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イノーバマーケティングチーム2024/04/01 14:16:303 min read

士業のためのMA活用ガイド

1. はじめに

士業におけるマーケティングの重要性が高まっています。競争が激化する中、効果的なマーケティング施策を実行し、顧客との強固なリレーションシップを構築することが不可欠です。本記事では、士業がマーケティングオートメーション(MA)を活用して、顧客獲得からリピート促進まで、一貫した顧客体験を提供する方法を解説します。

1.1 士業におけるマーケティングの重要性

士業は専門性の高いサービスを提供するため、一般消費者にその価値を理解してもらうのが難しいという課題があります。MAを活用することで、潜在顧客の関心を引き、教育的なコンテンツを提供しながら、徐々に信頼関係を構築できます。また、既存顧客とのコミュニケーションを自動化・最適化することで、満足度を高め、リピート率を上げることができます。

1.2 顧客とのリレーションシップ構築の必要性

士業のサービスは、一度きりの取引ではなく、長期的な関係性に基づくことが多いです。顧客のライフステージに合わせて、適切なタイミングで必要な情報を提供し、寄り添うことが求められます。MAを用いることで、顧客一人ひとりの特性に応じたパーソナライズされたアプローチが可能となり、強固な信頼関係を築くことができます。

 

2. マーケティングオートメーションとは

マーケティングオートメーション(MA)は、マーケティング業務を自動化・効率化するためのシステムおよびプロセスを指します。顧客データを一元管理し、適切なタイミングで最適なコンテンツを配信することで、見込み客の育成や顧客エンゲージメントの向上を図ります。

2.1 定義と概要

MAは、主にWebサイトやメール、ソーシャルメディア等のデジタルチャネルを通じて、見込み客の獲得から育成、コンバージョンまでのプロセスを自動化するものです。行動履歴や属性情報等の顧客データを収集・分析し、パーソナライズされたコミュニケーションを実現します。単なるメール配信の自動化だけでなく、見込み客のスコアリングやナーチャリング、キャンペーンの最適化なども含まれます。

2.2 主要機能

MAツールには以下のような主要機能があります。

  1. リードジェネレーション:Webフォームや資料請求等を通じて見込み客を獲得する
  2. リードナーチャリング:コンテンツ提供等で見込み客を育成し、購買意欲を高める
  3. リードスコアリング:見込み客の属性や行動に基づいて、販売担当への引き渡し時期を判断する
  4. カスタマージャーニー管理:顧客の状況に応じて、最適なコンテンツを自動で配信する
  5. メールマーケティング:配信対象や時期を最適化し、メールの開封率・クリック率等を改善する
  6. ソーシャルメディア連携:ソーシャル上の顧客の反応をトラッキングし、適切にフォローする
  7. レポーティングと分析:キャンペーンの効果を可視化し、PDCAサイクルを回す

2.3 ベンダー紹介

国内外には多数のMAツールベンダーが存在します。代表的なものは以下の通りです。

  • Salesforce Marketing Cloud
  • Adobe Marketing Cloud
  • HubSpot
  • Marketo
  • Marketing Cloud Account Engagement(旧Pardot)
  • Oracle Eloqua
  • Microsoft Dynamics 365 Marketing

士業向けに特化したMAツールも登場しています。業界特有の課題に対応した機能を備えているため、導入を検討する価値があるでしょう。

 

3. 士業におけるMAの活用例

MAは様々な場面で活用できます。ここでは、士業特有の活用事例をいくつか紹介します。

3.1 顧客獲得(セミナー集客、ウェビナー等)

士業にとって、セミナーやウェビナーは見込み客獲得の重要な機会です。MAを活用することで、効率的に集客し、フォローアップすることができます。具体的には、以下のような施策が考えられます。

  • ターゲットリストの作成と配信
  • セミナー参加申込フォームの最適化
  • リマインドメールの自動配信
  • 参加者の行動トラッキングと分析
  • フォローアップコンテンツの提供

3.2 リレーションシップマーケティング(ニューズレター、年賀状等)

