コンテンツマーケティングとは、顧客にとって価値のあるコンテンツを作成・配信し、それを通じてブランドへの信頼や好感度を高め、最終的に売上やロイヤリティにつなげるマーケティング手法です。
具体例を挙げると、健康食品を販売する企業が、健康的な生活習慣に関する情報や、レシピなどを発信することで、自社ブランドの認知度や信頼性を高めていく、といったケースが該当します。
コンテンツマーケティングの主な目的は、以下の3つです。
例えば、ITソリューションを提供する企業が、ターゲット顧客である経営者向けに、業界の動向や課題解決のためのヒントを提供するオウンドメディアを運営することで、自社のソリューションを検討するリードを獲得する、といった効果が期待できます。
代表的なコンテンツマーケティングの手法には、以下のようなものがあります。
中でもブログは、比較的コストを抑えつつ、SEOの効果も期待できることから、多くの企業で活用されています。
コンテンツ種類 | 更新頻度 | 制作コスト | SEO効果 | エンゲージメント |
---|---|---|---|---|
ブログ | 高い | 低い | 高い | 高い |
オウンドメディア | 中程度 | 中程度 | 中程度 | 中程度 |
ebook | 低い | 高い | 低い | 低い |
ウェビナー | 低い | 高い | 低い | 高い |
ブログは、コンテンツマーケティング戦略の中で、非常に重要な役割を担っています。その理由は以下の3つです。
特に、検索エンジンからの流入は、初めて自社を知る顧客との接点として非常に重要です。ブログ記事は、狙ったキーワードで上位表示させることで、大きな集客効果が期待できます。
また、ブログのコメント欄や、SNSでのシェアを通して、顧客との直接的なコミュニケーションが生まれることも大きなメリットです。この対話を通して、顧客の悩みや関心事を知ることができ、それを新たなコンテンツ制作にいかすことができます。
加えて、ブログは他のコンテンツへの誘導の起点としても機能します。例えば、ブログ記事の中で、関連するeブックやウェビナーへの案内を記載することで、顧客をより深い関与へと導くことができるのです。
ブログは、他のコンテンツと連携することで、さらに大きな効果を生み出します。例えば、以下のような連携が考えられます。
このように、ブログを起点として、他のコンテンツへと顧客を誘導することで、総合的なコンテンツマーケティングの効果を高めることができるのです。
以上を踏まえると、効果的なコンテンツマーケティング戦略とは、ブログを中心に、他のコンテンツを有機的に連携させたものだと言えます。
そのためには、まずブログの役割と位置づけを明確にし、そこから他のコンテンツとの連携を設計していく必要があります。
例えば、リードジェネレーションに重きを置くなら、ブログ記事からのebookやウェビナーへの誘導を強化します。一方で、ブランディングを重視するなら、ブログとオウンドメディアの連携を軸に、SNSでの情報拡散を図るといった具合です。
いずれにせよ、ブログを中心とした統合的なコンテンツ戦略を立てることが、コンテンツマーケティングの成否を分けると言っても過言ではありません。
ブログ記事は、ソーシャルメディアと連携させることで、さらに多くの人に届けることができます。
例えば、ブログ記事をFacebookやTwitterで紹介することで、フォロワーにリーチするだけでなく、シェアやリツイートによって、そのフォロワーの知り合いにまで情報が拡散していきます。
また、ブログ記事の中に、SNSでのシェアボタンを設置しておくことで、読者が記事を拡散しやすくなります。
加えて、SNS上での反応を分析することで、どのような記事が読者の興味を引いているのかを知ることができ、今後のネタ出しにも役立てられます。
リードナーチャリングとは、見込み客を育成し、購入や契約に至るまで導いていくプロセスのことを指します。この過程で、ブログが果たす役割は大きいと言えます。
例えば、初めて自社のブログ記事を読んだ顧客に対して、記事の最後で関連する別の記事を紹介することで、自社ブログでの滞在時間を伸ばすことができます。
また、記事の終わりにebookのダウンロードを促すCTAを設置することで、リードの獲得につなげることもできます。
