近年、企業のマーケティング戦略において、オウンドメディアの重要性が高まっています。オウンドメディアを効果的に運営するためには、カスタマージャーニーを理解し、活用することが不可欠です。本記事では、オウンドメディアとカスタマージャーニーの関係性について詳しく解説し、なぜ今カスタマージャーニーが重要なのかを明らかにします。
オウンドメディアとカスタマージャーニーは、密接に関連しています。まずは、これらの基本的な概念を押さえておきましょう。
オウンドメディアとは、企業が自社で所有・運営するメディアのことを指します。企業のWebサイトやブログ、SNSアカウントなどが代表的な例です。オウンドメディアの目的は、ブランディングや顧客との関係構築、見込み客の獲得などです。自社の強みや独自の価値を伝えることができるため、効果的なマーケティングツールとして注目されています。
カスタマージャーニーは、顧客が商品やサービスを認知してから購入に至るまでの一連のプロセスを指します。顧客が辿る様々な接点やチャネルを可視化し、それぞれのフェーズでの心理状態や行動を分析することで、最適な顧客体験を設計することができます。
BtoCとBtoBでは、カスタマージャーニーの様相が異なります。BtoCでは、比較的短期間で購入に至るケースが多いのに対し、BtoBでは複数の意思決定者が関わり、長期的な関係構築が重要になります。それぞれの特性を踏まえてカスタマージャーニーを設計する必要があります。
カスタマージャーニーを可視化し、オウンドメディア運営に活かすためには、カスタマージャーニーマップを作成することが有効です。ここでは、カスタマージャーニーマップの作成手順を段階的に解説します。
まず始めに、ターゲットとなる顧客像(ペルソナ)を明確にします。ペルソナ設定は、カスタマージャーニーマップ作成の基礎となる重要なプロセスです。適切なペルソナを設定するためには、自社製品・サービスの利用者や購入者のデータを分析し、共通する属性や行動パターンを抽出します。年齢や性別、職業、趣味嗜好、課題や悩みなどを詳細に定義しましょう。
次に、ペルソナがたどる行動フェーズを整理します。一般的には、「認知」「興味・関心」「検討」「購入」「リピート・アドボカシー」といったフェーズが設定されます。それぞれのフェーズで、ペルソナがどのような心理状態にあるのかを推察することが重要です。課題を抱えていたり、不安を感じていたり、期待に胸を膨らませていたり、ペルソナの心理は刻一刻と変化します。その変化を的確に捉えることが、最適なアプローチににつながります。
カスタマージャーニーの各フェーズで、ペルソナがどのようなチャネルやタッチポイントと接触するのかを明らかにします。Webサイトやブログ、SNS、メルマガ、広告など、様々な接点が考えられます。それぞれの接点で、ペルソナにどのような情報を届け、どのようなアクションを促すのかを整理しましょう。
カスタマージャーニーの各フェーズで、達成すべき目標を設定します。目標は、KPI(重要業績評価指標)として数値化することが望ましいでしょう。以下は、各フェーズの代表的なKPI例です。
フェーズ | 代表的なKPI |
---|---|
認知 | インプレッション数、リーチ数、PV数 |
興味・関心 | 滞在時間、閲覧ページ数、CTR |
検討 | 資料請求数、お問い合わせ数、カート開始数 |
購入 | 売上件数、売上高、コンバージョン率 |
リピート・アドボカシー | リピート率、LTV、推奨度 |
KPIを設定することで、施策の効果を定量的に測定し、改善につなげることができます。
以上が、カスタマージャーニーマップの作成手順です。ペルソナ設定から、行動フェーズ、接点、KPIまでを一連の流れで整理することで、オウンドメディア運営に活かせる実践的なマップが完成します。
カスタマージャーニーマップができたら、いよいよコンテンツ設計に取り組みましょう。オウンドメディアで提供するコンテンツは、カスタマージャーニーと密接に関連付けることが重要です。ここでは、カスタマージャーニーに基づいたコンテンツ設計の手順を解説します。
