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イノーバマーケティングチーム2024/03/26 7:55:582 min read

魅力的な企業ブランドの構築。採用ブランディングの基礎からトレンドまでを解説

1. はじめに

今日、優秀な人材の確保は、企業の成長と発展に直結する重要な課題となっています。そこで注目されているのが、採用ブランディングです。

採用ブランディングとは、企業が求職者に向けて、魅力的な雇用主としてのイメージを戦略的に構築し、コミュニケーションしていく取り組みを指します。単なる求人広告やリクルーティング活動ではなく、企業文化や価値観、従業員の働き方などを積極的に発信することで、企業と求職者との間に強い絆を築くことを目指します。

採用ブランディングの概念自体は新しいものではありませんが、近年その重要性が大きく高まっています。インターネットやソーシャルメディアの発達により、求職者が企業情報を容易に入手できるようになったことで、企業の採用活動はより透明性が求められるようになりました。また、ミレニアル世代やZ世代の労働人口が増加する中、仕事に対する価値観の変化も採用ブランディングに大きな影響を与えています。

本コラムでは、採用ブランディングの基礎知識から、優秀な人材を引き付けるための具体的な取り組み事例、そして今後の展望までを詳しく解説していきます。採用ブランディングに取り組む企業の人事担当者や経営者の方々に、実践的な知見を提供できれば幸いです。

2. 採用ブランディングの基礎

採用ブランディングは、企業が求職者に向けて、"この会社で働きたい"と思わせるような魅力的なイメージを戦略的に構築し、発信していく取り組みです。その目的は、優秀な人材を引き付け、採用競争で優位に立つことにあります。

採用ブランディングの要素として、まず挙げられるのが企業文化と価値観です。求職者は、自分の価値観に合致する企業で働きたいと考えます。企業の理念、ミッション、ビジョンを明確に示し、どのような価値観に基づいて事業を展開しているのかを伝えることが重要です。

次に重要なのが、従業員価値提案(EVP: Employee Value Proposition)です。EVPは、企業が従業員に提供する価値の約束で、給与や福利厚生だけでなく、キャリア開発の機会、ワークライフバランス、社会的意義など、幅広い要素が含まれます。魅力的なEVPを構築し、求職者に効果的に伝えることが採用ブランディングの鍵となります。

そして、採用コミュニケーションも欠かせません。企業のウェブサイト、求人広告、説明会、インターンシップなど、あらゆる採用活動において、一貫したメッセージを発信し、求職者との接点を強化していくことが求められます。その際、求職者のニーズや関心事を深く理解し、共感を得られるようなコミュニケーションを心がけることが大切です。

採用ブランディングの効果は、優秀な人材の獲得だけにとどまりません。魅力的な採用ブランドを構築することで、応募者数や採用者数の増加、採用コストの削減、離職率の低下など、様々なメリットが期待できます。また、従業員のエンゲージメントや生産性の向上にもつながり、企業の業績アップにも好影響を与えます。

ただし、採用ブランディングの取り組みを始めたからといって、すぐに成果が表れるわけではありません。長期的な視点を持ち、一貫性のある活動を継続的に行っていくことが重要です。また、採用ブランディングの効果を測定し、PDCAサイクルを回していくことも忘れてはいけません。

3. 優秀な人材を引き付ける企業の取り組み事例

ここからは、実際に採用ブランディングを成功させている企業の事例を5つ紹介します。(事例はいずれも想定のケースです)

事例1:A社の取り組み

A社は、IT業界で急成長を遂げているベンチャー企業です。同社が採用ブランディングで重視しているのが、企業文化の明確化と発信です。「Challenge & Growth」という企業理念を掲げ、挑戦的な仕事にチャレンジし、常に成長し続けることを大切にしています。

この企業理念を社内外に浸透させるため、A社では様々な取り組みを行っています。例えば、経営陣や従業員のインタビュー記事を自社ブログで定期的に公開し、仕事への想いや価値観を発信。社内イベントの様子もSNSで積極的に発信することで、求職者に企業文化を感じてもらう工夫をしています。

また、A社では従業員エンゲージメントの向上にも力を入れています。部署を越えたプロジェクトへの参加を推奨したり、資格取得や勉強会への参加を支援する制度を設けるなど、従業員の成長を後押しする環境づくりに努めています。エンゲージメントの高い従業員は、自然と企業の魅力を外部に発信する社内アンバサダーとなります。

革新的な採用手法の導入も、A社の特徴の1つです。プログラミングコンテストを開催して優秀な人材を発掘したり、VR(仮想現実)を活用した面接を取り入れるなど、他社にはない独自の採用活動を展開。求職者の興味を引く仕掛けを行うことで、採用競争で差をつけています。

