営業活動のパフォーマンスの向上や業務効率化には、顧客管理の仕組みを整えることが必須です。自分たちにはどのような顧客がいて、商談はどのようにどこまで進められているのか、といった営業活動を可視化することで、次にどのようなアプローチをすべきか戦略を立案できるからです。自社に収益をもたらしてくれる顧客のリストは企業の資産といえます。適切に管理し、戦略立案に活かしていきましょう。
顧客管理の代表的な方法として、エクセルの活用があります。エクセルソフトがあれば、無料で顧客管理ができるのがメリットです。しかし、我流で進めてしまい、うまく顧客管理ができていないケースも多いようです。顧客管理には整理すべき情報にモレがあると、その顧客情報をもとに実行する次の一手にもモレがでてしまいます。そこで、エクセルを活用した顧客管理方法を解説させていただきました。しかし一方で、エクセルによる顧客管理には限界があるのも事実です。手軽な反面、量が増えると管理負担が増加してしまいます。この問題点を解消できるツールとしてSFAというシステムもあわせて紹介いたします。
エクセルを利用した顧客管理方法
顧客管理のやり方を検討するには、その目的をチェックしておくことが大切です。
顧客管理の目的とは、「顧客の情報を整理して現状を把握できるようにすること」と、「現状把握から次にどのようなアクションをすべきかを可視化すること」に大別されます。現状が把握できていないと、自社の状況に合っていないアクションを立案してしまうことになります。また、情報が整理されていても、そこから次の一手を立案しなくては整理した意味がありません。顧客管理は現状把握とアクション立案の両輪で回していく必要があるのです。
また、顧客管理は情報を共有することが大切です。営業担当者が個別で管理していては、組織的な営業パフォーマンスは高めることができません。共有することで、営業マネージャーは誰がどんな顧客を抱えているかを把握でき適切な指示がだせるようになりまし、ノウハウが蓄積していくので成長速度を高められる効果もあります。エクセルで顧客管理をする場合、まずどのように共有するかを決めておく必要があります。
管理すべき情報とは?
顧客管理で把握すべき情報は、「営業活動に活用できる情報すべて」となります。ここでモレがあると、活動にもモレがでることになります。顧客名はリスト化しているという企業は多いと思いますが、顧客名だけわかっても、その顧客とのこれまでの取引実績や抱えている課題がわからなければ、営業対策は立てられません。ポイントは、営業担当者が変わっても後任がすぐに営業活動できるだけの情報が整理されているか、という視点から情報を蓄積しておくことです。一般的に、顧客管理に必要な情報は以下の通りです。
- 目標に関する情報
全体と個別の予算はもちろん、週に〇件アポをいれるといった行動目標も明確にして共有しましょう。営業に限らず問題解決は目標と現状のギャップを埋めることです。これによって、課題の設定がしやすくなります。また、〇〇業界を中心に営業する、高単価案件の獲得に注力する、など、日常業務に流されて忘れがちな営業方針も共有しておきましょう。
- 顧客属性に関する情報
顧客基本情報(企業名、連絡先、担当者名など)とともに、コンタクトの日時や場所、過去の取引実績、購入確度の視点で評価したランク等を記録しておきましょう。これらの情報を明らかにすることで、自社との関係の強さや売り先としての魅力を可視化できます。次のアクションを立案するうえで必須となる情報といえるでしょう。
- 案件に関する情報
直近の売上をあげるための最も重要な情報となるのが案件情報です。課題、そのテーマが生まれた背景、納品期日、受注確度などを記録します。また、これらの情報をもとに、どのような提案をすればよいかもアウトプットしておくことも忘れないようにしましょう。できれば担当者だけでなく上司も一緒になって、提案方法を検討することで受注率を高めていくことができます。
- 行動に関する情報
顧客属性情報や案件情報に紐づけて、次にどのようなアクションをとるかをアウトプットするようにしましょう。例えば、顧客属性情報にあるランクAの顧客を優先して〇月中に20件訪問する、〇日までにA案件に訪問して提案する、などです。事前に一つ一つ行動内容を明確化しておくことで、行動に迷いがなくなり営業活動の成果を高めることができます。また、大切なのが振り返りの時間を持つことです。計画に対して結果はどうだったのか、改善の余地があれば改善しますし、場合によってはその行動をやめるという選択もあります。どちらにせよ振り返りの時間を持つことで、このような意思決定が可能になります。
