海外BtoB不動産企業の「攻め」のWeb活用事例4つ―選ばれる企業は何をやっている?

デジタルマーケティング

囲い込み問題や偽装問題、新興事業者の参入など、不動産業界の大きなニュースが続いています。そんななか、売主・貸主は安心して取引ができる企業の選定に対して、より慎重な姿勢をとると予想されます。顧客からの目が厳しくなるなか、選ばれ続ける企業になるためにはどのようなことができるでしょうか? 今回は、Webを活用し、顧客からの信頼を獲得している海外のBtoB不動産企業の取り組み事例をご紹介します。

海外不動産企業のデジタル活用事例

情報収集の主たる媒体がオフラインからネット上に移行しているなか、企業サイトをはじめとするWebでの情報発信の重要性が増しています。この流れのなかで米国の不動産企業も、積極的にブログやソーシャルメディア、外部メディアを活用し、新規顧客の獲得や顧客との関係性の構築に役立てています。

1. Cushman & Wakefield | PICOR(キャッシュマン&ウェイクフィールド|ピカー社)

ブログで顧客とのタッチポイントを創出。サイト自然流入67%

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PICOR Connect

米アリゾナ州に拠点を置く法人向け土地建物仲介業のCushman & Wakefield | PICOR社では、2年半前より「PICOR Connect」というブログを開始しました。不動産BtoB業界のトレンドから法人向けファイナンス、経済動向、税制やハウジング市場などの関連情報を発信し、オーガニックサーチ数は67%上昇。課題を持った潜在顧客とのイニシャルコンタクトのポイントとともに、企業が持っているノウハウをアピールする場を作りました。また、Twitterの取り組みも盛んに行っており、Twitterユーザーと実際に不動産の賃貸契約を結んだケースもあるそうです。

2. Ware Malcomb(ウェア・マルコム社)

Facebookページいいね!数17,000超。顧客とのコミュニケーションの場として活用

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Ware Malcomb社のFacebookページ

米国の法人向け不動産のプランニング・建築・デザイン会社であるWare Malcomb社では、ブログやTwitter、Facebook、YouTube、Linkidinなどのソーシャルメディアを通し、最新のオフィス建築・デザイントレンドや社内イベントやプロジェクトに関する発信を行っています。

Facebookでは、「デザイン・インスピレーション」をテーマとした企業イベントやプロジェクトの写真を毎週配信し、すでにFacebookページへの「いいね!」を17000以上獲得しています。BtoB企業のFacebookページとしてはかなりの成功をおさめているといえるでしょう。さらに、リンクからサイトへ誘導して、多くのコンテンツに触れてもらうことで、顧客、ブローカー、主要パートナーに、Ware Malcom社の価値を伝えています。

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Ware Malcom社が運営するオウンドメディア「WM CANVAS

3. Prologis(プロロジス社)

1年でTwitterフォロワー48%増。日々の交流で企業への愛着心を育てる

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Prologis社のTwitter

物流施設を専門に開発、所有、管理、運営をしている米国の不動産会社Prologis社は、Twitter上での顧客とのコミュニケーションで企業へのエンゲージメント(愛着心)を高めることに成功しました。1年の間にフォロワー数を48%やしましたが、そのために、同社は高頻繁で、一貫性のあるメッセージを投稿し続けました。さらに、フォロワーとTwitter上で日々交流を絶やさないことも重要だと言います。

4. CBRE(シービーアールイー社)

収益ではなく「ブランド・エクイティ(資産価値)の向上」を目指す

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CBREのオウンドメディア「Blueprint 

米最大手のBtoB不動産企業 であるCBREグループでは、2015年の6月よりBlurprintと呼ばれるオンラインマガジンの発行を開始しました。ライフスタイルマガジンのようなビジュアルで、世界から集めた建築やライフスタイル情報、業界トップからの寄稿、世界の都市ガイド、オフィス環境やワークライフ情報、CBREの独自調査結果など、気合いの入ったコンテンツを展開しています。

チーフ・マーケティング・オフィサーのポール・シューマン氏は、今回のオンラインマガジンを立ち上げた理由について「ワールドクラスのブランドとなるためには、知的な資本価値をお客さまに継続的に届けなければならない」と語っています。そのため、Blurprintは、収益目的ではなく「ブランド・エクイティ(資産価値)の向上」と「顧客との関係強化」に的を絞ったデザインとなっています。