このように、企業理念の浸透、従業員エンゲージメントの向上、革新的な採用手法の導入を三位一体で進めることで、A社は強力な採用ブランドを確立することに成功しています。

事例2:B社の取り組み

B社は、環境に配慮した製品を開発・販売する大手メーカーです。同社は、CSR(企業の社会的責任)活動と採用ブランディングを戦略的に連動させることで、優秀な人材の獲得につなげています。

B社のCSR活動の特徴は、事業と強く結びついている点です。例えば、再生可能エネルギーを活用した製品の開発、プラスチック廃棄物の削減、サプライチェーンにおける人権配慮など、本業を通じて社会課題の解決に取り組んでいます。こうした活動を通じて、B社は環境や社会に貢献する企業としてのイメージを確立しています。

また、多様性と包括性(D&I)の推進も、B社の重要な取り組みの1つです。女性管理職の登用、LGBTQの支援、障がい者雇用の拡大など、あらゆる従業員が活躍できる職場環境の整備に力を入れています。多様な人材が集まることで、イノベーションの創出にもつながっています。

B社では、こうしたCSR活動やD&Iの取り組みを、採用ブランディングにも積極的に活用しています。求人広告や説明会では、事業を通じた社会貢献や多様性の尊重をアピールし、企業の魅力を伝えています。また、CSR報告書や統合報告書を発行し、ステークホルダーとの対話を重視。透明性の高い情報開示は、求職者の信頼獲得にもつながっています。

さらに、B社では、従業員に柔軟な働き方を提供することも採用ブランディングの一環と位置付けています。フレックスタイム制、テレワーク、時短勤務など、多様な働き方を可能にする制度を導入。ワークライフバランスを重視する求職者に対して、魅力的な選択肢を提示しています。

B社の事例から学べるのは、CSR活動と採用ブランディングの連動、多様性の尊重、柔軟な働き方の提供が、優秀な人材を引き付ける上で効果的だということです。

事例3:C社の取り組み

C社は、グローバルに事業を展開する総合商社です。同社は、強力なEVP(従業員価値提案)の構築と、候補者とのエンゲージメント向上に注力することで、採用ブランディングを推進しています。

C社のEVPの特徴は、「グローバルに活躍できる」「様々な事業領域でキャリアを築ける」「社会課題の解決に取り組める」という3つのキーメッセージにまとめられます。グローバルネットワークを活かした海外勤務の機会、多様な事業領域でのキャリア形成、SDGsに貢献するプロジェクトへの参画など、C社ならではの魅力を求職者に訴求しています。

また、C社では、候補者とのエンゲージメントを高めるためのコミュニケーション施策にも力を入れています。例えば、若手従業員が社内の制度や雰囲気について発信する「リアルボイス」と呼ばれる動画コンテンツを配信。求職者が従業員の生の声を聞くことで、入社後のイメージを膨らませることができます。

加えて、C社は採用ブランディングにおけるデジタルシフトも積極的に進めています。オウンドメディアを通じた情報発信、SNS上での双方向のコミュニケーション、バーチャルオフィスツアーの実施など、オンラインでの候補者との接点を強化。コロナ禍においても、効果的な採用活動を継続することができました。

C社の事例が示すのは、自社の強みを活かしたEVPの構築、候補者とのエンゲージメントを高めるコミュニケーション、デジタル技術の戦略的活用が、採用ブランディングにおいて重要だということです。

事例4:D社の取り組み

D社は、国内トップクラスのシェアを誇る食品メーカーです。同社は、従業員アドボカシープログラムとキャリア開発支援に注力することで、魅力的な採用ブランドを確立しています。

D社の従業員アドボカシープログラムは、「ブランドアンバサダー制度」と呼ばれています。各部署から選抜された従業員が、自主的に社内外のイベントや採用活動に参加し、自社の魅力を発信する役割を担います。アンバサダーは、日頃から社内SNSで情報発信したり、説明会で求職者の質問に答えたりと、能動的に採用ブランディングに関わります。

この制度の特徴は、アンバサダーの自主性を尊重している点です。上司の指示ではなく、従業員自身の想いに基づいて活動するため、ありのままの姿を伝えることができます。求職者にとって、アンバサダーの発信する情報は、リアリティがあり説得力があると好評です。

また、D社では、従業員のキャリア開発支援にも力を入れています。従業員一人ひとりのキャリアビジョンを尊重し、それを実現するための教育研修や人事ローテーションの機会を提供。さらに、社内公募制度を活用することで、従業員が自ら手を挙げて新しいことにチャレンジできる風土を醸成しています。

こうした取り組みは、従業員エンゲージメントの向上につながるだけでなく、求職者に対しても「D社で働けば、キャリアを自分の思い描く姿に近づけることができる」というメッセージを発信する効果があります。

