センターオブエクセレンスとは、バラバラの部署や場所に点在している優秀な人材、設備、ノウハウといった利便性の高いリソースを横断的にまとめあげる取り組みのことを意味します。
企業が保有していながら、別々に管理されているせいで有効活用できない状態になっている人材やノウハウがある場合、宝の持ち腐れとなる可能性があるでしょう。
そのためセンターオブエクセレンスで横断的に利用できる環境の組織化を目指すことで、それぞれの企業資産を腐れせずに事業に活用できるようになるのです。
センターオブエクセレンスの活用方法を確認し、その必要性とメリットを把握してみましょう。
センターオブエクセレンスとは?
センターオブエクセレンスとは、企業内にあるさまざまなリソースを横断的に管理・活用するための環境作り・組織化のことです。
企業のあらゆる部署に散らばっている優秀な人材、ノウハウ、設備などをまとめあげ、有効活用できる環境構築を行います。
センターオブエクセレンスの意味合いは業界によって変わることもあり、単純に優秀な人材や設備が集結している組織そのものを指す場合もあります。
営業活動、マーケティング計画の立案者、データ分析業務、人材登用、そのほか各分野のプロフェッショナルがそろっている環境・組織を定義することもあるでしょう。
いずれにせよセンターオブエクセレンスは、企業が持っている重要な人材や設備といった資産をまとめる取り組みだと言えるでしょう。
センターオブエクセレンスの必要性
近年は組織内のDX化が進められていて、多くのコンテンツがデータ化しています。
そのため多くの部署・従業員が自由にデータを取得・活用できるようになり、管理や整理もしやすい環境が整ってきているでしょう。
一方で、これまで縦割りに管理されていた組織の情報や業務プロセスをデータ化する際には、サイロ化が課題となりがちです。
サイロ化とは、業務に必要とされるシステムやアプリケーションが、社内で孤立してしまう状態のことを意味します。
サイロ化するシステムやアプリが増えると、部署ごとの連携が取りづらくなり、DX化によるプラス効果が得られなくなるでしょう。
サイロ化によるシステムやアプリの孤立化を防ぐ手法のひとつとして、今後はセンターオブエクセレンスによる横断的な組織の編成が必要だと考えらます。
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センターオブエクセレンスの役割
センターオブエクセレンスは、いくつかの役割を持っています。
以下を参考に、独自の役割について確認してみましょう。
会社が持つ優秀な能力、設備をまとめる
センターオブエクセレンスは、会社が保有している「優秀」なあらゆるものをまとめあげる役割があります。
各業務に対して能力のある人材、便利なシステムや設備、蓄積されてきた事業ノウハウなど、人やデータを1箇所にまとめることで活用しやすい環境を構築します。
専門の部署や設備が増えてバラバラになっているのなら、横断的につながれる組織の立ち上げがおすすめです。
事業や部署の統廃合を行う
センターオブエクセレンスはさまざまな人材や設備を集合させるので、現在の事業や部署の統廃合を行えます。
役割が重複している部署をまとめてひとつの組織に改変したり、既に機能していない部署を廃止して無駄なコストを削減したりできるでしょう。
事業や部署の統廃合が行われれば、同時に業務プロセスの見直しも行えます。
それぞれの部署が合わさって協力できる体制が整えば、非効率的な業務プロセスの改善も可能です。
人材の再評価
センターオブエクセレンスは、自社に所属している人材の再評価も役割です。
専門性に特化した人材は分かりやすくその能力を評価できますが、さまざまな事業に取り組める応用力や柔軟性を持った人材は正当に評価できていない場合があります。
センターオブエクセレンスによる横断的な組織の編成は、あらゆる業務を担える「横断型人材」の重要性を理解するきっかけになり、新たに自社にとって必要な人材を発見することにつながるでしょう。
センターオブエクセレンスのメリット
センターオブエクセレンスの実施には、いくつかのメリットがあります。
メリットを理解した上で改革を進められるように、以下のポイントを確認しておきましょう。
社内の人材や機能の連携強化
センターオブエクセレンスで人材や設備、システムを集合させれば、連携の強化が可能です。
それぞれの優秀な人材や設備が連携できれば、さらなる事業への貢献に期待できます。
これまで個別に活動していた部署が連携するきっかけにもなるので、業務にかかる負担の軽減や効率化を進められるでしょう。
