ホームページを作成する際に、他のホームページや書籍の内容を引用したり、参考にしたりすることは少なくないと思います。正確な情報を公開したいとき、あるいはユーザーの興味を引きたいときに、既存の文章やデータを引用することでコンテンツを魅力的に際立たせることができます。
しかしながら、著作権などの権利問題に関するリスクを心配される方も多いのではないでしょうか?事実、ホームページへの引用方法を誤った場合には大きなトラブルになる可能性があります。
この記事では、ホームページに文章やデータを引用する際のルールや注意点について解説します。
ホームページに文章や画像を引用できる5つの条件
ホームページに文章や画像を引用するためには、条件を満たす必要があります。
まずは、ホームページへの引用時に押さえておかなくてはならない5つの条件について解説します。これらの条件を1つでも満たしていない場合には、「引用」と認められず、トラブルになってしまう可能性があります。
公開されている著作物であること
最初の条件は、著作物が公開されていることです。「公開されている」ものとは、例えば出版された書物や誰もが閲覧できるインターネット上のホームページなどが該当します。
一方、公開されていないものとしては、出版されていない著作物の原稿やビジネス上の契約書、個人的な手紙や封書、会員限定向けに公開されたホームページなどがあたります。
自社に寄せられたお客様からのアンケートなどを公開する分には問題ないケースが大半です。ただし、トラブルを未然に防ぐためには、アンケートを集める際に、あらかじめホームページなどに掲載する可能性があることを明示しておきましょう。
引用部分はあくまでも補足であり正当な範囲内であること
ホームページへの引用はあくまで「補足」にとどめる必要があります。ホームページに「主」となるオリジナルのコンテンツがあることが必須条件ですので、引用の分量はあくまで必要最小限にとどめなくてはなりません。明確に法律で分量が規定されているわけではありませんが、引用部分がコンテンツの大半を占めてしまう場合には、問題ありとみなされます。
引用であることを明記すること
忘れてはならないのは、引用であることを明記することです。例えば、引用部分についてはフォントを変えて斜体にするなど、誰が見ても該当部分がオリジナルコンテンツではないことが分かるように分かりやすく設定することが大切です。
出所を明らかにすること
ホームページにコンテンツを引用するときには、どこからの引用であるのかを明示する必要があります。
例えば、ホームページを引用する場合にはタイトルとURL、書籍を引用する場合には書籍のタイトル、著者、出版社名・出版年、引用箇所のページ数などを記載します。
引用部分を改変しないこと
引用箇所については、勝手に改変してはいけません。例え引用元に誤字・脱字があったとしても、一字一句変更せずにそのまま記載しましょう。
引用ルールに違反した際に起こりうるリスク
引用ルールに違反してしまうと、大きなリスクが生じる可能性があります。この章では、引用ルールに違反した際に起こりうる3つのリスクについて解説します。
権利者からの削除依頼や訴訟提起
例え悪意がなかったとしても、権利者から削除依頼されるケースがあります。著作物や画像を引用されることにより、本来売れるはずの書籍が売れなくなってしまったり、権利者に入るはずの収入が入らなくなってしまったりすることがあるためです。
一般的に、権利者との間で権利関係についての食い違いが生じる際には、まず削除依頼の通知が届きます。その通知に対して適切な対応を取れなかった場合には、訴訟提起がなされることもあります。
顧客や取引先からの信用低下
明らかな引用ルールの違反をしていると、顧客や取引先からの信用を失ってしまうことがあります。一般的にコンプライアンスに対して厳しい目が向けられがちな時世であるということもあり、コンテンツの信頼低下がブランドイメージの大幅な低下につながってしまうこともあります。
コピーコンテンツとしてのSEO上の評価の低下
他のホームページの文章をそのまま転載してしまう場合、検索エンジンからも「悪質なホームページ」あるいは「独自性の低い価値の乏しいホームページ」であるとの評価を受け、検索されても上位で表示されにくいホームページになってしまいます。
ホームページへの引用の可否
ホームページへの引用の可否について、コンテンツの種類ごとに解説します。
HP・ブログ記事
ホームページやブログ記事は、公的機関(内閣府、省庁、自治体など)が公に発表しているコンテンツであれば、個別に許可を得なくても引用することができます。
ただし、民間企業や団体、個人が公開しているコンテンツの場合、引用であるか転載であるかが大きな分かれ目になります。
- 引用・・・他のホームページの文章の一部を自社のホームページで公開することです。承諾を得なくても、引用することが可能です。
- 転載・・・他のホームページの文章の大部分をそのまま掲載することです。転載をするには、権利者の承諾が必要です。
