ユーザーを「自社サイトのマーケター」にする ユーザー参加型マーケティング

コンテンツマーケティング
世の中には、思わず応援したくなるサービスなるものが存在する。
米国を代表するマーケター、マイケル・ステルズナー氏が立ち上げたMy Kid’s Adventuresというサービスも、そのうちの1つである。
卓越したマーケティングセンスを持つ彼は、ユーザーを自社サイトのマーケターへと転換させるマーケティング手法を用い、このサービスを瞬く間に世に広めていった。
今回は、彼の成功事例を参考に、ユーザー参加型マーケティングのコツを学んでいくことにしよう。
冒険心を忘れてしまった子供たちへ
ステルズナー氏は、ある時My Kid’s AdventuresというWEBマガジンの立ち上げを決意した。
これは、「冒険心を忘れてしまった現代の子供たちに、ワクワクするアドベンチャーを体験させてあげよう!」というコンセプトの下に作られた、WEBマガジンである。
ここでは、家や近所で簡単にできるアドベンチャー(体を使う遊び)のアイディアをユーザーから募り、小さな子供を持つ親同士でシェアできるようにしている。
「自宅の庭で宝探しゲームをする方法」「子供と一緒にアドベンチャー・ムービーを作成する方法」など、親子で手軽に楽しめるアドベンチャーのアイディアが盛り沢山である。
オープン早々、このサービスは驚くべき速さでユーザーを獲得し、人気サイトへと成長していった。
そしてその成功の背景には、ユーザーを自社サイトのマーケター化してしまう、ユーザー参加型マーケティングの存在があったのだ。
傍観者から共感者へ
サービスの開始前、彼のブログに1枚の写真がアップされた。
ボヤけた企画書を背景に、「ただいまビッグなプロジェクト企画中!」という文字が書かれていた。これを見たユーザーは、「何が始まるんだろう…」という好奇心が刺激され、気にせずにはいられなくなってしまう。
そして次に、企画の概要を説明した動画をアップロードした。サイト立ち上げに至った経緯を、彼の幼少期の体験を交えながら語る動画であった。動画の中で、彼は森や湖の中で、他の友達と楽しそうに遊んでいる。
http://vimeo.com/63474839
これを観た親ユーザーたちも、自分たちの幼少期のエピソードを思い出し、ノスタルジックな気分に浸り始める。同時に、この動画の中では、子どもたちがスマートフォンやゲームにどっぷり嵌まって、外で遊ばなくなっている姿が描かれている。
彼らは自分たちの過去の思い出と重ね合わせ、こう思うのだろう。「私の子どもにも、アドベンチャーを体験させてあげたい!」、と。
彼の巧みな語り口調もあいまって、この親ユーザーたちは彼のサイト立ち上げへの熱意に共感し、応援せずにはいられなくなる。
共感者から協力者へ
続いて彼は、サイト立ち上げの過程を見せる動画もアップロードした。
この動画では、サイトのデザインを決める過程を見せたり、その理由を述べたりしている。ユーザーもコメント欄を通じて、自分の意見を述べられることができ、サイトの立ち上げに協力できるようになっている。
また、サービスの公開前、彼はメーリングリストを作り、協力的なユーザーたちにサイトの進捗状況を随時報告できるようにした。こうなればもう、ユーザーたちはサイトの進捗を気にせずにはいられない。まるで我が子の成長を見守るかのように、サイトの立ち上げを気にかけるようになる。
そして、ステルズナー氏がサイトをオープンすると、協力的なユーザーたちはMy Kid's Adventuresをソーシャルメディアで拡散していった。まるでマーケターのように、積極的にPRに協力してくれたのである。
かくしてMy KId's Adventuresは、好意的なユーザーの協力を得て、あっと言う間にかなりの数のユーザーを獲得していったのだった。
成功要因は?
1.共感せずにはいられないストーリー設計
傍観者から共感者へと転換するフェーズにおいて功を奏したのは、サイト立ち上げの経緯を語った動画キャンペーンである。
幼少期の思い出、現在の子どもの遊び方に対する疑問など、ユーザーの感情のツボを押さえた見事なストーリー設計でユーザーの共感を誘った。また、この動画の中で、彼はCEOではなく、1人の父親として、彼の子育ての悩みを語ったのだ。こうすることにより、ユーザーと同じ立場に立つことで、より有機的な絆を作ることに成功した。
2.ユーザーが立ち上げに参画できる仕組み
また、ステルズナー氏はイラストのデザインを考えていく過程など、「企業秘密」とも言えるような作業をユーザーに見せた。そして、ユーザーがコメントを通じて、サイトの立ち上げに協力できるような仕組みをつくった。
共感するだけでなくサイトの立ち上げに協力することで、より一層このサイトへのコミットメントが強くなったのだ。
3.ユーザーとの継続的なコミュニケーション
そして、仕上げはメーリングリストだ。今回、ステルズナー氏は、早い段階からメーリングリストを作成して、ユーザーと継続的なコミュニケーションをとれる形にしている。
これにより、リスト上のメンバーの関心を持続させ、その後のサイト運営に協力してもらえるようにしたのだ。ユーザーはメンバーになると、より積極的にサイトを成功に導こうという気持ちになるものだ。
まとめ
いかがだっただろうか? 人は、自分が好きで関わっているものについては、知ってもらいたい、広めたいと思うものである。
今回の事例を見ても分かる通り、ユーザー参加型マーケティング は「共感」と「コミットメント」をキーワードに、ユーザーを自社サイトのマーケターへと転換することができる手法だ。
広告予算の限られている場合や、マーケティング担当者が少ないサービスには、非常に有用な手法であるので、今回の事例を参考に、ぜひ実践してみて欲しい。
参考元:9 Creative Ways to Use Social Media to Launch a Product Photo: Some rights reserved by nooccar, flickr
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