東京オリンピック招致のサイトが海外で酷評されている訳

コンテンツマーケティング

米国のデジタルマーケティングの第一人者デイビッド・ミーマン・スコット。

彼のブログで、世界でもっとも酷いウェブサイトとして、東京オリンピック招致の英語サイトが紹介されてしまっている。彼は、なぜ世界最悪と評価しているのだろうか?本人の翻訳許可をもらったので、紹介したい。

世界最悪の英語ウェブサイト

2020東京招致の英語のサイトがひどい。あまりにひどいので、世界最悪の英語ウェブサイトとしてノミネートしたいと思う。さてどこからいこうか。とにかく全部ひどいからどこから始めてもいいけれど。まずは、コンテンツを見てみよう。

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東京2020のビジョンを見てみよう

「東京2020は、ダイナミックなイノベーションとグローバルなインスピレーションを共に実現します。日本人のユニークな価値観やグローバルなトレンドを発信する都市の躍動を試合の力と一体化します。次の世代のために、オリンピックの価値を強化し、磨きをかけるユニークな祝福の式典となるでしょう。そして、多くの世界の若者達に貢献し、夢と希望を与え、スポーツの利点を伝えるのです。」

【原文】
“Tokyo 2020 will bring together dynamic innovation and global inspiration. It will unite the power of the Games with the unique values of the Japanese people and the excitement of a city that sets global trends. It will be a unique celebration that will help reinforce and renew the Olympic Values for the new generation. And will contribute to more young people, worldwide, sharing the dreams, hopes and benefits of sport.”

一体これはどういう意味だ?

これほど意味不明な文章は、正直未だかつて読んだ事がない。陳腐で意味不明なフレーズの羅列だ。イノベーション、グローバル・インスピレーション、ユニークなバリューなどなど。これらは、英語のマーケティングの文章などで、あまりにも使われすぎて、言葉が安っぽくなりもはや何の意味も持たなくなっている言葉だ。

競合都市と入れ替えてみると、そのひどさが良くわかる。例えば、この文章の、「東京」という都市名を、ライバル都市である、「イスタンブール」とか、「マドリード」に入れ替えてみたらどうなるだろう?都市名を入れ替えても、文章の意味が変わらないとしたら、それはユニークなビジョンとは言えないのではないだろうか?

顧客像(バイヤーペルソナ)を考えているのか?

このサイトの問題点は他にも沢山ある。しかし、問題の本質は、顧客像を理解していないという事だ。

私は、東京に7年間住んでいたし妻も日本人だ。我々が見聞きしたことから感じるのは、日本企業は、海外進出する時に、日本向けのコンテンツをただ単純に外国語に翻訳すれば、海外に進出できると思い込んでいる。そのような例を沢山見てきた。そして、今回もまさに同じ問題が起きている。

これは本当に残念なことだ。なぜなら、東京はオリンピックの開催国として素晴らしい都市であるに違いないからだ。しかし、このようなイマイチなサイトを作っているようでは、開催国に選ばれる可能性は低いだろうと思う。

ターゲット顧客を理解していない事の例を一つあげてみよう。このサイトでは、日本で人気のアニメキャラクター「ドラえもん」が使われている。このサイトを作った人は、世界中の誰もがアニメ好きだと勘違いしているらしい。11才の子供ならともかく、英語圏の大人全員がアニメ好きではない。

このサイトのバイヤーペルソナは誰だろうか?それは、2020年のオリンピックの開催都市を決定する国際オリンピック委員会の115人の委員ではないのだろうか?少なくとも、このサイトは、彼らに訴求するようには作られていない。

組織がグローバル化するときに気をつけるべき事

このサイトを批判するのは簡単だ。しかし、これは誰にでも起こりうる事だ。あなたが海外の市場に参入しようとした時に、国内向けのコンテンツを単純に翻訳して出したとしたら、何が起きるだろうか?今回のオリンピック招致サイトと同じ事が起き、現地の人には理解されないサイトが出来上がるのではないだろうか?

本当にグローバル化するためには、ローカルのバイヤーペルソナを理解し、そのペルソナに向けたコンテンツを作る必要がある。そのためには、ローカルのコンテンツ制作者を確保し、コンテンツをその地に合わせてカスタマイズする事が必要だ。

オリンピック開催都市の投票は、2013年9月7日に実施される。まだ4ヶ月先だ。時間はあるので、このサイトを修正して、東京が選ばれるチャンスを増やしてほしいと思う。

まとめ

この文章を読んでどう思っただろうか?みなさん、かなりショックを受けたのではないだろうか?

デービット・ミーマン・スコットは、米国のデジタルマーケティングの第一人者だ。”The New Rules of Marketing and PR”(邦題:マーケティングとPRの実践ネット戦略)、”Marketing Lessons from the Grateful Dead”(邦題:グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ)、”Real-time Marketing and PR”(邦題:リアルタイム・マーケティング)など、時代を先読みする名著を出版している人だ。

彼は、日本が嫌いだからこのような文章を書いている訳ではない。むしろ、日本経験が長く、日本びいきだと言える。そのような日本びいきの彼があえて苦言を呈しているという事実を、僕らは彼の指摘を日本人として重く受け止めるべきだと思う。

コミュニケーションを軽視する日本企業

僕自身、日本企業で働いてきた経験から、彼の言う通り、「日本語コンテンツを外国語化するだけ」という事が数多く行われている事を目にしてきた。これはコミュニケーション軽視以外の何者でもないだろう。言葉は相手に伝えてこそ意味がある。ただ、英語に翻訳すればいいという事ではないのだ。

文中に引用されている英語の文章は、私も、原文を読んでみたが、正直これでは伝わらないだろうなと思った。と同時に、日本語を英語に翻訳したら、こういう英語になるだろうなという事も容易に想像出来た。

日本語と英語は全くの別物

問題の本質の一つは、日本語と英語の言葉の性質の違いである。日本語はハイコンテクスト言語で、少ない単語や熟語で容易に意味を伝える事が出来る。しかし、英語は、ローコンテクスト言語で、日本語よりも言葉を費やす必要があるし、具体的に説明する必要がある。言葉の性質が違うので、簡単に翻訳しただけだと、本当に酷い英語になる。

コピーライターを雇うべき

さらに言えば、今回のオリンピック招致のウェブサイトを英語化する時には、日本語の得意な英語ネイティブにサイトを翻訳してもらう必要があった。いや、もっというと、普通の英語ネイティブでは十分ではなく、バイヤー・ペルソナを理解し、相手に届く言葉でメッセージを伝えられるコピーライターを用意するべきだったのだろう。

グローバル化の落とし穴

我々がここで学ぶべき重要な学びは、我々日本人がグローバル化していく上で陥りがちな落とし穴だ。グローバル化とは、全世界に同じコンテンツを提供する事ではない。世界のそれぞれの地域やペルソナに合わせてコンテンツをローカライズしていく事だ。今回は、ローカライズという観点、そして、ペルソナに基づくマーケティングという観点が抜けていたために起きた問題だと言えるだろう。

みなさんは、どう思うだろうか?僕は、今回のデービットの指摘を愛のある苦言として受け止めるべきと思うが、どうだろうか?

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記事執筆:(株)イノーバ。イノーバでは、コンテンツマーケティングのノウハウを詰め込んだ無料のebookや事例集をご提供しています。ダウンロードはこちらからどうぞ→https://innova-jp.com/library/

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