導入事例
ブランド認知を高める! 事例で訴求するHPリニューアル
株式会社ニューズベース 様
ニューズベースは、企業が顧客や協力会社、社員および社員家族といったステークホルダーとのコミュニケーションを活性化するために開催する「企業イベント」の企画・制作・運営を手掛けるイベント会社である。
豊富な実績をもとに業種・業界を問わず多様な要件に対応できるノウハウと体制があり、年間200件のイベントを手掛ける。顧客のリピート率が80%以上と極めて高いのが特長だ。
同社は早くからコンテンツマーケティングに取り組んでおり、2015年8月にはイノーバの「Cloud CMO」を導入。旧ホームページをリニューアルし、Cloud CMOで構築した新サイトを立ち上げた。しかし、同社はそれで立ち止まらない。
ブランド認知をさらに高める必要があると判断し、キラーコンテンツであるお客さま事例紹介の訴求力をいちだんと高めるべく、デザインの刷新に着手した。その再リニューアル作業がこのたび完了し、2016年11月末に公開した。
今回のリニューアルの背景や狙いについて、同社のキーパーソンに聞いた。(2017年3月取材)
実践活動を1周回して突き当たった壁
創業28年目を迎え、イベント会社としては老舗ともいえるニューズベースは、実は、コンテンツマーケティングの先進企業である。
同社でマーケティングを統括する田邊氏は、テレアポをはじめとするアウトバウンド型の活動や広告偏重のインバウンド施策からの脱却を模索する中で、早くからコンテンツマーケティングに注目していた。そしてCMS(コンテンツ管理システム)とマーケティングオートメーションのツールを選定する中で、イノーバが当時発表したばかりの「Cloud CMO」に出会い、導入を決める。
同氏は旧来のホームページをリニューアルし、コンテンツを主軸に据えた新サイトをCloud CMO上に構築。2015年8月にオープンさせた。
2015年8月にリニューアルした当時のニューズベースのホームページ。イノーバの「Cloud CMO」上に構築したブログ機能を備えるオウンドメディア型である。ニューズベースはこれをプラットフォームとしてコンテンツマーケティングに着手した。
その後、実際にコンテンツマーケティングに取り組んでみると、「想像以上に大変なことがいろいろありました」と述べる田邊氏だが、着実な成果も感じている。
たとえば、営業の仮説検証が簡単にできるようになり、初回訪問時のヒアリング確度が上がった。また、お客さまの潜在的なニーズに気づいたり、これまで自社が認識していなかった、“お客さま視点で見た自社の提供価値”を発見できるようになったりしたという。
こうした約1年にわたるコンテンツマーケティング活動の振り返りをもとに、田邊氏はマーケティングプランを練り直した。具体的には、次の4つに取り組んだ。
- お客さまに「当社を採用いただいた理由」「当社の特長は何だと感じたか」をヒアリング
- お客さまのニーズや企業規模、社風などを徹底して分析し、当社がターゲットとする「顧客像」を明確化
- 営業プロセスを見直し、契約という最終ゴールから逆算した受注率、提案到達率を軸にKPIを設定
- カスタマージャーニーマップによって、マーケティングプロセスを可視化
ただ、この新たなマーケティングプランを推進するには、2015年8月にリニューアルしたホームページは実力不足だった。
田邊氏は当時、プロのデザイナーの力は借りず、Cloud CMOの標準テンプレートを使い、イノーバの導入サポートを受けながら自分でホームページを立ち上げた。実際に問い合わせも獲得できており、リニューアルの成果は得られていたという。しかし、「コンテンツマーケティングに今後さらに注力していくに当たり、ホームページは情報発信のプラットフォームになります。しかしデザインが、それに耐えられるレベルに届いていませんでした」(同氏)。
たとえば、トップページをぱっと見た時に「ニューズベースってどんな会社なのか?」「イベント会社と書いてあるが、具体的に何をやっているのか」「どのような取り組み姿勢なのか」がイマイチ伝わってこないと田邊氏は感じていた。
