BtoBマーケティングを強化し売上向上や利益率アップにつなげるためには、適切なペルソナの設定が有効です。しかし、ペルソナの役割や目的は理解できていても、実際にどのように設定すればよいか、悩む方もいらっしゃるでしょう。ここでは、担当者に向けてペルソナの設定方法や業種別の設定例などを解説します。
ペルソナとは
ペルソナとは、自社製品やサービスを提供する架空の対象者・人物像のこと。
ペルソナを設定すると、自社製品やサービスを提供するユーザーの人物像が明確になるため、ニーズの把握やニーズに合わせたマーケティングの展開に役立つのです。それにより売上向上にもつながるでしょう。
なおペルソナの定義やメリットについては、以下の記事でも詳しく解説しています。こちらも参考にしてみてください。
「ペルソナ」とは?意味・マーケティングでの活用方法と作り方をわかりやすくご紹介
ターゲットとは
ターゲットとは、地域や年代といった属性のもと分類されたセグメントから絞り込まれた「顧客として想定している人たち」のこと。BtoBの場合、多くは「○○県在住・50代男性・管理職」のようにある程度まとまった形で絞り込まれます。
ペルソナとターゲットの違いについては「ターゲットとペルソナの違いとは?2つに欠かせないSTP分析やカスタマージャーニーマップも解説」でも解説しています。
ペルソナの設定方法
自社製品やサービスを提供する架空の対象者・人物像を設定するといっても、具体的にどういった方法・手順で行えばよいのでしょう。ここではペルソナをどのような手順で設定するのか、詳しい方法や手順を解説します。
ユーザーのデータを集める
まず自社製品やサービスを提供するユーザーのデータ・情報を収集します。たとえば自社サイトを閲覧したユーザー、自社SNSのフォロワー、自社製品・サービスを利用した顧客などにむけてアンケートを実施する方法が代表的です。
そのほか営業担当へのヒアリングやユーザーへのインタビュー、顧客データベースや行動ログの分析といった方法もあります。
BtoBマーケティングでは、アンケートの内容を担当者と企業の情報で分けるとよいでしょう。それぞれ下記のように項目が分かれます。
- 担当者の情報:年齢や性別、役職、担当業務など
- 企業の情報:業種や従業員数、所在地、情報収集の手段、自社が抱える業務の悩み、自社の強みなど
できるだけ多くのデータを集められれば、ペルソナ設定の精度もより高まるでしょう。
データを分析する
データの収集が終わったら、アンケートで集まった情報を細かく分析します。分析の前に、ユーザーごとの属性に関するものと、それ以外の情報にグループ分けしましょう。たとえば下記のようなグループ分けです。
- 属性に関するもの;担当者の年齢や性別、役職、担当業務、企業の業種、従業員数、所在地など
- それ以外の情報:情報収集の手段や自社が抱える業務の悩み、自社の強みなど
ペルソナを作成する
最後に、分析の結果、どのようなユーザーが多い傾向にあるのかを把握し、ペルソナを作成していきます。実際のペルソナの作成例は以下の章で解説します。
BtoBマーケティングにおけるペルソナ設定の業種別具体例
やみくもにペルソナを設定しようと思っても、なかなか進みません。そこで具体例を参考にしていけば、ペルソナの設定がスムーズに進みます。ここでは、参考にしやすい事例を業種ごとに紹介します。もちろん、同じ業種でも企業や商品・ターゲットによってペルソナ像は異なるので、あくまで作成の粒度などの参考にご利用ください。
小売・サービス業のペルソナ設定例
美容院やエステサロン、アパレルショップなど、小売・サービス業におけるペルソナ設定例は以下の通りです。
【企業情報】
- 所在地:東京都中央区
- 従業員数:50名
- 業種:アパレル・ジュエリーなどの販売
【担当者プロフィール】
- 氏名:佐藤 花子
- 部署:経営企画部
- 業務のミッション:新規オープン店舗の採算性を判断し売上・利益率の向上に貢献する