MAを活用することで、既存顧客とのリレーションシップを強化し、リピート率を高めることができます。例えば、以下のような施策が考えられます。

  • 定期的なニューズレター配信
  • 顧客属性に応じたコンテンツ推奨
  • 年賀状やバースデーメールの自動配信
  • 顧客満足度調査の実施と分析
  • クロスセルやアップセルの提案

3.3 クロスセル/アップセル(関連サービス提案等)

MAを活用することで、顧客の購買履歴や属性情報に基づいて、関連サービスを適切なタイミングで提案できます。例えば、以下のようなシナリオが考えられます。

  • 税務顧問契約者へのコンプライアンス支援サービスの提案
  • 相続手続き支援の顧客への不動産有効活用サービスの提案
  • 事業承継コンサルティングの顧客へのM&A仲介サービスの提案

3.4 顧客アンケート・ヒアリング

MAを活用することで、顧客の声を効率的に収集・分析できます。例えば、以下のような施策が考えられます。

  • アンケートフォームの作成と配信
  • 回答データの自動集計と可視化
  • 満足度の低い顧客への個別フォロー
  • 顧客ニーズに基づく新サービス開発

3.5 評判の管理

MAを活用することで、顧客の評判をモニタリングし、適切に対応することができます。例えば、以下のような施策が考えられます。

  • ソーシャルメディアのメンション監視
  • 口コミサイトのレビュー収集と分析
  • ネガティブな評価への迅速な対応
  • ポジティブな評価の社内共有と活用

 

4. MAツールの選定ポイント

MAツールを選定する際は、以下の点を考慮する必要があります。

4.1 機能要件(顧問先データ管理、スケジューリング等)

士業特有の機能要件を満たすMAツールを選ぶ必要があります。例えば、以下のような機能が求められます。

  • 顧問先データの一元管理
  • スケジューリングとタスク管理
  • 契約書や報告書等のドキュメント管理
  • 請求書発行と入金管理
  • カレンダー連携

4.2 費用対効果

MAツールの導入コストと、期待されるリターンを比較検討する必要があります。初期費用だけでなく、運用に必要な人件費も考慮しましょう。一方で、業務効率化による生産性向上や、マーケティング効果による売上増加などのメリットを定量的に試算することが重要です。

4.3 ユーザビリティ

MAツールは、マーケティング担当者だけでなく、営業や顧問先担当者など、様々な部門のユーザーが使用します。直感的に操作でき、わかりやすいインターフェースであることが求められます。また、モバイルでの使用にも対応している必要があります。

4.4 拡張性(新サービス対応等)

士業のサービスは多岐にわたり、将来的に新たなサービスを追加することも考えられます。MAツールは、柔軟にカスタマイズでき、新サービスにも対応できる拡張性が求められます。また、他システムとのデータ連携がしやすいかどうかも重要なポイントです。

4.5 サポート体制(カスタマイズ、トレーニング等)

MAツールを効果的に活用するには、適切なサポート体制が不可欠です。導入時のシステム設定やカスタマイズ、ユーザートレーニング等において、ベンダーによる手厚いサポートがあることが望ましいでしょう。また、運用開始後も、問い合わせへの迅速な対応や、定期的なアップデート等が期待されます。

 

5. MA導入の準備と要件定義

MAを導入する前に、現状分析を行い、課題を明確化した上で、要件定義を行う必要があります。

5.1 現状分析(業務フロー、データ管理等)

現在のマーケティング業務のフローを可視化し、非効率な部分や改善点を洗い出します。また、顧客データの管理方法や、システム間のデータ連携状況なども確認します。MAに移行することで、どのような課題が解決できるかを整理しましょう。

5.2 ゴール設定(売上/利益目標、生産性向上等)

MAの導入目的を明確化し、達成すべきゴールを設定します。単に業務を自動化するだけでなく、売上や利益の向上、生産性の改善等、定量的な目標を掲げることが重要です。また、目標達成までのマイルストーンを設定し、進捗を管理する必要があります。

5.3 カスタマージャーニーマッピング(コンサルティングプロセス等)

MAを活用して、顧客の行動やニーズに合わせた最適なコミュニケーションを行うには、顧客ジャーニーを可視化する必要があります。士業の場合、コンサルティングのプロセスがジャーニーの中心になります。各フェーズにおける顧客の行動や心理を分析し、最適な接点とコンテンツを設計します。