著作物
出版された著作物であれば、どこからの引用であるのかを明記すれば、引用が認められます。
また、引用はしなくとも、著作物を参考にしてホームページのコンテンツを記載した際には、「参考文献」として明記する必要があります。
画像
ホームページ上には、写真やイラストなどのコンテンツもあります。
これらの引用方法は、公開のされ方によって3つの種類に分かれます。
- フリー素材の利用は可能
フリー素材は、一般的に他のホームページで公開されることを目的として作成されている写真やイラストです。従って、権利者が設けている規約(クレジット表記の必要性の有無や商用利用の可否など)に従えば、基本的には引用は認められるでしょう。
- 有料の素材集
有料の素材集についても、フリー素材と同様に規約に従えば問題ありません。有料であるため、むしろフリー素材よりも商用利用が認められるなど利用可能範囲が広い、という傾向があります。
- 一般のサイトに掲載されている素材
一般のサイトに掲載されている画像・音声素材は、引用のルールに従えば法律上は問題ない場合もありますが、トラブルが生じやすいため引用は避けた方が無難です。
SNS
SNSからテキスト(文章)や画像を引用する際には、SNSのルールに従う必要があります。SNSは今や口コミとしての効果・影響力が非常に大きいため、引用したくなる場面は多々あると思いますが、トラブルを避けるために必ずチェックしましょう。
ホームページに引用するメリット
最後に、ホームページに引用するメリットについて解説します。
ここまで細かなルールが色々とあることを説明してきたため、逆に引用を全くしない方が良いのでは?と思われた方もいるかもしれません。
しかし、ルールを守って引用をすれば、引用してきたコンテンツの効果でサイトの信ぴょう性が大きく高まります。特に公的機関の情報や著名な専門家のコンテンツは信ぴょう性をかなり担保してくれるので、自社のコンテンツの価値を高めるために非常に効果的です。
まとめ
以上、ホームページに文章やデータを引用する際のルールについて詳しく解説しました。引用は色々な注意点はありますが、信頼できる情報源からの適切な引用は、自社コンテンツの価値や信頼性を大きく高めてくれます。一方で、ルールを無視した不適切な引用は、権利者からの削除要請や訴訟リスク、顧客からの信用低下、SEO評価の低下など、ビジネス上の大きな損失につながりかねません。
そこで、ホームページ制作の際は、この記事で説明した引用の5つの条件を必ず確認し、コンテンツの種類ごとの注意点もしっかり押さえておくことが重要です。もし判断に迷うケースがあれば、権利者に許諾を求めるなどして、トラブルを未然に防ぐ慎重さも必要でしょう。
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FAQ
Q. ブログの画像を引用する場合、出典リンクを貼れば大丈夫ですか?
A. ブログに掲載されている画像をホームページで使う場合は、単に出典リンクを貼るだけでは不十分です。著作権法上の引用の条件を満たす必要があります。引用部分が必要最小限の分量で、引用であることが明示されているかなど、慎重に判断しましょう。また、トラブル防止のためブログ運営者に許諾を取ることをおすすめします。
Q. 企業ホームページからの文章の引用は、転載に該当しますか?
A. 企業ホームページの文章をそのまま丸ごと使うのは、引用ではなく転載に該当する可能性が高いです。転載は原則として権利者の許諾が必要になります。ただし、引用の条件を満たせば、企業サイトからでも引用することは可能です。引用部分を必要最低限に抑え、出所を明記するなどのルールを守りましょう。
Q. 自サイトのコンテンツを第三者に無断転載されました。どう対処すればよいですか?
A. まずは無断転載をしているサイトの管理者に、削除を求める通知を出しましょう。個人情報の掲載があれば、プロバイダに発信者情報の開示請求をする方法もあります。損害賠償請求も視野に入れて、弁護士に相談するのも一つの方法です。転載被害の拡大を防ぐためにも、早期の対応が肝心です。
Q. 引用部分にはどのようにして目立たせればよいですか?
A. 引用部分は、本文と明確に区別できるよう、工夫して目立たせる必要があります。具体的には、引用部分を括弧でくくる、フォントや文字サイズを変える、背景色を変えるなどの方法があります。読者が見てすぐに引用部分とわかるよう、サイトデザインに合わせて適切な方法を選びましょう。
Q. リンクやURLの掲載だけでも、引用のルールは守る必要がありますか?
A. 基本的にリンクの掲載は引用に当たらず、URLを転載しても著作権法上は問題ありません。ただし、リンク先のサイトに著作権侵害のコンテンツがある場合、サイト運営者がそのことを知りながらリンクを貼ると、違法行為の幇助として責任を問われる可能性があります。リンク掲載の際は、掲載先の信頼性をしっかり確認しておくことが重要です。