まず、カスタマージャーニーの各フェーズで、ペルソナがどのような情報を求めているのかを把握します。認知・興味関心段階では、課題の発見や理解に役立つ情報が求められます。検討段階では、具体的な解決策や製品・サービスの詳細情報が必要とされます。購入段階では、利用方法や活用事例、サポート情報などが求められるでしょう。それぞれのフェーズで、ペルソナの情報ニーズを的確に捉えることが大切です。
オウンドメディアで取り上げるネタ(コンテンツテーマ)は、ペルソナの悩みや課題に寄り添ったものであることが理想的です。ペルソナが抱える悩みや課題を深掘りし、その解決に役立つ情報を提供することで、オウンドメディアの価値を高めることができます。
ネタを発想する際は、以下のようなアプローチが有効です。
ペルソナの立場に立って考えることが、共感を呼ぶコンテンツづくりにつながります。
ネタが決まったら、最適な記事タイプを選定します。オウンドメディアでは、様々な記事タイプが活用されています。代表的なものを以下に挙げます。
記事タイプ | 目的 | 特徴 |
---|---|---|
How to記事 | 課題解決 | 具体的な手順やティップスを解説 |
人物インタビュー記事 | 信頼構築 | 製品・サービスのユーザーの声を伝える |
事例紹介記事 | イメージ喚起 | 実際の活用シーンを具体的にイメージさせる |
比較記事 | 意思決定支援 | 自社製品と競合製品を客観的に比較 |
コラム記事 | ブランディング | 自社の考え方や価値観を伝える |
カスタマージャーニーのフェーズと、コンテンツの目的に合わせて記事タイプを使い分けることが重要です。認知・興味関心段階ではHow to記事やコラム記事が、検討段階では比較記事や事例紹介記事が、購入段階では人物インタビュー記事などが効果的でしょう。
最後に、ユーザー視点に立った情報設計のコツを紹介します。せっかく良質なコンテンツを作っても、情報が整理されていないと、読者に伝わりません。以下の点に留意して、情報設計を行いましょう。
ユーザーにとって読みやすく、分かりやすいコンテンツを目指すことが大切です。
オウンドメディアを軸としたカスタマージャーニーは、他のマーケティング施策と連携させることでさらに深化します。ここでは、カスタマージャーニーを深化させる代表的な施策を2つ紹介します。
マーケティングオートメーション(MA)ツールは、カスタマージャーニーを自動化・最適化するために欠かせない存在です。MAツールを活用することで、オウンドメディアで獲得したリードを効果的にナーチャリングし、育成することができます。
カスタマージャーニーの各フェーズに合わせて、最適なコンテンツを自動的に配信する仕組みを構築しましょう。例えば、早期段階のリードには、課題解決に役立つ情報を提供し、中期段階のリードには、自社製品・サービスの特徴や利点を訴求するコンテンツを配信します。後期段階のリードには、お客様の声や導入事例を紹介し、購買意欲を高めていきます。
MAツールとオウンドメディアを連携させることで、一貫性のあるコミュニケーションが可能になり、リードの育成効率を高めることができるでしょう。
カスタマージャーニーを最適化するためには、コンテンツ以外の要素にも目を向ける必要があります。特に、コンテンツから次のアクションにつなげる導線の最適化が重要です。
例えば、オウンドメディアの記事からホワイトペーパーのダウンロードを促す場合、ランディングページのデザインや見出しのコピー、入力フォームの項目数など、細部までこだわることが求められます。また、問い合わせフォームについても、必要以上に入力項目を設けず、ユーザーの心理的ハードルを下げることが大切です。
コンテンツ以外の要素を最適化することで、カスタマージャーニーをスムーズに進めることができます。デザインや導線の最適化は、継続的なテストと改善が必要ですが、大きな効果を生み出すことができるでしょう。
