TOPSHOPのコンテンツマーケティングに学ぶ、グローバル企業のマーケティング戦略

コンテンツマーケティング

イギリス発のハイストリートファッションブランドTOPSHOP。現在イギリス国内に300店舗以上、世界で140店舗以上を展開するグローバル企業である。

ファッション性の高いアイテムを比較的手頃な価格で提供し人気となった。また、ケイト・モスとのコラボレーションラインを発表したりなど、常に話題を提供し続けている。

同社は現在、海外展開を加速させている。そして今夏、香港への進出を果たしたが、その事前の戦略として、中国の春節(旧正月)を祝うSNS用動画コンテンツを制作したのである。

今回はこのコンテンツをヒントに、グローバル企業が海外に進出する際のマーケティング戦略について考えていきたい。

ブランドイメージを損なわずにマーケットのカルチャーにアプローチ

まずはその動画を見てみよう。

この動画のタイトルは「The Lanterns – Happy Chinese New Year with love from Topshop」。春節で使われるチャイニーズ・ランタン(中国提灯)が空を舞うという、幻想的で印象深いコンテンツとなっている。中国では数字の5と8の縁起がいいことから、ビデオの長さは58秒にしたというこだわりようだ。

これは今年Weibo、Twitter、Facebook、Pinterest、YouYubeで公開され、YouTube動画の再生回数は41万回以上となっている。

このコンテンツの中では、ロンドンを象徴する建物であるビッグベンなどを登場させ、その上空に向かってランタンを舞わせることで、TOPSHOPという英国ブランドの伝統と中国文化が結び付くということを表現している。

注目すべきは、その「結び付け方」である。中国の「春節」からイメージするような「お祭り感」はここには一切ない。「春節」というと、赤や金色をふんだんに使い、龍や獅子が登場する…といったイメージがあるが、この動画にはそのような「賑やかさ」はない。
TOPSHOPの「カジュアルでありながら英国のトラッド感を失わず、品が感じられる」というブランドイメージを損なわずに、「異国の文化」をうまく取り入れている。

「春節」で使われる赤や金色の派手な装飾物は、伝統的にそのような色を取り入れてきた中国コミュニティーの「季節行事の現場」に登場させれば、「お祭り感」を演出する絶好の材料となる。ところが、これをそのままイギリス発のファッションブランドのコンテンツに取り入れようとすると、マーケットのカルチャーに媚びた「品のないもの」になってしまう可能性もあるのだ。

TOPSHOPはそれを避け、「異国の文化」をうまくアレンジして自社ブランドと結び付けたコンテンツを制作し、視聴者を魅了することに成功したと言えるだろう。

異国の文化をコンテンツに取り入れることの難しさ

しかし、このような試みはやはり冒険であるとも言える。「異国の文化」をプロモーションなどに取り入れるのは難しいものだ。

例えば、今回の動画についても、「春節に黒い服なんて、本気?」とか、「楽しいムードが全然感じられない」などといったコメントを寄せる視聴者もいる。自国の行事などに対して「固定観念」があると、それに合わない形のものを拒否したくなる心理が人にはあるのだ。

だが、先ほども述べたように、ただ単にマーケットのカルチャーをそのままの形で取り入れただけでは、「ブランディング」が成り立たない。極力批判されるのを避ける努力はしたいものだが、「自社ブランドのイメージ」は決して崩せない。その辺のバランスを取ることが大切だ。

今回の動画は批判的なコメントもあったものの、「グッド!」が167に対して「いまいち」が10という結果となっている。上手くバランスを取れたために、全体としては好評だったと言えるだろう。

難しいコンテンツ制作に敢えて挑戦した理由

このように、「異国の文化」をコンテンツに取り入れるのは難しいが、今回TOPSHOPが敢えてそれを行ったのには訳がある。

1つには、同社が現在アジア地域でのビジネス拡大を狙っているということが挙げられる。このコンテンツは香港のカスタマーだけに向けられたものではない。アジア全体のTOPSHOPファン及び、世界中の中国人観光客や中国コミュニティーに向けて制作されたものである。

2つ目の理由としては、昨年バーバリーから移籍したCMOの Justin Cooke氏の意向が挙げられる。彼は、「グローバル企業にとって、『何が顧客にとって重要なのか』を理解することは非常に重要である。このコンテンツは『中国の人々が集い、感謝の意をお互いに伝える』という特別な時間を祝うために制作した」と述べているのだ。

このことは、「これからのグローバル企業はただ単に『面白い』コンテンツや『美しい』コンテンツを作るだけでは、進出先マーケットでのシェアは獲得できない」ということを示唆している。やはり、そのマーケットに「一歩踏み込んだ」アプローチが必要となってくるだろう。

これまでもグローバル企業は、マーケットとなる国に合わせて自社サイトのデザインを変えるなど、「グローバル」戦略を行ってきた。しかし、これからのグローバルマーケティングでは、各国の「好みの色」などを調べてWEBをカスタマイズするなど表層的なローカライズ戦略を実装するだけでは足りないだろう。

海外で継続的な拡大戦略を行うには、各国マーケットのコミュニティーへの理解や共感を示す深層的なローカライズ戦略を実装する必要があり、そのための1つの手段として、このような情緒的な訴求力の強いブランデッドコンテンツを制作するのも有効だろう。

デジタルマーケティングにおいて常に最先端を行くTOPSHOP

TOPSHOPはこれまでも、常に最先端を行くデジタルマーケティングを展開してきた。Instagramを他社に先駆けて取り入れたり、WEBサイト上でランウェイを歩くモデルの着せ替えをできるようにしたりなど、新たな試みを見せてきたのである。

そして、オムニチャネル戦略の成功例としても紹介されるようになった。現在100か国以上にECチャネルがあり、今後リアル店舗の出店を増やすと共に、総合的な店舗ネットワークの拡充を狙っている。

今回の動画もそうしたデジタルマーケティングの一環である。これまで同様、「チャレンジ」と呼べる試みに敢えて挑戦している。グローバル企業にとって、このように常にフレッシュな面を見せることはマーケットシェアを拡大する上で重要である。競争が激化するグローバルマーケットでは、注目度が下がると、すぐ顧客が他社に目を向けてしまうからだ。

特に中国市場には今、H&M、ZARA、GAP、ユニクロ等の競合ブランドも進出し、マーケットの細分化も見られる。このような中で生き残るためには、やはり自社ブランドのイメージを浸透させつつ、マーケットの文化への理解も示すなどの難しいマーケティングにも取り組んでいかなければならないだろう。

TOPSHOPは、デジタル・ブランデッドコンテンツを強化するために、これからも季節の行事を利用していく予定だ。今後もその動向に注目していきたい。

参照元:
Topshop ramps up content marketing
TOPSHOP

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