トラッキングとは?マーケティングにおけるメリットと課題について

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目次
トラッキングとは?
トラッキングとは、インターネットにおけるユーザーの行動を追跡して分析することを意味します。
マーケティングにおいては主に自社サイトを訪れたユーザーを対象にトラッキングを行い、サイト内でどのような行動を取ったのかをデータ化できます。
取得したデータを参考にサイトの改善を行ったり、具体的なマーケティング施策を打ち立てたりといったことが可能です。
マーケティングに活用できる貴重なユーザー情報の取得方法として、トラッキングは一般的なものとなっています。
トラッキングの仕組みとは
トラッキングは、Cookie、ブラウザーフィンガープリント、広告識別子、スマホアプリなどのあらゆる技術を用いて、ユーザーの追跡と分析を行なっています。
各技術が単体で使用されることもあれば、組み合わせてより詳細なトラッキングを行うこともあるため、それぞれの仕組みや特徴を把握しておくことが重要です。
以下からは、トラッキングで使用されている技術を紹介します。
Cookie
Cookieとは、ユーザーのサイト訪問履歴やサイト内の入力情報などを記録しておくファイルのことです。ユーザーがサイトに訪れた際に専用のIDを発行して個々のブラウザに保存し、それぞれのユーザーを識別できるようにしています。
Cookieは企業にサイト内の追跡データを提供するだけでなく、前回の訪問履歴を流用してログイン時の入力を省略したり、ECサイトのカート内情報を再表示できたりといった形で、ユーザーにメリット与えています。Cookie=トラッキングのための仕組みというわけではなく、普段からユーザーも多くの恩恵を受けているのが特徴です。
トラッキングに使用されるCookieには、「ファーストパーティ」と「サードパーティ」の2種類があります。
ファーストパーティは実際に閲覧しているサイトが発行するCookieで、そのサイト内のユーザー行動を保存するのが特徴です。
一方で、サードパーティは閲覧しているサイト以外から発行されたCookieとなり、バナー広告の表示などに使われます。
ユーザーのサイト間の移動も追跡でき、リターゲティング広告の配信などにも利用されています。
ブラウザーフィンガープリント
ブラウザーフィンガープリントは、ブラウザ自体が持つ情報を組み合わせてユーザーを認識するのが技術です。
例えばOS、CPU、IPアドレスなどを参考にして、ユーザーの推定が行われます。
導入がしやすい一方で、Cookieよりも情報の精度が落ちることがあります。
広告識別子
広告識別子とは、モバイルアプリの広告に用いられる技術で、スマホ端末を判別してデータの収集を行います。
広告IDとも呼ばれ、AppleやGoogleといったプラットフォームが発行したIDが使われています。
Cookieと違ってブラウザ単位ではなく、端末単位で管理されるのが特徴です。
スマホアプリ
スマホにインストールされるアプリでも、端末内の情報にアクセスしてユーザーのトラッキングを行なうことができます。
アプリごとにトラッキングする内容は異なり、例えば位置情報、連絡先、カメラなどの情報からユーザーの追跡と分析を行うことが可能です。
トラッキングのメリットとは
トラッキングとは、企業のマーケティングにおいてさまざまなメリットを与えるシステムです。
具体的にどのようなメリットがあるのかを、以下を参考に確認してみましょう。
自社サイトのアクセス解析から改善が行える
トラッキングには自社サイトのアクセス解析をサポートし、その後の改善につながるヒントを得られるというメリットがあります。
トラッキングによってデータ化されたユーザーの行動を分析することで、企業は以下のような情報を取得することが可能です。
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コンバージョンするまでにユーザーはどのような行動を取っているのか
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自社サイトにどうやってたどり着いたのか
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ユーザーにとって自社サイトのどのページが有益なのか(長時間閲覧することになるか)
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どのページがユーザーを離脱させているのか
上記のような情報を参考にすることで、自社サイトの現状を客観的に把握し、具体的な改善策を考案することができます。
例えばサイトへの流入ルートを分析し、もっとも成果の出ていない部分(SNS、検索エンジン、各種広告など)の広告に力を入れるなどの施策が考えられます。
ユーザーの閲覧数は多いのに、コンバージョンにつながっていない場合には、離脱の原因となっているページを特定して改善を行うことが検討されるでしょう。
今後の目標設定を行える点が、トラッキングの持つメリットのひとつです。
広告効果の測定ができる