「前回のリニューアルはマーケティングプランがまだ不明瞭な中で推進したものです。そのため訴求ポイントが絞りきれておらず、デザインや導線設計にもそれが表れてしまっていました。当社が何を伝えたいのか、はっきり読み取れない。いわば“背骨”が通っていない状態だったんです。市場に訴えるべきことを明確に定めた上で、ホームページをイチから見直す必要があると考えました」(同氏)。
そこで田邊氏は、新たなマーケティングプランにもとづいてデザインや導線設計を刷新することを決め、2回目のリニューアルに踏み切った。
イノーバからは今回、リニューアルの手法として、(1)最も手軽で費用も抑えられるテンプレート・ベースの提案のほか、(2)費用は掛かるがフルカスタムでデザインする提案、(3)カスタム・デザインはトップページなど重要度の高いページに限定し、その他のページはテンプレートを適用する提案があった。
イノーバが提示した各手法の仕上がりイメージや費用感をニューズベースが検討し、最終的に(3)のアプローチを選択して、再リニューアル・プロジェクトが始まった。
まず「当社の価値って何だっけ?」を問い直した
この再リニューアルを経て2016年11月末に公開したニューズベースの最新ホームページは、同社が手掛けたお客さまのイベント事例がトップページにずらりと並んでいる。イベント風景の写真から切り取ったカラフルな画像を大きく使い、鮮やかな印象を閲覧者に与える。
ニューズベースのホームページを開くと、同社が手掛けたイベントの印象的な写真を大きく使った事例がファーストビューの全面に広がる。非常に印象的で、ワクワク感の演出にも成功している。
「当社が扱う“企業イベント”は、参加者にとっては非日常であり、ワクワクする体験です。一方で主催される方にとっては、実施目的に対する効果や成功が求められます。実施事例は、それを一番分かりやすく伝えられるコンテンツ。だから、事例を最もインパクトの大きな見せ方で訴求したかったんです」(同氏)。
ただし、田邊氏は単に自分の感性だけでこの訴求ポイントを決めたわけではない。
同氏は今回の再リニューアルを契機に、あらためて「当社の顧客は具体的にはどんな人なのか?」「競合はどこか?」「当社の強みは?弱みは?」「結局、どんな価値をお客さまに提供しているのか?」といったマーケティングの基本に立ち返り、社外の専門家も交えて自らに問い直した。さらに、企業イベントという同社の商材を市場にどう伝えるべきか、また、顧客ニーズをどう捉えるか、突き詰めて考えた。
「当社は、企業と従業員、その家族、あるいは従業員同士、そして企業と顧客、協力会社といったステークホルダー間のエンゲージメント(愛着や結びつき)を高めることに寄与しています。そして、そのためのキーワードとなるのが“共感”。この“共感”を生むための企画アイデアや具体的な実行サポートがお客さまに提供している価値なのではないかという答えに行き着きました」(田邊氏)。
そして、ニューズベースは“イベントを通じて企業内外の「結びつき」をデザイン”する会社だというコンセプトを、まず固めた。その上で、「ではそのコンセプトを伝えるために、ホームページの構造やデザインはどうあるべきか?」という検討に進んだのである。
導線やデザインも、リニューアルの目的から起算
こうした検討を経てニューズベースはサイト構成やユーザー・インタフェースの素案を作り、さらに市場の現状や自社の強み、ペルソナ(ターゲット顧客像)、コンセプトワードなどもまとめて、イノーバ側に共有した。
「もちろん私にも、こういうサイトにしたいという考えはありました。ただ、私自身はサービスの提供者側にいます。ホームページを閲覧するユーザーの視点になりきれず、偏った見方をしているかもしれません。そこでイノーバには、当社が言う通りにそのまま形にするのではなく、ぜひ客観的な視点でどんどん意見をくださいと頼みました」(田邊氏)。
その期待に、イノーバ側のメンバーは応えた。「当社の素案に、ダメ出しを何度もくらいました(笑)」と田邊氏は振り返る。