このように、顧客、案件、それに対する行動という視点から顧客管理を進めていきます。可能であれば、ランクA顧客の一覧、緊急度の高い案件一覧というように、切り口を変えて可視化しておくことで、より戦略の意思決定がしやすくなります。
エクセルとSFAのメリット・デメリット
顧客管理には専用のツールもあり、それがSFAです。SFAとは、セールスフォースオートメーションの略で、営業活動の推進のために開発されたツールです。顧客のリスト化はもちろん、顧客属性の情報、案件の進捗状況、提案内容、営業スケジュールなど営業活動に関する一切の情報を一元管理できます。エクセルを活用するか、SFAを活用するかを検討するために、それぞれのメリットとデメリットをみていきましょう。
エクセルによる顧客管理のメリット・デメリット
メリットは、「無料ですぐにスタートできること」、「自社のスタイルに合わせてシートをカスタマイズできること」が挙げられます。無料で手軽に始められることが最大のメリットといえるでしょう。
反面、デメリットには、「入力作業が多くて負担が大きい」、「自由にカスタマイズできる分、モレも発生しやすい」、「共有化がしづらい」、「入力内容の変更履歴を追うことが難しい」があります。エクセルによる顧客管理の悩みとしてよく聞かれるのは、最初の作業に関する負担の高さです。顧客管理は、今日初めて明日には売上が上がるという類の活動ではありません。継続してこそ意味があるのですが、作業に関する負担がそれを難しくしている要因となっています。エクセルを利用する場合、営業部員に作業の徹底を求めるなどの対策をたてておくことが重要です。
SFAによるメリット・デメリット
SFAによるメリットは、「入力作業の負担がエクセルに比べて圧倒的に少ない」、「フォーマット化されているので感覚的にも利用しやすい」、「顧客の属性情報、案件情報、行動情報がすべて一元管理できる」、「ランクAの顧客のみの情報、緊急度の高い案件の検索など、特定の切り口で情報を表示できる」があります。SFAは営業推進を目的に開発されただけあり、情報の入力から運用まで必要な情報をカバーしながら負担も軽減することができます。
一方のデメリットは、「基本的に有料となる」、「導入に時間がかかる」が挙げられます。製品なので有料であることは当然ですが、近年ではSFAは人気がでたことで低価格のものも多くリリースされているので、チェックしてみるとよいでしょう。導入に関する手間とは、どのSFAを導入するかの検討や社内稟議、スタッフへの使い方の説明。操作に習熟するための時間が挙げられます。これらはSFAを導入するうえでの障害となるものですが、すべて初期段階のことです。その後の運用負担の軽減を考慮すれば、長い目でみて総合的には負担は減らすことができると考えてよいでしょう。
エクセルとSFA、どちらを選ぶべき?
それでは、エクセルとSFAではどちらを選ぶできでしょうか。それぞれにメリット・デメリットがありましたが、検討のポイントは管理すべき情報の「量」です。
エクセルは無料で手軽に始められるので便利ですが、管理情報が増えるほど作業負担も増加します。顧客管理にモレがあったり、途中で管理をやめてしまったりするのは、この作業負担が大きいことが要因です。本来、顧客や案件が増えるほど、より適切に管理しなくてはならないのに、負担が増えて管理ができなくなってしまうことになります。管理すべき情報を減らしてエクセルを利用している企業もいますが、情報にモレがあると受注率の低下につながります。
このように、エクセルは便利であるものの限界があることを認識すべきでしょう。顧客や案件が少ないうちはエクセルでもいいですが、負担を感じるような量になった段階でSFAの検討をおすすめします。
顧客管理で効率的に売上向上
営業活動において顧客管理は、売上に直結する大事な活動です。顧客管理をしっかり行うことで、自社にはどんな顧客や案件があり、次にどんなアクションをとればよいかが明確になります。顧客の管理は、顧客の属性情報、案件情報、行動情報の3つの視点から蓄積していきましょう。エクセルでも可能ですが、限界があるので一定量でSFAへの切り替えをおすすめします。適切な顧客管理で売上向上をより効率的に実現していきましょう。