本当にSEO効果があるの?サテライトサイトを立ち上げるべきケースを考える

デジタルマーケティング
SEO対策にはさまざまな手法がありますが、その中の一つに「サテライトサイト」があります。サテライトサイトを立ち上げ、運営することは、相応の手間や時間がかかりますが、実際のところどの程度リターン(SEO的な効果)を得られるものなのでしょうか。具体的に得られる効果やサテライトサイトを立ち上げるべきケースについて、事例と一緒に紹介いたします。
目次
サテライトサイトとは何か
サテライトサイトとは、普段運営しているメインサイトとは別に立ち上げる、別ドメイン(独自ドメインまたはサブドメイン)のサイトのことを指します。言葉の通り、メインサイトに対する「衛星」のようなサイトと考えるとイメージしやすいかもしれません。
サテライトサイトを制作する主な目的は、メインサイトでは取り扱っていない情報を掲載することで、ターゲットの幅を広げたり、メインサイトとは異なる層へのアプローチをしたりすることなどが挙げられます。
例えば、オーディオ機器専門のECサイトの場合、商品の販売ページとは別に「音楽の楽しみ方」「音響効果の高い部屋の作り方」などの記事系コンテンツを掲載することで、オーディオ機器の購入を検討する前の潜在層にアプローチすることができます。しかし、商品の販売をメインとしているサイトに記事系コンテンツを載せると、サイト構成が複雑になり、ユーザビリティの低下や、各々の要素の埋没といった訴求効果の低減につながり、本来の目的であるオーディオ機器の販売について機会損失を引き起こすリスクがあります。
こうした場合に、記事系コンテンツを掲載するWebサイトをサテライトサイトとして新たに立ち上げることで、それぞれのWebサイトのユーザビリティが下がる事態を防ぐことができます。
また、サテライトサイトからメインサイトへ送客が可能になることや被リンクによるSEO効果もメリットと言えます。
ただ、最近ではサテライトサイトを制作する企業が増えたことで「被リンク効果がありSEOに効く」という部分だけが独り歩きし、SEOのためだけにサテライトサイトを大量に作るような好ましくない手法が増えているという問題もあります。
「被リンク効果でSEOにつながる」は本当か?
実際のところ、サテライトサイトにはSEO効果があるのでしょうか。マーケティングに関する記事を読んでみると「ある」と断言している場合もありますが、実際は「サテライトサイトの内容によっては効果がある」というのが正確なところでしょう。
Googleなどの検索エンジンはユーザビリティの向上のために絶えず検索エンジンのアルゴリズムの改善を行っており、上位表示を狙うためだけの悪質な行為にはペナルティが課されます。悪質な行為とされるものの中には中身のともなわない不正な被リンクを集める行為も含まれており、必ずしもリンクを集めれば上位表示につながるわけではないことに注意が必要です。
サテライトサイトを立ち上げること自体は不正ではありません。しかし、メインサイトとの関連性が薄かったり、サイト自体に明確な目的がなかったりした場合は、良質な被リンクと見なされずSEOの効果がないことも十分に考えられます。また、サテライトサイトの立ち上げに時間を取られ、メインサイトの更新がおろそかになると、検索エンジンからの評価を下げる可能性もあります。
もちろん、サテライトサイトがユーザビリティの向上につながる、良質なリンクとして機能している場合は検索エンジンからの好評価につながるでしょう。したがって、サテライトサイトからの被リンクを検索エンジンに高く評価してもらうためには、
・サイト同士のテーマが関連している
・サテライトサイト自体が明確な目的を持っている
この2点の条件を満たす必要があることを、しっかりと認識しておかなければいけません。
サテライトサイトの目的と役割
サテライトサイトを運営する目的と役割を正しく理解しておきましょう。
メインサイトの被リンクを増やす
まず一つは、他のWebページから自社のメインサイトへのリンクを獲得する、つまり、被リンクを増やすという目的があります。被リンクは、検索エンジンのランキングやWebサイトの信頼性の向上に繋がる場合もあります。ただし、先述の通り、Googleのコアアルゴリズムアップデートにより、品質の低いサテライトサイトやリンクの濫用を検出するようになったため、最近は形だけのサテライトサイトは減少傾向にあります。
潜在ユーザーの獲得
そして、サテライトサイトは、メインサイトではアプローチできないターゲット層に訴求し、潜在ユーザーを掘り起こすという目的でも運用されます。メインサイトで取り扱っている商品・サービスと関連性はあるけれど、メインサイトのターゲット層とは異なるユーザーを対象とした商品・サービスを取り扱う場合、メインサイトとは別のWebサイトで集客した方が、それぞれのサイトのユーザーにとってわかりやすいサイトになります。メインサイトのターゲット層とは異なる関心を持つターゲット層が、ユーザビリティの高いサテライトサイトでカスタマイズされたコンテンツや情報を受け取ることで、将来的にメインサイトの顧客になりうる潜在ユーザーを獲得することが可能となります。
