テレアポや対面営業を中心とした従来のアプローチだけでは営業成果を上げることが難しくなっているなか、国内でもマーケティングに力を入れる企業が増えています。一口にマーケティングといってもさまざまな活動がありますが、ここ数年、BtoB(企業対企業)ビジネスの分野で特に注目されているのが「デマンド・ジェネレーション」と呼ばれる取り組みです。
この記事では、BtoBマーケティングにおけるデマンド・ジェネレーションの大まかな流れを理解するとともに、各フェーズで具体的にどのような施策を行なうのかを解説します。
デマンド・ジェネレーションとは
デマンド・ジェネレーション(Demand Generation)は日本語で「需要創出」と訳され、その名の通り、営業活動の起点となる良質な見込み客のリストを作り出すための一連の活動を指して使われる言葉です。
一般にBtoB向けの商材やサービスは、BtoC商材に比べてファーストコンタクトからクロージングまでに長い時間がかかります。法人取引における購買プロセスは複雑で、とくにパッケージソフトウェアのように高額なものでは、案件の発生から受注に至るまでの期間が半年、1年、あるいはそれ以上に及ぶことも珍しくありません。
こうしたなかで営業活動を効率化していくためには、営業活動の元となる見込み顧客リストの「質」が重要なポイントとなります。
BtoBマーケティングを導入している企業では、マーケティング部門が収集した見込み顧客リストを営業部門に手渡し、これを基に営業部門が営業活動を展開します。見込み顧客のリストは展示会や自社Webサイトからの資料請求などを経由して収集されますが、そのようにして獲得した見込み顧客の全てが必ずしも案件化し、受注に繋がるわけではありません。
たとえば、展示会で獲得した見込み顧客リストの中には、単にノベルティグッズ欲しさに名刺を渡しただけの人が多数含まれているかもしれません。また、Webサイトから資料を請求してきたからといって、必ずしも購入意思があるとも限りません。
つまり、獲得したばかりのリストは玉石混交の状態であり、このリストをそのまま利用して営業活動を展開するのは、コストの面でも労力の面でも非常に非効率だと言わざるを得ないのです。このような問題を解決するのが、デマンド・ジェネレーションという活動の目的です。
デマンド・ジェネレーションの3つのステップ
デマンド・ジェネレーションは、下記のような流れで展開します。
①リードジェネレーション
②リードナーチャリング
③リードクオリフィケーション
各ステップで行う活動について、順に見ていきましょう。
①リードジェネレーション/見込み客を集める
リードジェネレーションは、自社の製品やサービスの顧客となりうる見込み客(リード)を集めるための一連の活動を行うステップです。このステップでは有望な見込み顧客を集客し、見込み顧客リストを作成します。
ここで集めた見込み顧客リストがこの後の活動の源泉となるため、基本的にはできる限り多くの数を集めることが望ましいといえます。
とはいえ、単に数が多ければいいというわけではありません。自社の製品やサービスを購入しうるターゲット層をきちんと定義したうえで、ターゲット層に重なるようなリードを獲得していかなければなりません。
リードジェネレーションの施策としては、以下のような施策が一般的です。
- 展示会の実施
- Webサイトの運営
- 広告出稿
- セミナーの運営
- DMやメールの送信
どの施策が有効かはターゲット層によっても異なるため、ターゲットの特性や自社の状況に応じて、最も効果の上がる施策から優先的に取り組んでいくことが重要です。
②リードナーチャリング/集めたリードを育成する
リードナーチャリングの「ナーチャリング」は「育成」という意味で、日本語では「見込み顧客育成」と訳されています。このステップでは、獲得したリードリストに対してメールやWebを通したアプローチを行い、見込み顧客との関係性を強化し、購買意欲を高めるための活動を行います。
具体的なアクションとしては、以下のようなものが一般的です。
- メールの配信
- Webコンテンツやノウハウ資料の提供
- 無料セミナーの開催
リードナーチャリングに着手する際に重要なのは、顧客リストを一元管理するということ。
獲得した見込み顧客の情報がメールボックスや名刺フォルダ、Excelの表など、さまざまな形であちこちに散在している状態では、効率のよいリードナーチャリングは行えません。そこで、CRMと呼ばれる顧客関係性管理のためのソフトウェアなどを導入し、見込み顧客のリストを一元管理するための体制を整えたうえで、ナーチャリングに取り組んでいきます。
③リードクオリフィケーション/商談に繋がる顧客を抽出する
このようにして顧客を育成し、最終的には育成した顧客のリストを営業部門に引き渡すことになりますが、この際にポイントとなるのが、できるだけ受注に繋がる確率の高い見込み顧客を抽出するということ。このために行われるのが、3つ目のステップである「リードクオリフィケーション」です。
リードクオリフィケーションを行う際に参考には、スコアリングと呼ばれる手法を用いて顧客の購買意欲を評価します。
具体的には、以下のような情報を参考にして点数をつけ、一定の点数を満たした見込み顧客を抽出するのです。
- 企業規模
- 業種
- 担当者の職位
- 行動の記録(展示会参加、メールへの反応、資料ダウンロード、サイト上での閲覧ページなどの行動とその時期)
顧客行動の把握や点数化を手動で行うのは非常に手間がかかるため、通常は専用のツールを利用します。
昨今では、リードジェネレーションからナーチャリング、リードクオリフィケーションまでをワンストップで管理できるマーケティング・オートメーションのツールを導入し、受注に繋がりそうな「ホットなリード」を機械的に抽出するような仕組みを構築する取り組みに注目が集まっています。
マーケティング部門と営業部門とのスムーズな連携が鍵
以上、BtoBマーケティングにおけるデマンド・ジェネレーションの概要と、実施における3つのステップについてお話ししました。
前述のとおり、この活動の直接的な目的は営業のスタート地点となる良質なリードリストを作成することにありますが、ここで忘れてはならないのが、「企業としての最終的な目的は利益を上げることにある」ということです。そして、この最終目的の達成において重要な鍵を握るのが、マーケティング部門と営業部門との連携です。
たとえば、マーケティング部門が考える「良質なリードリスト」と営業部門が考えるそれとの間に乖離(かいり)があれば、当然のことながら営業成果は上がりません。両部門がよい関係を保ち、情報やフィードバックを適時交換しながらリードリストの質を高めていける基盤を整えることが、この活動の成否を分けるポイントだと言えるでしょう。