eレシートで、モバイルマーケティングをパーソナライズ化したWalmart

デジタルマーケティング
財布の中にカードが何枚入っているのか、即答できる人はいるだろうか?
クレジットカードや銀行カード、会員カード、加えて、どんどん溜まっていくレシートやクーポン券……。ポイントカードにいたっては、その使用頻度の低さから捨ててしまった経験がある人もいるだろう。
しかしそんな悩みも、スマートフォンの普及とともに変化を見せるようになってきた。増え続ける会員カードやポイントカードはモバイル化が進み、ダウンロードしたアプリにポイントが溜まっていくというシステムも、最近ではちらほら見られるようになってきた。
そして、それをさらに一歩先へ進めたのがeレシートだ。
Walmartは、カスタマーがeレシートをモバイルアプリのアカウント内に保存できるシステムを作り、店頭やモバイル上でのパーソナライゼーションに利用できるようにした。その仕組みを紹介しよう。
目次
eレシートとは?
eレシートとは、その名の通り「Electronicレシート」という意味で、店頭で紙に代わって受け取る電子レシートだ。
商品購入の際、デビット/クレジットカード端末機に携帯電話番号を入力しeレシートを選択すると、eレシート付きのメッセージがスマートフォンに届くようになっている。
また、このeレシートは、アカウントを作成し、モバイルアプリとシンクすることでデータとして保存し、いつでも照会することが可能だ。紙のレシートを受け取った場合でも、そこにプリントされているQRコードをスキャンすることで、同様に使うことができる。
How Walmart Uses Receipts to Personalize Mobile Marketing
eレシートは、スマートフォンのアプリに保存されて“終わり”ではない。そこで、次にそのベネフィットを見ていこう。
カスタマーにとってのベネフィット
1.eレシートからショッピングリストへ
「あー、あの商品良かったなぁ。また買いたいけど、パッケージは捨てちゃったし、名前もうろ覚え……」という経験はないだろうか。
eレシートなら、過去のレシートからお気に入りの商品を直接ショッピングリストに追加することができるため、そんな心配は無用!
価格や在庫などの情報も同時に確認できる親切さで、「店頭に行ってみたものの在庫切れだった」なんていうことは、もうない。
2.返品・交換
返品や交換の際には、レシートが欠かせない。
帰宅後にサイズ違いや商品の不具合を発見し、交換しようと財布やバックをひっくり返してレシートを探さなければいけなかった、という話もめずらしくない。
しかし、このWalmartアプリがあれば、いつでもどこでもアカウントからレシート照会が可能なため、もう、返品・交換のために紙のレシートを探す必要はない。必要なのはスマートフォンだ。
Walmartにとってのベネフィット
1.莫大なデータ収集
カスタマーのレシートが電子化され、そのカスタマーのアカウントとシンクしているということは、Walmartが莫大なデータをいとも簡単に集めることができるようになった、ということである。
商品のリストはもちろん、買い物の頻度や時間帯、平均的な購入金額など……。アカウントとシンクされたことにより、個々の消費傾向がより正確に推測できるようになったのだ。
2.広告のパーソナライゼーション
集められた莫大なデータはどこへ?
もちろん宣伝に使うのだ。データを分析すれば家族構成や、ペットの有無、趣味など、的確な宣伝を行う上で重要な情報が予測できる。ゆえに、パーソナライズされた情報を発信することができるというわけだ。
3.環境問題への取り組みでイメージアップ
特に大きな企業ほど、環境問題に積極的に取り組むことが使命とされるようになってきている。
しかし、北米でよく見られるWalmartのような低価格を売りにした大型店舗では、未だに「安く売るために、環境など考慮せず、コストを抑えられるものには何でも飛びつく」というイメージを払拭できずにいる。
だから、Walmartがeレシートを導入し、カスタマーが直接感じられるような方法で、ペーパーレスによる森林保護に積極的に取り組んでいる姿勢を世間に広く証明することには、大きな意味があるというわけだ。
iBeaconとの相互性
ところで、iBeaconというものをご存知だろうか。
Bluetooth Low Energy(BLE)と呼ばれる技術を活用した端末を店舗などに設置することで、様々なマーケティングへの活用を可能としたのがiBeaconだ。BLEデバイスとスマートフォンの距離をモニタリングし、商品に接近するとプッシュ通信でスマートフォンにセール情報やクーポンを送ることもできる。
今、最も注目されている新しいテクノロジーの1つと言えるだろう。
Walmartは、アプリと連動されたeレシートから得られるデータはパーソナライズされたマーケティングに欠かせない足場となる、とした上でiBeaconとの相互性については現時点で何も言及していない。
仮にiBeaconがWalmartアプリと連動すると、店頭で頻繁に訪れるセクションや、パーソナライズされ、発信されたセール情報に、どう反応するのか(実際に店頭で商品を見に行ったのかどうか、商品の前でどれくらい時間を過ごしたか、購入したかどうかなど)というデータを集め、宣伝の効果を測定することができるようになる。
Walmartが見据える未来
店内を歩いていると、スマートフォンが鳴る。
「牛乳も忘れずに購入してください!」「オムツがもうすぐなくなります。追加購入を!」
このように、買い物中に必要なものを思い起こさせてくれるようなアプリがあったら、どうだろう? 買い忘れをして、同じ日に同じお店に二度も行ったなんていうことはなくなる。
過去の購買記録から必要なものを察知し、自動的にショッピングリストへと追加、店頭ではリマインダーが鳴る。
それが、半世紀にわたり小売業の世界を牽引し続けているWalmartの見据える未来だ。
「ショッピングリストは作るものではなく、そこにあるものだ」という、想像を超えるような未来の実現に向けて、世界最大のスーパーマーケットチェーンは走り続けている。
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