リターゲティングリストを充実させる
Webサイトを訪れたユーザーに対して、その後訪問したWebサイトに関連する広告を表示する戦略をリターゲティング広告と言います。サテライトサイトに訪れた方は、自社製品やサービスに関わる関心や悩み等を持っていると思われるので、リターゲティング広告を出稿する際のリストとして活用することができます。追跡して自社の商品やサービスを宣伝することで集客や売上アップに繋がる可能性があります。
サテライトサイトを作るかどうかの基準
これまでの流れをまとめると、サテライトサイトを立ち上げる主な目的は、さまざまな理由からメインサイトに掲載できない(適していない)情報を発信し、これまでにないターゲットを取り込むことにあります。
そのため、こうした明確な目的がある場合は「サテライトサイトを作るべき」と言うことができるでしょう。具体的には、以下のようなケースが考えられます。
メインサイトと分けて作成する必要があるのかを考える
メインサイトと関連性のあるテーマを扱うことはもちろん大切ですが、コンテンツのカテゴリを細分化しすぎないようにすることも大切です。1つのサイトで完結できるコンテンツを、わざわざサテライトサイトを作って分けてしまうと、かえってユーザーにとってわかりにくくなり、SEOの観点からもおすすめできません。本当にメインサイトと分けてつくる必要があるのかを考えましょう。
メインサイトと異なるターゲットにアプローチしたい場合
一つのサイトに対して複数のターゲットを設定するのは、サイトのコンセプトの点からもSEO対策の点からも効率的とは言えません。そのため、メインサイトと全く異なる層やより幅広い層、もしくはより狭い層にアプローチしたい場合は、サテライトサイトを立ち上げることをおすすめします。
具体的には、以下のようなケースはサテライトサイトを立ち上げることが適切です。
例)商品情報を掲載しているメインサイトに対して、潜在層向けのブログサイトを立ち上げるケース
メインサイトと取り扱うテーマの広さが異なる場合
取り扱うテーマの幅の違いから、サテライトサイトを立ち上げるべきケースもあります。取り扱いたいテーマが、メインサイトと一定の関連はあるものの、明確な違いがある場合には、サテライトサイトを立ち上げて運用することで、各テーマにおけるユーザーのニーズにそれぞれ応えることができ、満足度の向上につながります。
例)転職者全般を扱うメインサイトに対し、エンジニア職の求人情報に特化したサテライトサイト
例)全ての商品・サービス情報を網羅するコーポレートサイトに対し、特定の商品・サービス情報に特化したサービスサイト
上記のような例は、目的やコンセプトがはっきりしているため、サテライトサイトを立ち上げることでこれまでと異なるターゲットの取り込みや、ユーザビリティの向上が図れると考えられます。もちろん、被リンクによるSEO効果も期待できるでしょう。
ただ、これまで運営してきたメインサイトとは別に、もう1本サイトを運営することになるため、その時間や手間がかかることは認識しておく必要があります。サテライトサイトを作ってもメインサイトの更新を続ける必要があり、そのためのリソースが確保できていないとコンテンツの充実度を下げることになりかねません。
こうした理由もあり、SEO効果だけを狙ってコンテンツサイトを立ち上げるのもあまりおすすめできません。必要性のないサイトを立ち上げるくらいなら、本サイト1本に絞ってコンテンツ制作に注力したほうが、SEOの効果も期待できるでしょう。
効果的なサテライトサイトにするためのポイント
サテライトサイトをつくる際のポイントについて紹介します。
単体で意義のあるサイトをつくる
サテライトサイトをメインサイトへの誘導を目的に運営する場合、そのサテライトサイトが単体で集客できなければ、メインサイトの集客力に繋がらず、も意味がないものになってしまいます。そのため、サテライトサイト単体で存在意義のある良質なサイトをつくり、メインサイトへのリンクを貼って導線を充実させましょう。
役立つコンテンツを掲載する
前項の良質なサイトづくりに関わってきますが、ユーザーにとって役立つコンテンツを掲載し、定期的な更新を怠らず、常に運用されているサイトにしましょう。
また、本サイトと関連のあるテーマを扱うことは基本です。関連のないテーマのサイトからのリンクはSEO的にも良くありませんし、メインサイトのユーザー獲得につながりにくいので非効率です。
メインサイトと別のドメインを使用し、IPアドレスを分散
サテライトサイトは独自ドメインでつくらなければ、メインサイトの一部となり、外部リンクの効果はありません。また、IPアドレスもクラスC以上分散させなければ、同じサーバーからのアクセスとなり、SEOの効果がありません。
サテライトサイトのペナルティリスク
コンテンツの内容が重複していたり、情報量が乏しかったり、内容の薄いアフィリエイトページだったりと、いい加減なサテライトサイトをつくるとGoogleペナルティを受けるリスクがあります。
Googleペナルティとは?
