米HBOのTVドラマ「シリコンバレー」に学ぶコンテンツマーケティング戦略

コンテンツマーケティング

2014年4月に放送がスタートした「シリコンバレー」は、米国のケーブルテレビ局HBO製作のシチュエーションコメディ。

IT企業を去った主人公が新しい会社「Pied Piper」を立ち上げて、いろいろ奮闘するお話だ。

作品そのものも話題になっているが、実はもう1つ注目を集めているものがある。それが、架空の会社である「Pied Piper」のWebサイト、PiedPiper.comだ。このサイトが、コンテンツとしていかに優れているかを検証し、HBOのコンテンツマーケティングを分析してみようと思う。

PiedPiper.com の特徴その1:ニヤリとさせられるジョーク

PiedPiper.comが優れたコンテンツである理由の1つが、ジョークの数々だ。「シリコンバレー」を観ている人間であれば、ニヤリとしてしまうものばかりである。

例えば、Pied Piper社のチームに「アーリック・バックマン」という男がいる。プロフィールを見てみると、彼の肩書きは「Chief Executive of Physical Space」。「物理空間の最高経営責任者」とでも訳せばいいだろうか? 聞いたことのない役職だが、要するに大家さんだ。

アーリックのプロフィールはさらに続く。「カリフォルニア大学バークレー校、リード大学、オーバリン大学、ハンプシャー大学に、様々な期間在籍していた」。ちなみに、アルティメット・フリスビー(7人制のフリスビー競技)の学士号を持っているらしい。

ページの最下部には「Pied Piper社はPied Piper Irrigation社とは何の関連もありません」という1文がある。これを読んで、ファンはまたまたニヤリとすることだろう。

ドラマの中で主人公が、Pied Piper Irrigation社の社長から1000ドルで「Pied Piper」の名前を使う権利を譲ってもらうエピソードがあるからだ。

さらに、「HBOの『シリコンバレー』とは関連があるかも。日曜の夜10時、見てね」とさり気なく宣伝までしている。

このように、ドラマのファンであれば絶対に嬉しくなってしまうジョークが、サイト中に散りばめられているのだ。効果的なコンテンツマーケティングの要素の1つであるユーモアが、ふんだんに使われているのである。

PiedPiper.com の特徴その2:本物のIT企業サイトっぽいサイト

ドラマのファンというものは、フィクションの世界がリアルに感じられるほど喜ぶものである。

そういう意味でも、PiedPiper.comはファンのニーズを満たしている。サイトの見た目も書いてある内容も含め、本物のIT企業のサイトっぽく作られているからだ。

また、スタートアップの立ち上げ環境を知っている者は、誰でもこのコンテンツに親近感を抱くだろう。サイトがきっかけで、ドラマに興味を持つ人間が出てくることも期待できるかもしれない。

その他 TVドラマのコンテンツ例

ドラマの世界を、よりリアルに感じさせるコンテンツは、米国では過去にも存在した。「シリコンバレー」以外の例をいくつかご紹介しよう。

比較的最近のものではABCテレビのドラマ「ロスト」が挙げられるだろう。現在はもうなくなっているが、「オーシャニック航空」と「ハンソー基金」のWebサイトが公開されていた。もちろん航空会社も団体も、ドラマの中だけに存在する架空のものである。

少し古くなるが、90年代初めにヒットしたデイヴィッド・リンチ製作の「ツイン・ピークス」も挙げておきたい。「ツイン・ピークス」という、どこにも存在しない町のガイドブックが発売されたのだ。その名も『Welcome to TWIN PEAKS/ツイン・ピークスの歩き方』。観光名所の紹介や、ダイナーのスペシャルメニューなど、ファンにとってはたまらない内容になっている。

どちらもファンにとっては、フィクションの世界をより身近に感じられるコンテンツであることは間違いないだろう。

「シリコンバレー」に習うべきコンテンツマーケティングのポイント

では最後に、HBOが行ったコンテンツマーケティングの優れた点をまとめてみたいと思う。

まずは、ターゲットオーディエンスを熟知していたことが挙げられるだろう。ドラマの視聴者に何を与えればさらに番組を観てくれるか? 好きになってくれるか? ソーシャルメディアでシェアしてくれるか? をよく理解していたということだ。

ちなみに、ドラマに登場する人物やアプリのTwitterアカウントも存在するのだが、ファンによって作られたものもあるようだ。ファンがコンテンツを作ってくれて、拡散していってくれるのは、どんなブランドにとってもありがたいこと。そして、これもHBOがファンをよく知っていたことによる結果と言えるだろう。

もう1つの成功要因は、ソーシャルメディアでのファンの動きを見逃さなかったことだろう。HBOは常にアンテナを張ることを怠らなかったので、「シリコンバレー」の人気の上昇をすばやくキャッチできた。そして、すかさずファンがドラマへの興味をさらに強めるようなコンテンツを提供したのである。

今はまだ、サイト内のコンテンツは少ないが、今後はどんどん増えていくだろう。それと比例してファンも増え続けていくに違いない。