セグメンテーションとは? その基本と5分で学べるケーススタディ3選

デジタルマーケティング

企業のマーケティング担当者にとって、自社商品の販売戦略を考える上で役立つのが「セグメンテーション」の考え方です。今回はセグメンテーションの基礎と、実際の事例をベースにしたケーススタディを通して、セグメンテーションを実践するコツをつかみましょう。

セグメンテーションとは?

セグメンテーションの定義

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マーケティングにおける「セグメンテーション」とは、「ターゲット顧客層を決定するために、顧客を分類する方法」を指します。

つまり、居住地・年齢・趣向・行動パターンなど特定の属性ごとの固まりに分けて市場を細分化する方法で、マーケティング担当者にとっては必要不可欠な考え方となっています。

では、なぜ昨今の市場においてセグメンテーションが重要になってきたのでしょうか。

従来、主流であったマーケティングの手法として、「マスマーケティング」が存在します。これは、対象を特定せず画一化された方法を用いて行うマーケティング戦略であり、アメリカのヘンリー・フォードによるT型フォードの大量生産などは、この端緒として有名な例といえるでしょう。

しかし、このマスマーケティングは、大量生産と大量販売、マスメディアを用いた広告の大量投入を前提としており、ある市場で最大のシェアを持つ企業が用いる手法としては有効でしたが、消費者の価値観が多様化した市場では特定のニーズに応えきれない場合が出てきたのです。

そこで、居住地・年齢・趣向・行動パターンなど特定の属性ごとの固まりに分けるセグメンテーションを活用し、市場を細分化することで、消費者の価値観や趣向が多様化した現在の市場におけるマーケティング効果の最大化を図るアプローチが有効になりました。

また、セグメンテーションが加速している要因として、ITの発達があげられます。例えば、FacebookやTwitterといったSNSにおける広告出稿では、登録しているプロフィール情報や趣味嗜好、特定のキーワードを活用しているユーザーのみにターゲットを絞るといったことが可能です。つまり、従来活用しづらかった個人情報を用いたセグメンテーションの精度が上がっています。

マーケティングの対象となる顧客をより正確に分析できるため、自社にとって最も魅力的かつ他社に対する優位性を築ける市場セグメントを特定し、限られた広告費を効率的に投下することで、広告効果を最大化することが可能になっているのです。

一般的なセグメンテーションで用いる項目

セグメントごとに分類するための切り口としては、主に以下の4つがあります。

地理的変数(ジオグラフィック変数)

国・地域・都市の規模、経済発展・進展度、人口、気候、文化・生活習慣、宗教、政策などの要素で分類するもの。

例えば空調機器の市場特性は、気温を含む気候と大きな関連があると考えられます。また、海外に目を向けると、イスラム教では飲酒が禁止されていたり飲食物の生産に特定の資格が必要であったりと、宗教が大きく影響する場合も考えられます。

人口動態変数(デモグラフィック変数)

年齢、性別、職業、所得、学歴、家族構成などの要素で分類するもの。

これは、測定が容易なため活用されることが多い変数で、生活に関わる身近な商品と強く連動するのが特徴です。メジャーなところでいえば、テレビの視聴率調査などに用いられる「M1」「F1」といった性別×年代の分け方は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

しかし、昨今のニーズの多様化・個別化によって、商品やサービスにおけるマーケティングにおいてはより細かなセグメンテーションが求められています。

例えば、先ほどの性別×年代において、「M1」は男性(Male)20~34歳を指しますが、FacebookなどのWebメディアで広告を出稿をする際にはより細かくセグメンテーションを行い、男性×20代前半×未婚などをターゲットとするといったケースも多くなっています。

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心理的変数(サイコグラフィック変数)

価値観、趣向、ライフスタイル、心理的特徴といった、“感性”の分野に強く結びつく要素で分類するもの。

ニーズの多様化によって、最近ではこの変数が重視される傾向にあります。例えば、アパレル市場であれば、海外発のブランドを好む人と、気軽でベーシックなユニクロなどの服を好む人でも区別する必要があるでしょうし、最新の流行に対する関心の強弱でも分類することは有効でしょう。