Googleペナルティは、Googleガイドライン「ウェブマスター向けガイドライン(品質に関するガイドライン)」に違反したときに課せられる罰のことで、Googleのサーチクオリティチームがサイトを目視で確認し、手動で課す「手動ペナルティ」と検索エンジンのアルゴリズムが自動で判断して課す「自動ペナルティ」の2種類あります。
ペナルティを受けると検索結果上でWebサイト全体が圏外になったり、インデックスから削除されたりすることがあります。
Googleペナルティを受けやすいサテライトサイトの特徴
ここでは、Googleペナルティを受けやすいサテライトサイトの特徴を紹介します。
コンテンツの質が低いサイト
コンテンツの内容が重複していたり、情報量が乏しかったり、内容の薄いアフィリエイトページだったりするサイトは質が低いとみなされ、Googleペナルティの対象になる可能性が高いです。
不自然なリンクが多いサイト
大量の相互リンクや、ユーザー目線でわかりづらいリンク、相互に関連性のないリンクは不自然なリンクと判断され、こうした不自然なリンクが多いWebサイトは「SEO対策のためだけにリンクを設置している」と判断され、Googleペナルティの対象となります。
オリジナリティがないサイト
オリジナルのコンテンツがなく、コピーコンテンツがたくさんあるサイトはペナルティの対象になります。
更新頻度が低いサイト
更新されていないサイト、つくったまま放置されているサイトはSEO上の価値が低いサイトとみなされる可能性が高いです。
サテライトサイトの活用事例
実際にサテライトサイトを活用している事例を紹介します。
例1 英会話教室を運営しているケース
英会話スクール「The English Club」では、英語の語源を紹介するサテライトサイトを設置しています。
例2人材紹介系のサイトを運営しているケース
求人サイトを運営している「リクナビ」では、新卒向けの求人情報を掲載しているメインサイトに加え、社会人の転職向けのWeb サイトや派遣雇用の求人に特化したWebサイトも含め、仕事を求めている人の属性に合わせて複数のWebサイトを運営しています。
WebサイトのSEO効果を上げるポイント
Googleなどの検索エンジンは、表示順位を決定する基準として「ユーザーにとって有益な情報」であるかどうかを重視しています。
これはGoogleが収益のほとんどを広告収入に頼っていることと大きな関係があります。検索ワードと関連が深い、かつ役に立つ情報が上位表示されなければ、ユーザーは検索エンジンを使用しなくなり、広告価値が減少してしまうことになるでしょう。そうならないよう、Googleでは常にユーザーファーストを掲げ、検索エンジンアルゴリズムやユーザビリティの改善を繰り返しているのです。
この基準の重要性は、サテライトサイトにおいても変わることはありません。上位表示を狙うのであれば、最も大切なのはユーザーにとって有用なコンテンツを発信し続けることであり、サイトを複数作る場合はコンテンツの質を担保する必要があります。もしそれができない場合は、ユーザー離れや表示順位の低下を招くことになるでしょう。
まとめ
サテライトサイトを立ち上げることで、一定のSEOの効果があるのは事実です。ただ、被リンクを獲得するためだけにサイトを乱立させるような手法は、手間やコストを考えると費用対効果という観点からも疑問が残ります。サテライトサイトはあくまで、ユーザーにとっての情報の利便性を考慮し、ターゲットを分けるなどの目的がある場合に検討することをおすすめします。
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