5.4 データ連携(基幹システム、名簿管理ツール等)

MAツールと、基幹システムや名簿管理ツールとのデータ連携方法を検討します。顧客データを一元管理し、リアルタイムに同期するためには、APIによる連携が必要になるケースが多いでしょう。また、データの整合性や、セキュリティ面での対策も必要です。

システム 連携方法 連携データ
基幹システム API 顧客属性情報、契約情報等
名簿管理ツール API 顧客連絡先、セグメント情報等
Webサイト JavaScriptタグ 閲覧履歴、フォーム入力情報等
メールツール API メール配信履歴、開封・クリック情報等

 

6. MA運用とプロセス設計

MAを導入したら、具体的な運用プロセスを設計する必要があります。

6.1 キャンペーン設計(提案、フォローアップ等)

マーケティング活動の目的に応じて、適切なキャンペーンを設計します。士業の場合、セミナーやウェビナーの集客、資料請求や相談申込の獲得、顧問契約の提案等が代表的なキャンペーンとなるでしょう。ターゲットとするセグメントや、キャンペーンの目標、実施内容、スケジュールを明確にします。

6.2 シナリオ作成(トリガーメール等のシーケンス)

キャンペーンの中で、見込み客や顧客に対して配信するメールのシナリオを作成します。特定のアクションをトリガーとして、自動的にメールが配信されるよう設定します。例えば、セミナーに申し込んだ人に対して、リマインドメールや事前課題メールを送ったり、資料をダウンロードした人に対して、関連コンテンツを紹介するメールを送ったりといった具合です。

6.3 コンテンツ制作(セミナー資料、レポート等)

キャンペーンで使用するコンテンツを制作します。士業の場合、セミナー資料や事例レポート、お役立ちガイド等が代表的なコンテンツとなるでしょう。顧客の関心や課題に合わせて、適切なトピックを選定し、読みやすく、わかりやすい内容にまとめることが重要です。また、コンテンツの目的(見込み客の獲得、ナーチャリング、契約締結等)に応じて、適切なCTAを設定します。

6.4 テスト・最適化

作成したシナリオやコンテンツを実際に配信し、効果を測定します。A/Bテストを行って、配信タイミングや表現を変えることで、より高い成果につながるアプローチを見つけましょう。また、配信後の反応を分析し、改善点を洗い出します。PDCAサイクルを回すことで、継続的に運用を最適化していきます。

 

7. データ分析と改善

MAツールを活用することで、マーケティング活動の効果を定量的に測定し、改善につなげることができます。

7.1 KPI設定(受注、顧問継続率等)

MAの運用目標に基づいて、適切なKPI(重要業績評価指標)を設定します。士業の場合、問い合わせ数や資料請求数、面談申込数、成約率、顧問契約継続率等が代表的なKPIとなるでしょう。また、MAツールの主要指標である開封率、クリック率、コンバージョン率等も合わせて管理します。

7.2 レポーティング(顧客動向、生産性等)

MAツールが提供するレポート機能を活用し、定期的にKPIの進捗を確認します。キャンペーンごとの成果や、顧客セグメントごとの反応の違い等を可視化し、分析します。また、営業生産性の向上や、顧問先対応の効率化等、MA導入による業務改善効果も定量的に把握します。

7.3 分析と施策立案

レポートから得られたデータをもとに、マーケティング施策の改善案を立案します。例えば、反応の高い顧客セグメントにはより積極的にアプローチしたり、コンテンツの内容を見直したりといった具合です。また、営業やコンサルティング部門とも連携し、現場の声を反映しながら、施策の方向性を決定していきます。

7.4 継続的改善(PDCA)

立案した施策を実行し、効果を測定します。そこで得られた知見をもとに、さらなる改善案を立案・実行していきます。このPDCAサイクルを継続的に回すことで、マーケティング活動の精度を高めていきます。

 

8. MA活用に向けた組織体制

MAを効果的に活用するには、社内の体制づくりも重要です。

8.1 部門横断プロジェクト(営業、経理、コンサル等連携)

