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イノーバマーケティングチーム2024/03/08 11:29:371 min read

「ギネス世界記録」のビール醸造会社Guinnessに学ぶコンテンツの企画力

「ギネス」といえば世界中で愛されている、独特の苦味がある黒ビールです。18世紀にアイルランドで生まれたギネスは時代とともに市場を拡大し、今日では黒ビールの代表格として広く普及しています。

ギネス社を語る際に欠かすことができないのが広告です。
彼らが世界各国でファンを増やすことに成功した背景として、現在に至るまで、広報活動に注力してきたことが挙げられます。今回は、ギネス社における歴代の広報活動や昨今のデジタル環境の活用法を振り返り、同社がファンを増やし続けてきた理由を探ります。

ブランドイメージを180度変えた広告

ギネス社が大々的に広告を打ち始めたのは、1930年前後のこと。それ以前においてギネス社は、主に口コミを頼りに市場拡大を目指していました。しかし、販売低迷が長引くにつれてギネス社はある課題に直面しました。

「ギネスは世界各国に浸透しつつあるが、聖パトリックデー(アイルランドの祝日)をお祝いするための飲み物という認識が強く、愛好家の年齢層も高い。もっと幅広い世代に、ギネスを日常的に楽しんでもらえないのだろうか」

そこで、ギネス社は後世に語り継がれる、動物を起用した広告を次々と生み出しました。

lovely_day_for_a_guinness.png

こちらは鳥をモチーフとした広告です。“Lovely day for a Guinness”(良い日にはギネスを)というキャッチコピーには、「アイルランドの祝日に関係なく、日常的にギネスを楽しもう」というメッセージが込められています。

my_goodness_my_guinness.png

こちらは 、“My Goodness, My Guinness” (なんてこった、僕のギネスが!)というキャッチコピーの広告です。最初の広告同様、動物と人間の姿をコミカルに描きながら、ギネスのブランドイメージを若返らせることを意図しています。

これらの動物たちは瞬く間にギネス社のマスコット的存在となり、今日においてもギネスの認知度や好感度を高める重要な役割を果たしています。

「ギネス世界記録」が刊行された背景

ギネスの戦略史上で最も有名な「ギネス世界記録」。日本では「ギネスブック」として幅広く認識されている世界記録の殿堂です。

さて、ギネス社はどんな経緯で世界一を記録した本を発行したのでしょうか。

「ギネス世界記録」が最初に刊行されたのは1955年のこと。ギネス醸造所の代表取締役、サー・ヒュー・ビーバー氏が仲間たちと狩りに行った際、「狩りの獲物のうちで一番早く跳べる鳥は何か」という議論が白熱しました。「ムナグロが一番だ」「いや、ライチョウの方が早い」という終わりのない会話の中、彼の頭にアイディアがひらめきました。

「人間は世界一を競うことが大好きだ。世界記録を集めた本を作れば、人々はその内容を酒の肴にして盛り上がる。人々が議論に夢中になれば、ビールの杯も進むに違いない!」

ビーバー氏はこのアイディアを具体化するように仕向け、ギネスの名前で世界記録集を編纂(へんさん)させました。「ギネス世界記録」はビーバー氏の目論見通りギネスの販売に貢献するだけでなく、ギネス社を世界に知られる企業へと昇華させました。

共感を呼ぶ動画広告

動物のマスコットや「ギネス世界記録」が今日に至るまでギネス社の販売戦略に貢献している一方で、彼らはデジタル社会においても新しい形で広報活動に力を入れています。

「デジタルは広告のあり方に革命を起こしましたよ。デジタルのおかげで、より大勢のオーディエンスに向けた情報発信が可能になると同時に、込み入った話を従来のテレビCMより長いフォーマットで発信できるようになりました」

ギネス社のマーケティング責任者であるStephen O’Kelly氏は、同社が2014年に手がけた動画広告「Sapeurs(サプール)」を引き合いに出します。

 

 

Guinness 'Sapeurs' from Finger Music on Vimeo.

動画に登場するのは「サプール」と呼ばれるコンゴのおしゃれな男たち。日中の重労働を終えると、彼らはカラフルなスーツを着こなして街へ出かけていきます。日常の疲れから解放されて人生を謳歌するサプールたちは、動画の終盤でギネスを交わし合います。

上記の動画は1分30秒ほどの長さですが、 サプールに興味を持った人たちのために約5分のドキュメンタリーも用意されました。

「驚くべきはドキュメンタリーの視聴回数。YouTubeだけでも170万回以上も視聴されました。これは5分という動画の長さを考えると驚異的な数字です」

O’Kelly氏は、「人生を楽しむべき」というギネス社が送るメッセージに対する反応の良さを受け、デジタル社会では良いコンテンツを発信すればオーディエンスに好意的に受け入れられると述べています。

Facebookの活用法

さらに、ギネス社はFacebookやTwitterといったソーシャルメディアにおいても、独自のアイディアでファンを増やす努力を図っています。ここでは彼らのFacebookに見られる特徴を2つご紹介しましょう。

歴史が一目でわかるタイムライン

ギネス社が公式Facebookで彼らのタイムラインを見ると、過去のアクティビティはギネス社がビールの醸造を開始した1759年まで遡ることができます。

1759guinness.png

https://www.facebook.com/GuinnessJapan/?fref=ts

タイムラインにはもともと自分史を記録できる特徴がありますが、リアルタイムでの投稿が積み重なって歴史になっていくというのが通例です。また、過去に遡った投稿が可能でも、ここまで過去に遡って自社の取り組みを語れるのはギネスの強みです。この強みを生かし、彼らは250年以上に及ぶギネスの歴史を視覚的に楽しめる形で紹介しています。

リアルタイムでのコミュニケーション

また、ギネス社はギネスファンが思わず反応したくなるような情報をFacebook上に投稿しています。その主たる内容は新商品や限定商品の告知ですが、彼らは一方的に情報を発信するだけでなく、「うちの近くで新商品が手に入る場所はどこ?」「限定商品が欲しいけれど見つからない!」といった個別の投稿にも必ず返信をし、消費者が必要とする情報をリアルタイムで届けています。

「ギネスは伝統的に情報発信を得意としてきました。しかし、デジタル環境が整った今日には、一方的な情報発信ではなく、双方向のコミュニケーションを重視したいと考えています」

O’Kelly氏が語るように、「ギネスを使って料理に工夫を加えよう」「黒ビールの絵文字を作る運動に参加しよう」「黒い物体は、本当はルビーのように赤い色をしているって知ってた?」などと、ギネス社はさまざまなトピックを提供しながらオーディエンスと接触し、ファンを増やす機会を作っています。

独自の世界観を繰り広げることが成功の鍵

特徴的な広告や「ギネス世界記録」という従来の手法にとどまらず、次々と新しい形で自社を表現するギネス社。彼らの成功の秘訣は、ギネスの世界観をさまざまな形で発信し続けている点にあると言えるでしょう。

参考:

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イノーバマーケティングチーム

株式会社イノーバの「イノーバマーケティングチーム」は、多様なバックグラウンドを持つメンバーにより編成されています。マーケティングの最前線で蓄積された知識と経験を生かし、読者に価値ある洞察と具体的な戦略を提供します。