D社は、ワークライフバランスの推進にも注力しています。年次有給休暇の取得促進、ノー残業デーの徹底、育児・介護休業制度の拡充など、従業員がプライベートと両立しながら働ける環境を整備。求職者から「働きやすそうな会社」と評価されることで、採用競争力の向上にもつながっています。

D社の事例からは、従業員アドボカシープログラムの推進、キャリア開発支援、ワークライフバランスの実現が、採用ブランディングにおいて有効であることが分かります。

事例5:E社の取り組み

E社は、金融業界のリーディングカンパニーです。同社は、入社前から入社後までの一貫したブランド体験の提供と、従業員の声の活用に注力することで、強固な採用ブランドを構築しています。

E社が力を入れているのが、オンボーディングプロセスの強化です。入社前の内定者に対して、社内の様子や業務内容をVR(仮想現実)で体験してもらったり、先輩社員とのオンライン座談会を開催するなど、入社後の活躍をイメージしやすい工夫を行っています。さらに、入社後も、配属部署の決定までの期間に、社内研修や他部署との交流機会を設けることで、スムーズな環境適応をサポートしています。

こうしたシームレスなオンボーディングは、「E社に入社して良かった」と感じてもらうことにつながります。初めての仕事で不安を感じているときこそ、手厚いサポートを提供することで、従業員のロイヤルティを高め、長期的な定着にもつなげているのです。

また、E社では、従業員エンゲージメント調査を年2回実施し、継続的に従業員の声を収集しています。調査結果は経営陣に報告され、課題解決に向けたアクションプランが策定されます。従業員の意見を施策に反映する姿勢は、「会社は自分の声に耳を傾けてくれる」という信頼感を生み、エンゲージメントの向上につながっています。

加えて、E社は、採用ブランドと消費者向けブランドの一貫性も大切にしています。同社のコーポレートメッセージである「お客様の夢の実現を最高のパートナーとしてサポートする」という約束は、顧客だけでなく、従業員に対しても向けられています。採用広告や説明会で、この約束を体現するための様々な施策を紹介することで、求職者に「E社で働けば、自分もお客様の夢の実現に貢献できる」というやりがいを感じてもらっているのです。

E社の事例は、入社前から入社後までの一貫したブランド体験の提供、従業員の声の積極的な活用、採用ブランドと消費者向けブランドの一貫性の維持が、優秀な人材を引き付ける上で重要であることを示しています。

4. 採用ブランディング成功のためのヒント

ここまで、採用ブランディングの基礎知識と、優れた取り組み事例を紹介してきました。最後に、採用ブランディングを成功させるためのヒントを8つ挙げておきます。

1. 明確なブランドアイデンティティの確立

採用ブランディングを始める前に、自社の独自性や強みを明確にしておく必要があります。他社との差別化ポイントを整理し、それを求職者に的確に伝えられるようにしましょう。

2. ターゲット人材の理解と共感

自社が求める人材像を明確にし、そのペルソナの価値観や欲求を深く理解することが大切です。求職者の立場に立って、共感を得られるメッセージを発信しましょう。

3. オーセンティックなストーリーテリング

求職者に自社の魅力を伝えるためには、オーセンティックなストーリーテリングが効果的です。経営理念、社風、従業員の声など、リアルな情報を積極的に発信しましょう。

4. 一貫したブランドエクスペリエンスの提供

求職者との接点(採用広告、説明会、面接、内定式など)において、一貫したブランドエクスペリエンスを提供することが重要です。求職者の目線で、体験設計を行いましょう。

5. データ駆動型アプローチの採用

採用ブランディングの効果を測定し、改善するためには、データの活用が不可欠です。応募者数、採用数、離職率など、KPI(重要業績評価指標)を設定し、PDCAサイクルを回しましょう。

6. 全社的な取り組みとしての推進

採用ブランディングは、人事部門だけの取り組みではありません。経営層を巻き込み、全社的な取り組みとして推進することが求められます。

7. 社内アンバサダーの育成と活用

従業員は、企業の魅力を伝える最大の資産です。社内アンバサダーを育成し、採用活動に積極的に関わってもらうことで、求職者の信頼を獲得しましょう。

8. ソーシャルメディアの戦略的活用

ソーシャルメディアは、求職者との直接的なコミュニケーションが可能なツールです。企業アカウントを活用し、求職者のエンゲージメントを高める発信を心がけましょう。

5. 採用ブランディングの課題と対策

採用ブランディングを推進する上では、いくつかの課題も存在します。ここでは、主な課題とその対策について説明します。

課題1:一貫性のある採用ブランドの維持

採用ブランディングは、長期的な取り組みです。時間が経つにつれ、メッセージが変わってしまったり、活動が形骸化してしまう恐れがあります。

対策としては、採用ブランドのガイドラインを作成し、全社で共有することが有効です。また、定期的に活動の振り返りを行い、ブランドの一貫性を確認する必要があります。

課題2:求職者の期待とのギャップへの対処

採用ブランディングで発信する内容と、実際の社内の状況にギャップがあると、入社後の離職につながりかねません。

対策としては、入社後のミスマッチを防ぐために、リアルな情報発信を心がけることが大切です。従業員の生の声を伝えたり、職場の雰囲気が分かる動画を配信するなどの工夫が求められます。