たとえば、全ページの上部に共通で表示するナビゲーション(グローバル・ナビ)のメニュー表記を、当初は日本語にしていたが、ニューズベースが伝えたい世界観により合致する英語表記に変えた。一方でページの最下部(フッター領域)に表示するメニューは、グローバル・ナビとそろって英語では分かりにくいので、日本語で表記した。
ほかにも、「問い合わせしてみようという動機づけが視覚的にできているかどうか、イノーバ側から率直な意見をもらいました。サイト構成の導線設計についても、より良くするためのアドバイスを受けました」(田邊氏)。
デザインにも産みの苦しみがあった。
「サイトを閲覧するユーザーに、多様な業界・業種のお客さまに向けてさまざまな形態のイベントを手掛ける当社の“振り幅”の広さを伝えるとともに、こんなイベントを自社も実施したら……という期待感を膨らませてほしかったんです」(田邊氏)。
レイアウトや色使いについてニューズベースとイノーバで何度もやりとりをした。そうしてたどり着いたのが、斜めのグリッドに構成要素を配置するWebデザインの技法だ。色使いは、プリズムの7色をベースに設計した。こうして、スタイリッシュながらも、イベントがもたらす効果を閲覧者にしっかり印象づけるデザインに仕上がった。
マーケティングのゴール達成へ、コンテンツの質にこだわる
取材時点で最新ホームページの公開から数カ月しか経過しておらず、この再リニューアル・プロジェクトの成否をデータで評価できるタイミングではない。
ただ、田邊氏は、「ホームページ単体で成否を問うのではなく、このホームページをプラットフォームとして加速させるコンテンツマーケティングで、マーケティングプラン全体のゴールを達成できるかどうかだと考えています」と述べる。
もちろんマーケティング活動のゴールを達成するには、中間指標に設定したホームページの来訪者数を増やしていく必要がある。それに向けてニューズベースは、再リニューアル・プロジェクト中に一時休止していたブログ形式のオウンドメディアを、新たに「engage+」として内容や体制を刷新し再開する。ただ、「コンテンツを追加したからといって、ホームページの数値が急に伸びるとは考えていません。緩やかに、だんだん増えていくという想定です」と田邊氏はいう。
来訪者数を確保するには検索エンジン対策(SEO)で効果を上げることも不可欠だ。今回の再リニューアル後、検索結果の表示順位が上がったページもあれば、下がったページもある。しかし、この状況に田邊氏は動じていない。
「今回のリニューアルは中長期の視点に立って『これからは、こうやっていくんだ』と決めて実行したもの。検索順位のいっときの変動は覚悟の上。もともと、そういうスタンスでした。ただ、いずれにしても、コンテンツを追加したり、ユーザービリティをさらに改善したりしてGoogleからの評価を上げる継続的な取り組みは必要だと思っています」(田邊氏)。
そこで田邊氏が最も意識しているのはコンテンツの質だという。
「当社がお客さまに提供するイベントのサービスで、一番評価いただいているのは、質なんです。多くの競合がひしめき合う業界ですが、サービス自体が目に見えるような商材ではないため、お客さまから見ると「使ってみないとわからない」ようなサービスです。そういった業界の中でサービスの質をご評価いただいているというは、非常に重要なポイントだと考えています。だから、当社が発信するコンテンツも、質を落とすなとチームメンバーに言っています。その結果、リニューアル直後の検索順位の改善が多少遅くなるかもしれません。それでも、ユーザーのためになる方が本質的であり、重要だと考えています」(同氏)。
新ホームページで主軸に据えたお客さま事例も、最新の事例をどんどん発信していく方針だ。「月に1本、新しい事例コンテンツを制作し、トップページのファーストビューを入れ替えたいと思っています。『ニューズベースって、ホームページを見るたびに新しい事例に変わってるね』。来訪者にそんなふうに感じてもらえるようにしていきます」(同氏)。