なぜ米国の不動産企業がWebコンテンツに投資するのか

なぜ米国の不動産企業がWebでのコンテンツ配信に投資しているのでしょうか? その背景には、マーケティング・セールスにおけるトレンドの大きな変化があります。

情報収集の手段がオフラインからWebへ大幅に移行

2015年の株式会社トライベックの調査によると、BtoB顧客の仕事上の製品・サービスの情報源の1位は企業のWebサイト(PC)で、50%を超えています。

近年のBtoBビジネスにおける取引では、顧客はWeb上で情報収集をしてあらかじめ候補を絞り、社内で比較検討をある程度進めてから実際に問い合わせをします。そんななか、Web上での情報提供の機会を十分にいかしきれていなければ、取引先の候補に入るためのチャンスを逃すことになります。Web上でのコンテンツ発信は必須の課題なのです。

同じ背景から、営業訪問が敬遠されるようになりました。『ハーバードビジネスレビュー』の 2012年の報告によると、BtoBビジネスにおいては購入の意思決定プロセスの50%以上は、営業担当との接触前に済んでいると報告されています。

ネットに情報が落ちていない時代は、営業マンからの情報提供は貴重なものでした。しかし、顧客の情報収集力が格段に高まった今、単にサービスを紹介するだけの営業訪問の需要は低下しています。営業・マーケティングのトレンドは、従来の売り込み型(プッシュ型)から、継続発信していくことで顧客に見つけてもらい、選んでもらう引き込み型(プル型)へと大きく変わっています。

BtoB商材の販売フローとWebの特性は相性がいい

さらに、Web上での定期的なコンテンツ発信は、BtoB商材の販売フローととても相性がいいと言えます。

BtoB商材の販売で売上を作るために必要なことの1つは、取引の機会が訪れたときに真っ先に自分の企業を思いだしてもらい、取引先の候補に入ることです。高額な商材は購入のタイミングは限られています。その機会を逃さないために、企業は見込み顧客との接触回数を増やし、継続的に存在をアピールする必要があります。

もう1つ、営業利益を上げるために重要な課題は、問い合わせ発生からクロージングまでのセールスタイムの短縮化です。クロージングまでの時間を短縮することは、営業効率を高めるうえで欠かせません。一般的にBtoBの購買サイクルは、BtoCと比較すると時間が長くかかります。特に、土地・物件、それらにまつわるサービスの購入は、中長期的な経営視野を踏まえた多くの判断基準をクリアした上での決断のため、購買プロセスも長くなります。見込み顧客にあらかじめ十分な情報を提供して、企業やサービスへの理解と信頼を高め、セールスタイムを短縮することが必要です。

接触回数を増やしたり情報提供したりすることは、営業訪問で行うことが可能ですが、営業マンの数は限られています。そこで、1対多数で見込み顧客に接触できるWebの特性が利点となって働きます。ブログやSNSなどWebの媒体を活用することで、接触回数を高めることと、事前の情報提供を、大勢の顧客に対して行うことが可能となるのです。

企業のWebサイトはコミュニケーションツールへ

以上で紹介したように、米国の不動産企業は現代の顧客の情報収集行動やBtoB企業の販売フローに適応させながら、Webサイトを定期的にコンテンツ発信するコミュニケーションツールへと進化させています。

Webサイトには企業情報やサービス情報などの定常コンテンツを載せてあれば十分、という認識が一般的だったのは10年前までです。Webサイトに求められる役割は今、確実に変化しています。

これまで引き合いを主な販売経路としてきた不動産業界では、デジタルマーケティングの取り組みが比較的遅れている傾向があります。しかし、インターネット上の情報の増えるとともに顧客の情報収集力が高まった今、取引先の比較も簡単になっています。業界のさまざまなニュースが取りざたされるなか、企業としての信頼性をWebでのタッチポイントの時点で証明できなければ、取引先の候補に入ることは難しくなっていくでしょう。

選ばれ続ける企業であるためには、今の顧客、さらに未来の顧客との関係性に意識を向け、積極的なコミュニケーションを行う「攻め」のWeb活用が求められていくのではないでしょうか。