このようにブログは、リードナーチャリングのファーストタッチとして、非常に重要な役割を担っているのです。
魅力的なブログ記事を書くためには、まず誰に向けて書くのかを明確にする必要があります。
ターゲットとなる読者像(ペルソナ)を具体的にイメージすることで、読者の抱える悩みや関心事に寄り添った記事を書くことができます。
ペルソナ設定の際は、以下のような点を明確にしましょう。
例えば、「30代の女性会社員で、仕事と家事の両立に悩んでいる」というペルソナ像が明確であれば、そのペルソナが抱える悩みを解決するような、時短レシピや家事の効率化テクニックといった記事が有効でしょう。
※図版を作成して挿入
ブログ記事の企画立案は、以下のようなステップで進めていきます。
テーマ案の出し合いでは、ペルソナの課題や関心事に沿ったテーマを自由に出し合います。その際、競合他社の記事を参考にしつつ、自社ならではの切り口を見つけることが重要です。
次に、選ばれたテーマに適したキーワードを選定します。キーワードプランナーなどのツールを使い、検索ボリュームが多く、なおかつ競合が少ないキーワードを狙うことで、SEO効果の高い記事を作ることができます。
続いて、記事の構成を作成します。記事の流れを見出しレベルで整理することで、読者にとってわかりやすい記事になります。
最後に、取材や執筆の担当を割り振ります。いくつかのパートに分けて並走で進めることで、スピーディに記事を完成させることができます。
読者に読んでもらえる記事は、以下のようなテクニックを意識して書くことが大切です。
読者の立場に立って、読者が知りたい情報を過不足なく提供することが大切です。難しい用語は避け、専門用語は解説を添えるなど、読者が理解しやすい言葉で伝えましょう。
抽象的な表現より、具体的な事例を示す方が、読者にとってはイメージしやすく、説得力も増します。
例えば、「〇〇に効果がある」という表現を、「〇〇を使ったAさんは、1ヶ月で◇◇kgのダイエットに成功した」といった具合に、個別の事例で説明するようにしましょう。
記事の書き出しで、読者の興味を引くことが肝心です。
読者が抱える悩みを提示したり、衝撃的な事実を述べたりすることで、読み進めてもらえる確率が高まります。
読者は、まず見出しに目を通して、記事を斜め読みします。小見出しを適切に配置することで、記事の内容を把握してもらいやすくなります。
また、箇条書きを活用することで、重要ポイントを読者に簡潔に伝えることができます。
せっかく良質な記事を書いても、検索エンジンに評価されなければ、読者に届けることができません。SEOを意識した記事の最適化が必要不可欠です。
まず、キーワードを適切に選定し、記事内に自然に盛り込むことが大切です。キーワードの詰め込みすぎには注意しましょう。
また、以下のような点にも気をつけましょう。
加えて、記事の更新頻度を保つことも、検索エンジンからの評価を高めるためには重要です。
ブログ運営を改善していくためには、まずは、適切なKPIを設定することが欠かせません。ブログのKPIとしては、以下のような指標が挙げられます。
これらのKPIを、自社のブログの目的に合わせて選定し、数値目標を設定しましょう。
例えば、リードジェネレーションに注力したいなら、CVRを重視したKPI設定が有効です。
一方で、ブランディングを主目的とするなら、PVよりもUUや滞在時間を重視するなどの工夫が必要です。
KPIを設定したら、次はそれを元にした効果測定とデータ分析を行います。
GoogleアナリティクスなどのWebアクセス解析ツールを導入することで、KPIの推移を可視化し、適切に分析することができます。
例えば、以下のような分析をすることで、ブログ運営の課題や改善策が見えてくるはずです。
ポイントは、データの中から課題を発見し、打ち手を導き出すことです。仮説を立ててA/Bテストを行うなど、PDCAサイクルを高速に回していくことが重要だと言えます。
ブログは、継続的に改善を重ねていくことで、徐々に成果が現れてくるメディアです。そのため、社内の各部署が連携し、中長期的に改善を続けていく仕組み作りが欠かせません。