定性的な領域になるため、従来はセグメンテーションをすることが難しかったのですが、媒体側もより細かなターゲット設定をするようになっているため、精度が上がってきています。

行動変数

曜日・時間、購買の状況・経路・頻度などの消費者が実際に購入した要素で分類するもの。

ウェブの普及やインターネット販売の増加などによって測定が容易になったこともあり、ニーズの多様化に呼応する形でこの行動変数もより重視されるようになりました。

例えば、雑誌を例に考えると、定期購読している消費者から、月に数回購入する消費者、あるいは記事の内容に応じて購入する消費者まで、購入に対する態度がさまざまである上に、書店・コンビニ・売店のどこで購入しているかという購入経路の分析による分類も考えられます。

正しいセグメンテーションの判断基準は?

では、セグメンテーションが正しくなされているかを検証するには、どうすれば良いのでしょうか。セグメンテーションの有効性を検討するには、「4R」と呼ばれる4つの項目で判断する必要があります。

 1. Rank(優先順位):各顧客層を重要度でランク付けできているか。

 2. Realistic(有効規模):そのセグメントは売上や利益が確保できる規模か。

 3. Response(測定可能性):そのセグメントの顧客の反応を測定・分析できるか。

 4. Reach(到達可能性):そのセグメントの顧客に効果的に到達できるか。

    例えば、「血液型がAB型の日本人」というターゲットを仮定します。血液型がAB型である人は、日本の人口の約10%といわれており、上述の2. Realistic(有効規模)については、ターゲットの規模として十分だといえるでしょう。

    4. Reach(到達可能性)については、血液型という観点からアプローチする手段として、献血やFacebookという機会や空間を利用する手段が考えられます。

    しかし、3. Response(測定可能性)を踏まえると、どうなるでしょうか。実際に献血に来る人やFacebookで血液型情報を登録している人といった、「反応や測定を分析できる」という条件を加味すると、AB型の日本人全体のうち、対象は限りなく少なくなってしまうでしょう。

    したがって実際には、Response(測定可能性)とReach(到達可能性)の観点から不適当なセグメンテーションであると結論付けられます。

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    それでは、実際に行われたセグメンテーションの事例を検討してみましょう。

    5分で学べるケーススタディ3選

    ケーススタディ(1)

    活用事例:日本におけるIQOS(アイコス)拡販事例
    活用手法:地理的変数×心理的変数を用いた販売地域戦略の策定
    <概要>
    2015年の発売開始から1年間で200万台を売り上げる大ヒットを記録し、2016年のヒット商品第3位に選ばれた商品に、フィリップ モリス社の喫煙具「IQOS(アイコス)」があります。

    この商品は、従来の紙巻きたばことは異なり火を使わないため、煙や強い匂いが出ない点や、有害物質を従来の10%まで削減できる点をウリとしています。IQOSの販売元であるフィリップ モリス社は、180カ国以上で事業展開する中で最も早く日本でこの商品を発表しました。その背景にも、セグメンテーションを用いた分析がありました。

    世界的に禁煙の促進に向けた動きが強まる中で、日本においては実際の禁煙対策の法整備は遅れており、世界各国からの批判も受けているという状況でした。この状況から、日本政府は受動喫煙対策を重要視しています。

    フィリップ モリスは、IQOSは従来品よりも圧倒的に健康被害が少ないと訴えており、それゆえに日本政府が税率低減など優遇策をとる可能性が高く、市場として拡大し得るのではないかと考えました。加えて、日本人の性格上「周囲に配慮する気持ちが強い」という心理的な特性も考慮し、日本を有効な市場として判断したのです。

    つまり、政策などの地理的変数に加えて、相手に対する配慮などの心理的変数を分析するセグメンテーションによって、日本の愛煙家をターゲットに置いたことが伺えます。

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    ケーススタディ(2)