トラッキングは、Webの広告効果を測定するためにも利用できます。
広告のクリック数やコンバージョン率を正確に把握できるので、求める広告効果が現状のマーケティングで実現できているのかが確認可能です。
広告効果が不十分であるのなら改善を進めることができ、逆に求める水準以上になっているのなら、新しい施策に着手することを考えられます。
費用対効果を考慮して、コストを抑えるなどの調整を行えることもトラッキングのメリットです。
トラッキングの課題
トラッキングは企業のWebマーケティングを支えるシステムとして広く使用されていますが、近年はその仕組みが持つ課題にも注目が集まっています。今後の状況によっては、トラッキングからこれまで通りのメリットを引き出すことが難しくなるかもしれません。
以下からは、トラッキングが抱えている課題について解説します。
ユーザーへの過度な追跡が嫌悪感につながる
トラッキングはユーザーの行動を追跡して情報を得る仕組みになっていますが、その「追跡」という手法に対して嫌悪感を覚える人も増えてきています。
特にトラッキングを活用した広告配信を不快に感じるユーザーは多く、過度な追跡が逆効果になっている可能性も考えられるのです。
2018年に実施された株式会社ジャストシステムの調査によると、回答者の約8割が「Web閲覧履歴をもとにした広告配信」の存在を認識しています。
そのうち「便利と感じないし、不快に感じることが多い」と答えた人が25.9%、「不快なのでやめてほしい」と答えた人が25.6%となっていて、半数を超える人が利便性よりも不快感を感じていることがわかります。
ユーザーにとってトラッキングによる追跡が心理的な負担となっていることも、企業側は理解しなければならないでしょう。
アンチトラッキングと規制強化が進む可能性
近年はトラッキングをブロックする「アンチトラッキング」機能の搭載など、業界全体でトラッキングの規制強化が進みつつある点も課題です。
GoogleやAppleなどの大手企業が規制強化を進めているため、将来的にはトラッキングによるユーザーの追跡が困難となることも考えられます。
例えば2020年1月には、Googleが自社ブラウザのChromeでサードパーティCookieを段階的に廃止することを発表しました。
また、2021年4月にもAppleがアプリのトラッキング規制を進め、Cookieが追跡する許可をユーザー自らが設定できるポップアップを表示するようになりました。
これによってiPhoneやiPadの利用者は、簡単にトラッキングによる追跡を拒否できるようになっています。
そのほか、各国でもプライバシーに関する新たな保護法案が制定されはじめ、トラッキングの動きが制限される流れができあがっています。
日本でも2020年3月に個人情報保護法の改正案が閣議決定されたことから、業界全体にアンチトラッキングの流れが活性化していくことが見込まれるでしょう。
トラッキングの今後について
上記のような課題を踏まえると、今後のトラッキングはいくつかの点で変化が促される可能性があります。
例えば規制によるデータの価値変化を考慮して、広告施策だけにこだわらないマーケティングの導入が検討されます。
アンチトラッキングによってデータの精度が低下することを見越して、それ自体にファンがいるインフルエンサーの活用や、自社ブランドを構築してユーザーと直接的にコミュニケーションを取ることが考えられるでしょう。
そのほか、DMPやCDPといったデータ蓄積のためのプラットフォームを活用し、自社で必要な情報を管理・分析していくことが優先されるようになるかもしれません。
専用のプラットフォームを使うことで、ユーザーのプライバシーに配慮しつつ、明確な目的を持って広告施策を進めることができます。
トラッキングに頼らない手法でデータを集めていくことも、ひとつの手法として考案されるでしょう。
一方で、今後はサードパーティCookieに代わる技術である「Federated Learning of Cohorts」の発展も注目となっています。
Federated Learning of Cohorts(FLoC)とは、Googleが新たに提供する連合学習システムで、ユーザーをコホート(集団)に分類してターゲティングを行うのが特徴の技術です。
個人ではなくコホートを主軸にしたマーケティングが可能となることから、トラッキングの問題を解決した上で広告展開が行えるようになると期待されています。
今後のWebマーケティングは、トラッキングではなくFLoCを使った形が主流になるかもしれません。
トラッキングを理解してマーケティングに活かすことが重要
トラッキングとは、現代のマーケティングを支える重要な仕組みのひとつです。
マーケティング担当者はトラッキングの価値を正しく把握し、そのメリットを最大限に活かすための取り組みを意識する必要があるでしょう。
一方で、トラッキングをめぐる環境は大きく変わりつつあり、従来の常識が通用しなくなる日が近いかもしれません。
今後のトラッキングがどのように変化していくのかを、しっかりと確認していく意識を持つことがおすすめです。
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