメしています。また、会員登録をすると製品のモニターキャンペーンに応募できるなど、ユーザー参加型のキャンペーンも実施し、ファンとの絆的な関係を築いているのが特長です。
YOURMYSTAR STYLE(ユアマイスター)
ハウスクリーニングなどのサービスECプラットフォームを運営するユアマイスター株式会社の情報メディア「YOURMYSTAR STYLE」。
SEOと連動性のある手法で、1年で流入数が2倍、CV(コンバージョン)数が6倍に伸ばしています。SNSで知名度を上げることで、オウンドメディアへの流入数を最大化できただけでなく、新規を直接誘導する「成約につながる導線」に成功し、CVに繋げています。
Instagramを中心としたSNS運用では、ハッシュタグのボリュームを独自に算出し、ハッシュタグの組み合わせを変化させるなど、戦略的に運用。1投稿につき5~10枚の画像を使用していて、写真的な美しさと比較しやすさを兼ね備えて印象的。1つの投稿ですべてが伝わらないような「投稿ドラマ」のようなフォーマットを確立している点も特徴です。
オウンドメディア「YOURMYSTAR STYLE」では、サービス全般の基礎的なオリジナルコンテンツを充実度高く公開。ECページへの導線を考えており、CTAのコンテンツの内容に合わせて各ページで異なる意欲。段階に合ったバナーを掲載することで、ユーザーは自然にユアマイスターのサービスに触れることができます。
北欧、暮らしの道具店(クラシコム)
通販ECサイトの枠を超えてコンテンツマーケティングを展開する、株式会社クラシコムが運営する「北欧、暮らしの道具店」をご紹介。
コンテンツマーケティング本来の目的というよりも、ユーザーとの親密度を高めることに主眼を置いたコンテンツを発信。どのコンテンツも「北欧、暮らしの道具店」らしい世界観で、読者を楽しませる仕掛けがあります。ECサイト、Instagram、YouTubeと、全てに親和性の高いトーンで展開しているのが特長です。
「北欧、暮らしの道具店」のコンテンツの特徴は、従業員の等身大の姿を見せていること。スタッフの人柄や想いまでもがコンテンツになっており、ユーザーと親密な関係を築ける要因になっているようです。読者が「この人なら信頼できる」「この店で買ってみたい」と感じてくれるよう、コンテンツを通して等身大の自分たちを伝えているのがポイントと言えるでしょう。
まとめ:戦略的なコンテンツマーケティングへ
本記事では、コンテンツマーケティングの基本から、説得力のある提案の作り方、成功のためのポイントまで、実践的なノウハウを詳解してきました。
コンテンツマーケティングは、単発の施策ではなく、長期的な視点に立った一貫性のある取り組みが何より重要です。目先の数値のみを追い求めるのではなく、顧客との関係性構築を大切にしながら、ブランド価値の向上を図っていくことが求められます。
自社の強みを最大限に活かしながら、高品質で有益なコンテンツを戦略的に生み出し続けること。PDCAを回しながら、コンテンツの磨き上げと運用改善に粘り強く取り組むこと。組織を巻き込み、チーム一丸で挑戦し続けること。
これらを着実に積み重ねていくことで、コンテンツマーケティングは大きな成果を生み出すパワフルな武器となるはずです。ぜひ本記事で得た知見を活かし、自社の成長エンジンとなるコンテンツマーケティングに果敢にチャレンジしてみてください。
コンテンツマーケティングの導入支援から、戦略立案、実行まで、イノーバではワンストップでサポートいたします。ご興味をお持ちの方は、ぜひお問い合わせください。皆さまのコンテンツマーケティング成功を心よりお祈り申し上げます。
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