勘と経験から抜け出せない日本企業のマーケティング

デジタルマーケティング

先日ブログでCMO不在の日本企業というテーマで書いたけれど、先日、また問題の根深さを感じさせる話があった。

知人と話していて、日本企業がソーシャルリスニングツールをなかなか買わないという話を聞いたのである。 ソーシャルリスニングとは、TwitterやFacebookの生の書き込みデータを、テキスト分析してマーケティングに活用しようとするもの。企業やブランドに対する好感度を時系列で分析して、ブランドの健全度合い(Brand health) を測定したり、ユーザーのロイヤリティを図るのが代表的な使い方。ほぼリアルタイムで運用できるのが最大の特徴で、このツールを入れる事で、マーケティングの改善サイクルをクルクル回す事が出来るようになる。

アメリカでは、Radian6などのソーシャルリスニングツールが大変人気で、大手ブランドであれば、必ずなんらかのソーシャルリスニングツールを入れるのが定番となっている。しかも、結構高くて、月額数十万円という利用料を払うものだ。

こうしたソーシャルリスニングツールは日本にも上陸しており、絶賛マーケティング活動中なのだが、日本企業はなかなか買わないらしい。

知人曰く、お客さんと話すと、ソーシャルメディアをウォッチする事の重要性は判る、現場としてもツールを導入したい、しかし、社内の稟議書を通すためには、ROIを証明しないといけない、どういうROIが説明できるでしょうか?という話になるという事だ。

これは、日本のマーケティングが、広告宣伝中心、キャンペーン中心になっている事に問題の根っこがある。

キャンペーン中心の文化では、お金を使う時には、どれだけの人にリーチしたのか、その結果、幾らの売上が見込めるのかというのが問題となる。

しかし、ソーシャルリスニングツールは、ブランドの健全度合いやロイヤリティを図るものだから、単体でのROIを見るのはなかなか難しい。

もちろん、ソーシャルリスニングツールを使って、その会社がPDCAを回し、顧客満足度を上げていけば、既存顧客の購入単価もあがり、口コミでのユーザー獲得も増えるので、リターンが大きくなるのは間違いない。しかし、これを数字で納得感を持って、説明するのは難しい。

例え話をしてみよう。例えば、新しくパソコンを会社に導入する時に、パソコンのROIを聞く人がいるだろうか?マイクロソフトオフィスの導入を検討する時にROIを聞く人が居るだろうか?

ソーシャルリスニングツールは、ITで言えば、パソコンやマイクロソフトオフィスに該当するものであって、いわば、企業のマーケティングのインフラなのである。インフラは、戦略的に導入するものであって、広告宣伝と同じ視点でROIを考えるべきものではない。

しかし、CMO不在の日本企業では、大所高所に立って、戦略的に投資の意思決定を出来る人が居ないから、今までの広告宣伝予算から、こうしたマーケティングツールの予算をひっぱってくるしかない。そうすると、ROIの議論になる。

先日も、外資系のブランドマネージャーをやっていた友人に、ソーシャルリスニングツールの話をしたら、そのツールをすぐに入れたいという話をしていた。外資系のブランドでは、マーケティングの意思決定を、極めてロジカルに定量的に行うため、リアルタイムに消費者のモニタリングが出来るツールは、利用価値が高いという訳だ。一方、日本企業はソーシャルリスニングツールの予算がつかず、導入がすすまない。

このまま行くと、海外のグローバル企業は、どんどん先進的なモニタリングツールを実装し、マーケティングをサイエンス化していき、日本企業は相変わらず旧態依然とした勘と経験の世界で勝負をしていく。

野球の映画「マネーボール」を見た人なら、勘と経験に依存したマネジメントの危険性を理解出来るだろう。

日本企業を変えるには、経営のトップがこの現状に気付き、自らマーケティングの最前線を学ぶ必要がある。そして、組織のあり方、仕事のあり方を変えていく必要がある。そうしないと、日本企業のマーケティングにおける競争力は失われるだろう。

みなさんはどう思いますか?

Photo Credit:seanomatopoeia