MAは、マーケティング部門だけでなく、営業、経理、コンサルティング等、様々な部門に関連します。各部門のキーパーソンを集めた部門横断プロジェクトを立ち上げ、全社的な取り組みとして推進することが望ましいでしょう。各部門の要望や課題を吸い上げながら、MA活用の方針を決定していきます。

8.2 役割分担(MAリーダー、運用担当等)

MAの運用体制を明確にし、役割分担を行います。具体的には、以下のような役割が必要となるでしょう。

  • MAリーダー:MA活用の方針決定や、各部門との調整を行う
  • 運用担当:キャンペーンの設計や、コンテンツ制作、配信作業等を行う
  • データ分析担当:キャンペーンの効果測定や、レポーティング等を行う

規模に応じて、兼任も可能ですが、できるだけ専任のメンバーを割り当てることが望ましいです。

8.3 スキル育成(研修、認定資格等)

MAを活用するには、一定のスキルが必要です。社内でのMAツールの操作研修や、マーケティング全般に関する勉強会等を定期的に開催し、担当者のスキル向上を図ります。また、MAツールベンダーが提供する認定資格の取得を奨励するのも効果的です。

8.4 ガバナンス(ポリシー、セキュリティ等)

MAの運用にあたっては、ガバナンスの仕組みも整備する必要があります。個人情報の取り扱いや、メール配信のルール等を定めたポリシーを策定し、関係者に周知します。また、MAツールのアクセス権限の管理や、データのバックアップ体制等、セキュリティ面の対策も徹底しましょう。

 

9. 士業のためのMA導入ロードマップ

最後に、士業がMAを導入する際のロードマップを提示します。

9.1 段階的アプローチ(試験運用、部分導入等)

MAの導入は、一度に全社的に展開するのではなく、段階的に進めるのが賢明です。まずは一部の部門や業務で試験的に運用し、効果を検証します。その上で、徐々に適用範囲を拡大していきます。また、機能についても、最初は基本的な機能に絞って使い始め、徐々に高度な機能を活用するようにしましょう。

9.2 スケジューリング(年間計画等)

MAの導入・運用は、年間計画に落とし込んで進めることが重要です。導入前のシステム選定や要件定義、導入後のキャンペーン実施や効果検証等、一連の流れをスケジュール化し、関係者で共有します。また、定期的な進捗確認の場を設け、必要に応じて計画を修正していきます。

9.3 予算化と投資対効果(ROI検討)

MAの導入・運用には、一定のコストがかかります。ツールの利用料金だけでなく、人件費や教育費等も含めて、トータルコストを算出する必要があります。その上で、MAによって期待される売上増加や生産性向上等のメリットを定量的に試算し、投資対効果を検討します。ROIを継続的にモニタリングしながら、MA活用の意思決定を行っていきましょう。

 

まとめ

本記事では、士業がマーケティングオートメーション(MA)を活用して、顧客獲得から育成、リピート促進まで、一貫したマーケティング活動を実現する方法について解説しました。士業は専門性の高いサービスを提供するため、MAを活用して顧客との信頼関係を構築することが特に重要です。自社の課題に合わせて最適なMAツールを選定し、組織体制を整備しながら、段階的に運用を進めていくことが求められるでしょう。事例から学んだノウハウを活かしつつ、PDCAサイクルを回して継続的に改善することで、MAの真価を発揮できるはずです。

イノーバでは、士業向けのコンサルティングサービスを提供しています。MAツールの選定から、運用設計、データ分析まで、経験豊富なコンサルタントがサポートいたします。ご興味がある方は、ぜひお問い合わせください。MAを活用して、新たな顧客開拓と収益向上を実現しましょう。

以上、士業におけるマーケティングオートメーションの活用方法についてお伝えしました。MA導入の検討に際して、本記事が少しでもお役に立てれば幸いです。

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イノーバマーケティングチーム

株式会社イノーバの「イノーバマーケティングチーム」は、多様なバックグラウンドを持つメンバーにより編成されています。マーケティングの最前線で蓄積された知識と経験を生かし、読者に価値ある洞察と具体的な戦略を提供します。