学生に「投資する」時代 アメリカの学費支援スタートアップ Pave

経営・ビジネスハック
アメリカでは、大学の授業料が年々上がっている。そのあまりの高さに進学をあきらめる者も少なくない。大学の奨学金制度や政府の助成制度を利用する生徒もいるが、それでもまだサポートが足りないと彼らは感じている。
そこへ、救世主が現れた。このような学生たちをサポートするスタートアップが何社も立ち上がったのである。
この起業家たちは、さまざまなアプローチで学生たちを資金面で援助しようとしている。
今回は、その中でも「学生の将来に賭ける」方法を取り入れた、あるスタートアップのケースを紹介しよう。
学生の将来に懸ける「Pave」
スタートアップPaveは、学費の援助を申し出るサポーターと学生を結びつける事業を開始した。
それは、サポーターが学費を貸与し、それを学生の将来の収入で返済してもらうという形のサポートである。この点は日本でも行われている従来の奨学金制度と変わらないのだが、異なるのは「将来、学生が収入を得るようになったら、一定期間そのうちの数パーセントがサポーターに渡る」仕組みになっているところである(通常、収入の3~10%で、期間は10年ほど)。
つまり、学生が将来大成功して高収入になれば、サポーターも潤うというわけだ。「学生の将来性に賭ける」方法である。
有望で奨学金を受けるべき学生ほど、多くのお金が「投資」される仕組みだ。
では、実際にどのように運営されているのだろうか?
社会事業家であるローレンス・カーン氏の例を見てみることにしよう。
スポーツ事業を始めた社会起業家の学費をサポート
ローレンス・カーン氏は、コロンビア大学でMBA取得を目指していた。
彼はStreet Soccer USAというスポーツ事業を始めたのだが、これは、ストリートサッカーを通してホームレスの人々を支援していこう、というものである。このような社会事業をリードしていくため、コロンビア大学で学ぶことを決意したのだ。
そして、カーン氏は、Paveで学費のサポーターを募集することにしたのである。
出典:Pave
Paveでは、まずサポートを受けたい学生が、将来どんなことを成し遂げたいかを記事にして、同社のWEBサイトにこれを掲載する。
そして、これまでの社会活動などを写真や動画なども用いて同サイトに載せ、自分が「どういうことを目指している人物か」ということをアピールするのだ。
例えばカーン氏の場合、Street Soccer USAの事業を通して、多くのホームレスの人々に教育や就職の機会を与えたという実績を載せている。
このような内容を見て、「この学生をサポートしたい」と思った実業家などが学費の援助をできるシステムになっている。そして、援助をした人々の名前もプロフィールと共に掲載されるので、誰がどういう学生をサポートしたかが一目で分かるようになっているのだ。
また、彼らはPaveのMentorshipという制度を利用して、学生に助言を与え、成功への道筋をつけることもできる。
Paveを利用し、カーン氏はこれまで12人のサポーターから合計4万ドルの援助を受けている。また、自分の行っている事業を多くの人に知ってもらうことができたのだ。
学生支援のために続々と立ち上がるスタートアップ
Paveの他にもアメリカには同じようなサービスを展開するUpstartというスタートアップもある。
また、寄付を募るタイプのサービスを提供するスタートアップには、Give College、Gradsave、 Instagrad、Campus Sliceなどがある。SoFiやCommonBondなどは、卒業生からの貸与という形のプログラムを組んでいるようだ。
アメリカ以外にも学生支援のサービスは存在する。例えばイギリスでは最近StudentFunderというクラウドファンディングサイトが立ち上がっている。
まとめ
最近日本でも、奨学金の返済延滞問題がクローズアップされたり、学費のサポートを求めるクラウドファンディングサイト立ち上げの試みがあったりなど、「学費援助」に対する人々の関心が高まってきているようだ。
「学習意欲はあるのに学費の工面が難しい」学生が多く存在するという事実が、国内外で大きな社会問題になってきているということであろう。
「熱意や意欲のある学生」への学費援助のニーズが高まっている今、アメリカのスタートアップの例などを参考に、新たなビジネスモデルを考えていけたらいいと思う。
次世代を担っていく青年たちをバックアップするというのは社会的意義が大きい。日本でも充実した学生支援サービスが立ち上がることを願う。
記事執筆:(株)イノーバ。イノーバでは、コンテンツマーケティングのノウハウを詰め込んだ無料のebookや事例集をご提供しています。ダウンロードはこちらからどうぞ→https://innova-jp.com/library/
参考:
・Can’t afford college tuition? These startups can help
・ソーシャルキャピタルで助け合う時代へ。メキシコ出身の起業家が手がける、学費のクラウドファンドサービス「StudentFunder」[MYPRO LONDON]
Photo:Some rights reserved by CollegeDegrees360, flickr
人気記事
関連記事