    活用事例:アラフォー未婚女性市場の創出
    活用手法:人口動態変数×心理的変数を用いたセグメント化
    <概要>
    2000年代の終わりころに流行した言葉の1つに「アラフォー」というものがありました。これは、40歳前後の女性を指し示す言葉として使われ、社会現象ともいえる拡がりを見せました。実際、2008年には流行語大賞にも選ばれています。

    当時のアラフォーは、男女雇用機会均等法(1986年施行)の下で就職し、仕事と結婚を従来よりも自由に選択する条件が整備され始めた世代でした。それに伴って、産休制度や育児休暇制度の恩恵もあり、結婚・出産後でも仕事との両立が比較的容易になっていました。また、自立心が強く、バブル絶頂期に青春を満喫したこともあり、購買欲・消費欲が強いのもこの世代の特徴といわれています。

    こうした背景から、当時のアラフォー世代は比較的金銭的ゆとりを持った未婚のキャリア女性が多く、従来の女性像に縛られない新たな生き方を模索する人が多いことが特徴でした。

    そのことに注目した企業は、40歳前後の金銭的に余裕のある未婚女性をターゲットとした化粧品やスパ、単身者向けマンションなどの高額商品を活発に展開し、“アラフォー市場”が大きなマーケットとして確立されました。

    例えば、化粧品メーカーのコーセー(KOSE)は、1万5000円で販売する40ml入り化粧品の売上を前年同時期比50%増加と伸ばしたり、「化粧品に1カ月で1万円以上使う」と答えた30代後半女性の割合を2003年の21%から2008年までに29%へ高めたりと、ターゲット層を絞って効果的に宣伝活動を行うことで、顕著な成長を実現できたのです。

    このように、年代に加えて既婚/未婚の分類を考えるセグメンテーションのおかげで、より具体的な消費者層を想定でき、それが所得や価値観、購買傾向など想定される消費者の詳細なイメージを描くことを可能にするのです。

    ケーススタディ(3)

    活用事例:Appleによるライトユーザー取り込み
    活用手法:市場競争状況と消費者ニーズの分析から新たなセグメントの創出
    <概要>
    現在、「MacBook」や「iPhone」でパソコン/スマートフォン市場において大きなシェアを誇り、世界的にも有数の大企業となったAppleですが、その成長にもセグメンテーションに則ったマーケティングの効果が大きく寄与しています。

    パソコンが一般的にも広く普及し市場として成熟期に入っていたころ、各メーカーが売りとしていたことの多くが“多機能”・“高性能”をうたったものでした。しかし、当然ながらパソコンを使う人がみな高性能を求めていたわけではなく、性能に関しては一定以上を備えていることが前提で、それ以上はこだわらないという消費者も存在しました。

    そのような状況に対してAppleがとった戦略は、ある一定の性能を備えていることに加え、それまで軽視されてきたデザイン性を追求した製品を展開することでした。

    これによって、Appleは当時のパソコンの選択に“デザイン”という新たな基準を提案することに成功し、他製品と決定的に異なるデザインの製品を展開することで、“デザインも重視するライトユーザー層”を自社のファンにすることに成功します。

    「パソコンといえば“性能”」という認識が一般的であった時代に、デザインという新たな基準の可能性を見抜き、 “デザイン性を重視するライトユーザー”という新たなセグメントを作り出し、その層を確実に取り込むことが、Appleを成功に導いたのです。

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    Appleの事例は、新しい価値基準を導入することで、これまで満たされていなかった消費者の需要に応え、新たなセグメントを作り出すことに成功した典型的な例といえるでしょう。

    まとめ

    縮小傾向にあるといわれる日本の市場ですが、消費者のニーズが多様化しているため、そのニーズを拾い上げて細かく分析することができれば、他の製品や企業が満たすことができていない消費者のニーズを探し出すことも可能なのではないでしょうか。

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