感動を作り出すコンテンツはこうやって作れ!

EC(Eコマース)

ネット動画を眺めていると、時に心が揺れ動く作品を発見する。じわりじわりと胸の奥にかすかなざわめきを感じ、気がつくと、目の前の動画に釘づけになっている。「感動」という感情を湧き起こす動画だ。

個人が作った動画もあれば、企業が自社のブランディング構築のために作ったプロモーション映像もある。さまざまなモチーフで作られた「感動」動画は、世界中に拡散され、話題になっていく。人は「感動」に弱いものだ。

さて、ここで話題にしたいのは、「感動」動画が多くの人の共感を得るという現実をリポートすることではない。「感動」を意図的に生み出すことができるか? もしできるのなら、そこにはどんな法則があるのか? Webコンテンツに「感動」を組み込むことで、世界中のノンカスタマー(顧客になる可能性のある潜在的顧客)の注目を集め、カスタマー(顧客)を増やすことは可能なのか? ……このことについて検証していきたい。

じわじわと胸にしみこむ感動動画2本

数ある感動動画の中から、2本紹介したい。この2本を選んだ理由は、後ほど説明しよう。まずは、ご覧いただきたい。

Som Sabadell flashmob – BANCO SABADELL

ひとりの少女が街の広場にたたずむ音楽家にコインをあたえたことからはじまる、感動サプライズ作品だ。
コインをもらった老人の音楽家が演奏をはじめる。すると、ひとり、またひとりと演奏者が増え、最後は大オーケストラとなり、広場を歓喜の渦に巻き込むという、微笑みと驚きの物語になっている。

Good people / Мир не без добрых людей…L

ロシアの道路上で見かけた「小さな親切」をまとめただけの動画だ。だが、なぜこれほどまでに心が暖かくなるのだろう? 街中で会えば思わず目を背けてしまうかもしれない、いかつい大男が、車から降りて小走りにおばあさんの元に駆け寄り、手を引いて道路を横断させてあげているシーンは、「人は見かけで判断してはいけない」という教訓を思い出させるものだ。……いや、もちろんこれは冗談だが。

モンタージュ効果で作り出される「感動」

この2本の動画には、共通点があることにお気づきだろうか?
それは、どちらの動画も、小さな出来事を積み重ねることで、少しずつ人の心の壁を崩し、それがやがて「感動」という感情に変化していくという、モンタージュ効果のもたらす現象論に基づいたものになっているのである。

映像作品には文法というものがあって、その基本となるのが、「モンタージュ効果」だ。一見無関係な情報(映像)を積み重ねることで、観る人に「特定の感情」を意図的にあたえる手法である。

たとえば、最初の動画で、楽団員がひとりずつ増えて、演奏が重層的になるにつれ、演奏曲がベートーベンの第九交響曲「歓喜の歌」であることが明らかになっていく。その瞬間、広場に集まった人々の笑顔が、意図的に積み重ねられ、「広場に歓喜が広がっている」状況を観ている人に「強調」することになる。

2番目の動画では、もっとシンプルに、あちらこちらの道路上で繰り広げられる「小さな親切」が、これでもかと積み重ねられ、「人間って捨てたもんじゃないね」という製作者のメッセージが、視聴者にダイレクトに届けられている。

「感動」をあたえる動画は、小さな出来事の積み重ね(モンタージュ)で、観る人の心を意図的に誘導できるものなのである。ここで紹介した2本の動画は、それを異なる手法で実践した作品なのだ。

感動を生み出せば心に共感が残る

「感動」は生み出せるものだ。そして生み出された「感動」は、人の心の壁を壊す。人は、感動をもたらしてくれた対象者に、無意識に、親和性と呼ばれる共感を抱くものなのだ。企業のブランディングで特に重要なのが、人々の心に親和性を抱かせることなのである。いかに共感してもらうかに、どの企業も苦心しているが、そのひとつの回答が「感動」なのである。

この原理はWebマーケティングでも応用できる。感動をモチーフにしたコンテンツを作ることで、世界中に存在するノンカスタマーを、カスタマーにする可能性が生まれてくるだろう。

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