まずは、定期的にブログの成果を振り返る場を設けましょう。月次や四半期ごとなど、一定の期間でKPIの進捗を共有し、良かった点や課題点を議論します。
そこで出た意見を踏まえ、次のアクションにつなげていきます。
例えば、以下のような打ち手が考えられます。
このように、PDCAサイクルを回すための仕組み作りと、部署間連携が、ブログ運営の鍵を握っていると言っても過言ではありません。
BtoBマーケティングの分野で、ブログが成果を上げている事例を見てみましょう。
システム開発会社A社は、自社ブログでIT業界の最新トレンドや技術解説の記事を定期的に配信しています。記事は特定の企業向けでなく、技術者向けの汎用的な内容で、Twitterでの拡散も狙ったものになっています。
こうした地道な活動の結果、A社のブログはIT業界の技術者から高い評価を得るようになりました。読者からの問い合わせが増加し、新規の引き合いにつながったというのです。
このブログが成功した要因としては、以下の3点が挙げられます。
BtoBマーケティングで重要なのは、いかに自社の専門性を読者に伝え、信頼を獲得するかです。その点で、A社のブログ運営は模範的だと言えるでしょう。
次に、BtoCのブログ運営で参考になる事例を紹介します。
美容室B社は、自社ブログで髪のお手入れ方法やヘアスタイルの提案など、顧客の悩みに寄り添った記事を定期的に発信しています。記事にはスタッフの顔写真を添えるなど、「人」を前面に打ち出す工夫も凝らしています。
また、来店予約のボタンを記事に設置することで、ブログからの集客も実現しています。
B社のブログが支持される理由は、以下の3つが考えられます。
BtoCのブログで最も重視すべきは、共感を得ることと、行動喚起を促すことの2点に集約されます。その点で、B社のブログは見事に顧客心理を捉えた成功事例だと評価できるでしょう。
コンテンツマーケティングは、主に自社メディアを通じて顧客に価値を提供する手法です。対してインバウンドマーケティングは、コンテンツだけでなく、SEOやソーシャルメディア、メールマガジンなどの複数のチャネルを組み合わせ、見込み客を獲得・育成する手法を指します。コンテンツマーケティングは、インバウンドマーケティングを構成する一要素と言えます。
ブログとオウンドメディアは、どちらも自社で所有・運営するWebメディアですが、いくつかの違いがあります。オウンドメディアは、自社のブランドイメージを前面に打ち出し、自社の商品・サービスに関連する情報発信を行うことが目的です。一方、ブログは、必ずしも自社の商材にこだわらず、読者の興味関心に寄り添った情報発信を行います。ブログの方が、記事の方向性や更新頻度の面で自由度が高いと言えます。
ブログ記事の外注は、メリットとデメリットを天秤にかけて、自社の体制に適しているかを判断することが大切です。
ブログの更新頻度は、業界や競合の状況によって異なりますが、最低でも週1回は更新したいところです。理想的なのは週2〜3回の更新ですが、高品質な記事を書くには時間がかかるため、現実的には難しいかもしれません。自社の体制やリソースを踏まえた上で、無理のない更新頻度を設定することが肝要です。
一般的に、ブログの記事数が多いほど、検索順位が上がる傾向にあります。記事数が多いということは、それだけ広範なキーワードをカバーしていることを意味するからです。
ただし、記事数を増やすことを至上命題にするのは賢明ではありません。あくまで質を伴った記事数の増加が求められます。検索エンジンはPV数などの行動指標もランキングの判断材料にしているため、読者に支持される良質な記事を量産することが理想だと言えます。
この記事では、コンテンツマーケティングにおけるブログの重要性を語らせていただきました。企業のブログ運営に携わる方にとって、一助となれば幸いです。
ブログは単なるコンテンツの一形態ではありません。顧客との関係構築の要であり、マーケティング戦略の中核を担う存在です。だからこそ、「顧客視点」と「長期的視座」を忘れず、一記事一記事を丁寧に作り込んでいく姿勢が欠かせません。
コンテンツマーケティングの荒波をブログで乗り越えていく。
それはマーケターの新たなチャレンジであり、やりがいであると信じています。
皆さんも、ブログの舵取りに思いを馳せ、愛情を注いでみてはいかがでしょうか。