課題3:内部コミュニケーションと従業員エンゲージメント

採用ブランディングは、外部への発信だけでなく、内部コミュニケーションも重要です。従業員が企業の魅力を理解し、発信してもらうことが欠かせません。

対策としては、経営層から従業員まで、採用ブランディングの意義や目的を共有し、一体感を醸成することが大切です。また、従業員エンゲージメント施策と連動させ、従業員の満足度を高めることも重要です。

課題4:採用ブランディングの予算と資源の確保

採用ブランディングには、一定の予算と人的資源が必要です。しかし、投資対効果が見えにくいため、経営層の理解を得るのが難しいこともあります。

対策としては、採用ブランディングの明確なビジョンと戦略を示し、経営層を巻き込んでいくことが求められます。また、データを活用し、定量的な効果を示すことも説得材料になります。

課題5:経営層の理解と支援の獲得

採用ブランディングを成功させるには、経営層の理解と支援が不可欠です。しかし、現場の苦労が伝わっていなかったり、優先順位が低いと見なされがちです。

対策としては、採用ブランディングの取り組みを、事業戦略や経営課題と紐付けて説明することが有効です。また、定期的に進捗報告を行い、経営層とのコミュニケーションを密にすることも大切です。

6. 今後の採用ブランディングの展望

最後に、今後の採用ブランディングの展望について考えてみましょう。

1. テクノロジーの進化と採用ブランディングの変化

AIやビッグデータ、VRなどのテクノロジーの進化は、採用ブランディングにも大きな影響を与えています。求職者の行動分析や、パーソナライズされた情報配信など、より高度な取り組みが可能になるでしょう。

2. ミレニアル世代とZ世代の影響

ミレニアル世代やZ世代が労働人口の中心となる中で、彼らの価値観に合わせた採用ブランディングが求められます。社会的意義や多様性、柔軟な働き方など、彼らが重視するポイントを踏まえた戦略が必要です。

3. 継続的な改善と適応の必要性

採用ブランディングは、一度確立したら終わりではありません。労働市場の変化や、求職者の嗜好の変化に合わせて、継続的に改善し、適応していく必要があります。

4. 採用ブランディングのグローバル化

グローバル競争が激化する中、採用ブランディングもグローバルな視点が欠かせません。各国の文化や慣習を理解し、現地に根差した採用ブランドを構築することが求められます。

5. 採用ブランディングとカスタマーブランディングの融合

採用ブランディングとカスタマーブランディングは、密接に関連しています。両者を統合的に捉え、シナジーを生み出すことが、今後さらに重要になるでしょう。

7. まとめ

本コラムでは、採用ブランディングについて、基礎知識から実践的なヒントまで、幅広く解説してきました。

採用ブランディングは、企業の成長と発展に欠かせない取り組みです。優秀な人材を引き付けるためには、自社の魅力を効果的に伝え、求職者との関係性を築いていく必要があります。

企業文化の醸成、EVPの構築、候補者とのエンゲージメント強化など、様々な要素が採用ブランディングの成功を左右します。本コラムで紹介した5社の事例からは、具体的なアクションのヒントが得られたのではないでしょうか。

また、採用ブランディングを推進する上では、一貫性の維持、内部コミュニケーション、経営層の巻き込みなど、克服すべき課題もあります。しかし、それらに真摯に向き合い、地道な努力を積み重ねることが、強固な採用ブランドの確立につながります。

今後、テクノロジーの進化や、ミレニアル世代・Z世代の台頭など、採用ブランディングを取り巻く環境は大きく変化していくでしょう。変化を恐れるのではなく、チャンスと捉え、柔軟に適応していくことが求められます。

採用ブランディングは、一朝一夕にできるものではありません。しかし、その取り組みは、必ず企業の未来を切り拓く原動力になるはずです。本コラムが、読者の皆様の採用ブランディングを考える上で、少しでも参考になれば幸いです。

採用ブランディングに正解はありません。自社の強みを活かし、求職者に寄り添いながら、地道にブランドを築いていきましょう。優秀な人材が集まる、魅力溢れる企業を目指して。

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