ルールが変わった?今なぜオムニチャネルか

EC(Eコマース)

「オムニチャネル」という言葉が、小売・ネット業界において重要なキーワードとなってきている。耳にしたことがある方も多いだろう。

2011年に米大手百貨店「Macy's」が取り組んで大成功を収め、オムニチャネル・リテーラー宣言をしたことが、この言葉が広まったきっかけとされている。日本でも現在、国内流通大手を中心に、各社が取り組みを強化している。

そこで今回は、「オムニチャネル」によって何がどう変わるのかについて考えてみたい。

そもそもオムニチャネルとは?

「オムニ」とは、ラテン語で「すべて」という意味。

『知恵蔵2014』によれば、オムニチャネルとは、実際に存在する店舗での商品販売をインターネットのバーチャルな店舗での販売と連携させた、新しい購買スタイルやそれらの取り組みを指すとしている。

これまで小売企業は、店舗(シングルチャネル)だけではなく、通販、TV、Web、モバイルなど、マルチ(様々な)チャネルを持っていた。しかし、商品情報、在庫管理、顧客データはそれぞれ個別に存在する状態だった。

これらのチャネルを統合し、データを一元化したのがオムニチャネルである。

そうすることで、顧客がどのチャネルから入ってきた場合も、同じ商品・サービスおよび、一貫したブランド体験をシームレスに提供できるようになった。

オムニチャネル化する意味

小売業界のチャネル施策は、シングルチャネル→マルチチャネル→クロスチャネルと進化して、オムニチャネルに至ったとも考えられる。

だが、前述のとおり米老舗百貨店の「Macy's」の取り組みが大成功だったことをきっかけに、特に注目を集めるようになった。

オムにチャネル化を実施する意義として、次の4つが挙げられるだろう。

  1. 店舗をネットと融合することで売り上げが伸びる。
  2. 既存のネット専業者(Amazon.comなど)にリアル店舗の売上が奪われており、リアル店舗を軸にネット利用の顧客を囲い込む戦略として重要な意味を持つ。
  3. ピックアップサービスやショールーミング(店舗で確認した商品をネットで買うこと)など、リアル店舗を強みとしたサービスが、ネット専業者との差別化につながる。
  4. 地方の小売店舗において取り扱っていない商品を、その地方の顧客はネット通販等で購入している。店舗の品揃えを補完する機能としてネット販売を取り入れることで、新しい市場を開拓できる。

消費者にとってオムニチャネルとは?

オムニチャネルの概念は、スマートフォン、インターネットの普及を背景に、消費者が自分のライフスタイルに合わせた消費行動を始めたことが発端だろう。企業のオムニチャネル化は、こういった消費行動の変化への対応策とも言える。

それまでは、「お買い物」には、定休日、営業時間、品揃え、価格など、企業の都合に従わざるをえない制約があった。

今は、PCやスマートフォンでいつでも、どこでも、自分のライフスタイルや価値観に合った消費行動を選ぶことができる。乳幼児がいて買い物がままならない母親も、帰宅の遅いサラリーマンも、ネットを通して自分の欲しいものを手に入れられるようになった。

小売業の側としては、今後はさらに個々人のライフスタイルを丁寧に観察していくことが必要となるだろう。

ルールが変わった?

オムニチャネル時代の到来とは、言い換えれば、少子高齢化など日本市場の縮小を背景に、「商品の売り上げを競うゲームから、LTV(顧客生涯価値)最大化を競うゲームへのルールチェンジ」ということになるだろう。

企業が追っていくべき数字は、店舗ごとの売り上げではなく、個人の可処分所得のシェアをどれだけ自社が獲得していけるか、ということになる。

そのため、大手流通各社は異なる業態に参入したり、別業態の企業を買収したりして、顧客のあらゆる購買の機会に自社を利用してもらえる取り組み(コングロマリット化)を展開している。

オムニチャネル成功の要件は?

オムニチャネル化とは、極端に言えばリアル店舗すべてがネット化されるということを意味する。これは、ネット専業者にとって脅威となるだろう。

なぜなら、顧客接点を多く持つリアル店舗には利点も多いからだ。EC化が進んでいるとはいえ、米国の国勢調査によれば、小売りの売り上げの6~10%がネット販売であり、90%はリアル店舗による売り上げとなっている。

小売業者にとっては、Webを活用し、リアル店舗の強みを活かしたサービスを強化することによって消費者の利便性を高めることが、成功要件の一つとなるだろう。

さらに成熟した市場においては、リアル店舗のオムニチャネル化が進めば、ネットにおける小売りのメーカー化(ブランド化)とプラットフォーム化(サービス化)に収束していくのかもしれない。

今後も動向に注目していきたい。

参考元: Why and How Brands Must go Omni-Channel-in-2014 Why The Future Of Digital Commerce Is The Omnichannel The omni-channel opportunity for retailers: what's the story? オムニチャネル

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