情報共有の効率化
センターオブエクセレンスを実施することで、社内の情報を共有しやすくなります。
共有を強化することで無駄な情報を判別して削減するきっかけにもなるため、情報管理の効率化にもつながるでしょう。
情報共有が強化されることで、課題解決に必要な人材や機能を判別するスピードを高められます。
情報共有が進めば同じ情報やノウハウを知りながら仕事ができるので個々の情報量に差が出ず、部署内のコミュニケーションを活性化させて連帯感を高めることにつながるでしょう。
センターオブエクセレンスの導入に必要なこと
センターオブエクセレンスの導入を検討するのなら、必要な環境や考え方を把握することも重要です。
以下を参考に、実際の入方法を考えてみましょう。
企業内の人材や機能などの情報をまとめるシステムの導入
センターオブエクセレンスを実施するには、社内の人材や機能に関する情報をまとめるシステムが必要です。
情報管理ツールの導入や情報活用のガイドラインを制定して、各部署が持つ人材や情報をスムーズにまとめられる環境を構築しましょう。
まとめた社内の情報は、各部署に公開して自由に閲覧できるようにすることも重要です。
情報が公開されていれば、必要に応じて人材や機能の活用が行えるので、業務効率化につながるでしょう。
ダイバーシティの促進
ダイバーシティの促進も、横断的に活動できる新たな組織を作る際に検討すべき施策です。
ダイバーシティとは、国籍、性別、年齢などで壁を作らずに、あらゆる人材を受け入れる手法を意味します。
多様性を重視することであらゆる問題を解決できる人材を確保でき、そのときに必要な能力をピックアップしやすくなるでしょう。
同一の評価基準で人材を確保するのではなく、できるだけ多種多様な特性を持った人たちで組織を彩るのもポイントです。
企業に必要な人材の定義と、キャリアマップ・教育施策の提案
センターオブエクセレンスによる組織化や横断的な環境を活かすには、必要な人材の定義を行い、キャリアマップや教育施策を実施することも重要です。
組織に不足している人材の特徴を定義し、どのようなスキルが必要になるのかを明確化します。
定義を参考にすることでキャリアマップや教育施策の提案を行い、組織にとって理想的な人材の確保・育成を目指せるので、センターオブエクセレンスを活かせる従業員を定着させられるでしょう。
センターオブエクセレンスの導入事例
センターオブエクセレンスは、既に多くの企業で導入が進められています。
以下の事例を参考にして、具体的な導入計画を立ててみるのもおすすめです。
資生堂
資生堂は4つのセンターオブエクセレンス組織を設立し、連携力を向上させてイノベーションあふれるマーケティング展開を可能とする環境構築を行いました。
「スキンケア=日本」「メーキャップ・デジタル=米州」「フレグランス=欧州」といった形で、カテゴリーごとに最先端の情報収集や商品開発をリードできる環境を作り、その情報をグループ全体に共有してマーケティングに活かし、ブランド力の向上を進めているのです。
資生堂の組織は世界中にそれぞれ拠点を持っていますが、各情報は常に連携させてグローバルな活動を推進しています。
世界中の最新情報を取り扱える横断的な環境が、今後の資生堂のマーケティング活動に大きな影響を与えることは予想できるでしょう。
NTTデータ
NTTデータは2020年6月11日に、デジタル技術の蓄積や専門的な技術者を育成するためのセンターオブエクセレンス組織を、3つの先端技術領域に分けて設立しています。
IoT、Intelligent Automation、Software Engineering Automationといった各種分野に統合された組織で、情報・知識の集約、技術者へのトレーニング、保有している情報資産の共有などを行い、グローバルな戦略に対応していくとのこと。
既にNTTデータにはAI、Blockchain、Agile/DevOps、Digital Designといった4つのセンターオブエクセレンス組織があるので、今後は合計7分野の特徴を活かして事業展開を行っていくとされています。
センターオブエクセレンスを活用して組織の整備を行う
センターオブエクセレンスは、組織が保有している人材や情報、システムなどを正しく有効活用するための取り組みになります。
センターオブエクセレンスによって横断的な組織環境が作られれば、連携力や知的・情報資産の応用力が高まり、事業展開の効率化などを進められるでしょう。
この機会に基本的な概要とメリットなどを確認し、実際に組織改変を行ってみることがおすすめです。