- 役職:マネージャー
- 年齢:40歳
- 性別:女性
- 担当業務:新規店舗の出店計画立案・プロモーションなど
- 購買プロセス上の役割:決裁者
【自社の強み】
長年にわたって地域密着型の店舗を複数経営してきたこともあり、固定客を獲得。安定的な売上に結びついている。
【自社の弱み・課題】
実店舗での販売は強いものの、ネット通販へ乗り遅れたこともあり将来性に不安を抱いている。今後数年以内にEC事業にも力を入れ収益の柱としていきたいと考えている。
製造業のペルソナ設定例
電気製品や工業製品、食品などの製造を手掛ける企業におけるペルソナ設定例は以下の通りです。
【企業情報】
- 所在地:東京都大田区
- 従業員数:500名
- 業種:電気製品に用いるパーツの製造
【担当者プロフィール】
- 氏名:鈴木 太郎
- 部署:営業部
- 業務のミッション:営業・販売戦略の策定、顧客との商談、営業担当社員のアサイン
- 役職:部長
- 年齢:45歳
- 性別:男性
- 担当業務:営業
- 購買プロセス上の役割:決裁者
【自社の強み】
信頼性が高く高品質なパーツの製造を手掛け、多くの取引先からの信用を獲得してきた。周辺は町工場も多いエリアのため、納品先から徐々に口コミでビジネス規模が拡大。現在ではオンラインによる受注も展開しているため、全国各地からオーダーが入っている。
【自社の弱み・課題】
大手を含む競合他社との値引き競争に巻き込まれると太刀打ちできないことが課題。自社の品質を知らないまま他社と比較されてしまうと、価格の高さから他に流れてしまうことも。品質面での優位性をアピールすることで、現在の利益率は確保しながらも顧客満足度を高めていけると考えている。
物流業のペルソナ設定例
宅配業者や運送事業者など、物流業のペルソナ設定例は以下の通りです。
【企業情報】
- 所在地:東京都江東区
- 従業員数:100名
- 業種:法人・個人向けの物流サービス
【担当者プロフィール】
- 氏名:田中 一郎
- 部署: 経営企画部
- 業務のミッション:経営戦略の立案を通して、売上と利益率の向上および顧客満足度向上の両立を実現する
- 役職:部長
- 年齢:45歳
- 性別:男性
- 担当業務:自社が抱える人手不足の問題解消に向けて、顧客満足度を向上させるための新サービスおよび経営戦略を立案する
- 購買プロセス上の役割:決裁者
【自社の強み】
大手物流企業にはない地域密着型の経営により、ユーザーからの要望に沿って柔軟性の高いサービスを提供してきた。その結果、他社では断られるような小ロットでのBtoB物流、物流量の変化に応じた柔軟な料金体系なども可能で、地元企業・店舗から高い支持を得ている。
【自社の弱み・課題】
物流業界全体の人手不足もあり、現場スタッフの早期退職やエントリー数減少が深刻。これまではマンパワーに頼って柔軟なサービスを提供してきたが、人手に頼るのも限界を迎えている。これからはITを活用した物流システムを駆使し、生産性を向上させていくことが最大の課題。
例を参考にペルソナを設定し、マーケティングに役立てよう
ペルソナの基本的な設定方法は、下記の3段階に分かれます。
- ユーザーデータの収集(ユーザーへのアンケートやインタビュー、営業担当へのヒアリング、顧客データベースや行動ログの分析)
- データの分析
- それらをもとにしたペルソナの設定
BtoBマーケティングでは、BtoCと異なり企業情報や担当者の情報を収集し分析する必要があります。今回紹介した具体例をペルソナの設定に役立ててみてはいかがでしょう。
またペルソナの設定例として紹介した内容はあくまでも一例です。もしかしたら、前述した項目以外にも自社が抱える悩みや課題に関連する項目が出てくるかもしれません。上記以外にどういった項目をピックアップすればよいかを検討しながら、精度の高いペルソナを作成してみましょう。