ベンチャー経営はスピードが全て

経営・ビジネスハック

僕は、新卒で富士通に入社、10年ほど勤めた後に、楽天に転職しました。人生で初めての転職だったのですが、一番びっくりしたのは、そのスピード感。ミーティングは30分刻みで入って居るし、意思決定がどんどん進む。特にトップが決めた決定事項が現場に落ちるスピードがすさまじく速い。そして、現場の働き方も早い。どんどん決めるし、どんどん進める。これは本当にカルチャーショックでした。

そして、今、自分でベンチャーの社長をやって痛感するのは、このスピード感が本当に大事だという事です。ベンチャー経営って、戦略ゲームをやっているようなものです。一手一手打ち手を考えつつ、どうやって自社に有利な局面を作り出し、勝ち抜いていくのか? 将棋やチェスと共通する要素が相当あると思っています。

先日、若くしてチェスの世界チャンピオンになったジョシュ・ウェイツキンの本を読む機会がありました。彼は、伝説のチェスプレイヤー、ボビー・フィッシャーの再来かと言われた天才チェスプレイヤー。更には、チェスを引退した後に、太極拳のチャンピオンになったりと次々と活躍しています。

彼に言わせると、チェスの勝敗を決める上で、一番重要なのがエンドゲーム、すなわち、終盤戦です。彼が幼い頃に師事したトレーナーは、終盤戦での勝ち方を徹底的に教え込んだそうです。そして、終盤戦をマスターしてから、中盤戦、序盤戦へとさかのぼってマスターして行くのです。これがジョッシュが若くして世界チャンピオンになった秘訣なのだと思います。

これはなかなか示唆深いです。思い返すと、僕が最初に将棋を覚えた時は、最初にどこを動かすのかというのを悩んでいました。一手目が歩なのか? どの歩を動かすのか? しかし、ジョッシュの考え方によれば、一手目に頭を悩ますのは時間の無駄でしかないのです。一手目に頭を悩ます位であれば、さっさと打った方がいい。だって、勝ち負けに影響がそんなに無いんですから。

これは、今僕がイノーバを経営していて思う事と非常に共通しています。イノーバにとっては、現在の状態はまだまだ序盤戦。頭を悩まして時間を掛けるのはNGなんです。もっとクイックに考えて、クイックに動かないと行けない。とにかくスピードなんです。

やるべき事は、終盤戦を思い描く事。他社がどうやって終盤戦を戦ったのか? どうして勝ち負けが決まったのか? それを徹底的に研究する事。そしてやがて迎える終盤戦を思い描く事だと思うのです。そして、その終盤戦に持って行くための中盤戦の戦いを考える。序盤戦は、正直そんなに考えなくていいんです。

序盤戦でのミスは、後でいくらでも取り返せるんです。序盤戦で考えるべきは、ミスをしないように慎重にプレイする事ではなくて、quick and dirtyにプレイする事。すこしでも手数を多くして、学びを増やしていく事。これが圧倒的に重要なんだと思います。

イノーバのスピード感は、まだまだ僕のイメージに追いついてないです。僕自身ももっと早く動かないと行けないし、会社全体がクイックに動けるようにならないと行けない。クイックに考え、クイックに行動する。しかし、常に終盤戦でどう勝つかを考え続ける。

どうでしょうか? あなたの会社は、今どのフェーズに居るでしょうか?
ベンチャーなら間違いなく、もっとスピードを上げないとダメでしょう。逆に、成熟しているビジネスなら一手が勝敗を分ける手になります。だから考え抜き、あらゆる可能性を想定する必要があるでしょう。チェスの戦い方を意識する事は、会社経営に大きなヒントになると思います。

Photo Credit:Flickr

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