カスタマージャーニーを設計し、コンテンツを制作・配信したら、次は効果検証と改善に取り組みましょう。PDCAサイクルを回すことが、カスタマージャーニーの最適化には欠かせません。ここでは、効果検証の方法と、改善のポイントについて解説します。
カスタマージャーニーの効果を測定するためには、Google Analyticsなどのアクセス解析ツールを活用することが有効です。オウンドメディアにおけるユーザーの行動を詳細に分析することで、改善のヒントが得られます。
例えば、以下のような指標を確認することが重要です。
これらの指標を分析することで、オウンドメディアの改善点が見えてきます。
アクセス解析の結果を踏まえて、カスタマージャーニーの効果検証と改善を行います。以下のようなポイントに注目しましょう。
効果検証の結果を基に、コンテンツの改善や導線の最適化、ペルソナ設定の見直しなどを行います。改善施策の効果は、継続的にモニタリングすることが大切です。
カスタマージャーニーの最適化には、PDCAサイクルを回すことが重要です。Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Act(改善)の4つのステップを繰り返し、継続的に改善を積み重ねていきます。
PDCAサイクルを回すためには、以下のようなことが求められます。
PDCAサイクルを回すことで、カスタマージャーニーは進化し続けます。オウンドメディア運営者には、データに基づく仮説検証と、スピーディーな改善が求められると言えるでしょう。
本記事では、オウンドメディア運営に欠かせないカスタマージャーニーの設計方法と、実践的な活用テクニックについて解説しました。
オウンドメディア運営者には、「ユーザー視点」と「データドリブン」の姿勢が求められます。ユーザーの行動や心理を深く理解し、仮説と検証を繰り返しながら、カスタマージャーニーを進化させていくことが重要です。
本記事を参考に、自社のオウンドメディア運営にカスタマージャーニーの考え方を取り入れてみてはいかがでしょうか。読者の皆さまのオウンドメディアが、マーケティング成果の向上につながることを願っています。
オウンドメディアの全体像を知りたい方は、こちらをお読みください。
オウンドメディアの戦略を理解したい方は、こちらをお読みください。
カスタマージャーニーを設計する上で、ペルソナ設定は欠かせないプロセスです。ペルソナとは、ターゲットとなる顧客像を具体的に描写したものであり、マーケティング施策を考える上での羅針盤となります。ここでは、ペルソナ設定の基本的な考え方と手順、ペルソナ像を深掘りするためのヒアリング手法、そしてペルソナ設定の失敗事例と教訓について解説します。
ペルソナ設定の目的は、ターゲット顧客の属性や行動、心理を深く理解することにあります。ペルソナを設定することで、顧客の立場に立ったマーケティング施策を立案できるようになります。
ペルソナ設定の基本的な手順は以下の通りです。
顧客データの収集・分析
ペルソナの仮説設定
ペルソナ像の具体化
ペルソナ像の検証・修正
ペルソナ設定は一度で完成するものではありません。継続的にデータを収集・分析し、ペルソナ像を磨き上げていくことが重要です。
ペルソナ像をより深く理解するためには、顧客への直接的なヒアリングが有効です。ヒアリングを行う際は、以下のようなポイントに留意しましょう。
オープンエンドの質問を心がける
具体的なエピソードを聞き出す
傾聴とフィードバックを大切にする
ヒアリングで得られた情報は、ペルソナ像の具体化に活かしていきます。生の声に触れることで、より リアリティのあるペルソナ像を描くことができるでしょう。
ペルソナ設定は、適切に行わないと逆効果になることもあります。以下のような失敗事例とその教訓を紹介します。
ステレオタイプに基づいたペルソナ設定
ペルソナ設定で満足してしまう
ペルソナを活用しきれていない
ペルソナ設定は、カスタマージャーニー設計の出発点です。適切なペルソナ像を描くことで、その後のマーケティング活動が大きく変わってきます。ペルソナ設定に十分な時間と労力を投じ、仮説検証を繰り返しながら、精度の高いペルソナ像を追求していきましょう。