ありふれた情報でも興味を持って受け入れてもらう方法―「世界最小のTESCO」って何だ?

デジタルマーケティング

自社のニュースは、できることなら大々的に告知したい。しかし、そのネタが世間的にはあまりにありふれていて、困った経験はないだろうか。

例えば、自社で新しい技術が開発されたり、これまでにない商品が生まれたりした場合は、それだけで十分に話題になる。場合によってはマスコミに取り上げられるなど、情報が拡散されるのにそれほど苦労はないだろう。

しかし、それがごくありふれたニュースだったらどうだろうか。自分たちにとっては大切なニュースでも、読者にとって新鮮さや驚きがない情報は話題になりにくい。こうしたニュースを効果的に拡散する方法はあるのか、考えてみたい。

バス停に突然現れた赤いカバーの正体は?

こうした課題を抱えていたのは、イギリスに本拠地を置く大手スーパーマーケットTESCOも同じだ。日本でも大型店舗を展開していたこともあるので、実際に買い物をした人も多いのではないだろうか。

同社は、自分たちが告知したい「ある情報」を拡散するために、ハンガリーの首都ブダペストで以下のようなキャンペーンを行った。

キャンペーンはまず、バス停など人通りの多い場所に、赤いカバーで覆われた看板を設置するところから始められた。看板の中身は覆われていて見えない。しかし、その代わりに赤いカバーには「世界最小のTESCOがここにオープンします!」という文字が書かれている。

世界最小のTESCO、オープン!

このままでは何も分からず、看板の前を通り過ぎる人も不思議に思うばかり。何日か経ってカバーが取り外されると、そこには「世界一小さなTESCO」の文字とともに、自動ドアが登場する。看板の中央に設置された小さな自動ドアは、まるで本物の店舗の入口であるかのように、実際に人が近付くとドアが開く仕掛けになっている。そして、そのドアの中には小さなスマートフォンが置かれているのだ。

ここまで言えば、勘のいい人はもうお気付きだろう。

実はこのキャンペーン、ネットショッピングできる専用のアプリをローンチしたという告知のために行われたものだ。アプリをダウンロードすれば、自分のスマートフォンがTESCOの店舗に早変わりするというメッセージ。確かに、手のひらに収まる「世界最小のTESCO」と言えるだろう。

キャンペーンの様子は以下の動画に収められている。ぜひご確認いただきたい。

The World’s smallest Tesco ? Citylight

今さらと思われないために、興味を引くための仕掛けを

このキャンペーンが行われたのは2014年8月のこと。スマートフォンの黎明期(れいめいき)ならいざ知らず、モバイルシフトが進んでいる今となっては、驚きの少ないニュースであることは否定できない。スマートフォンアプリをローンチしている小売店はほかにいくらでもあるし、アプリから直接買い物ができることも珍しくはない。

もしもTESCOが、このニュースを告知するのに「スマートフォン用アプリができました!」という、何のひねりもない広告を打ち出していたとしたら、顧客に「何を今さら……」と思われていただろう。イメージダウンになっていた可能性すらある。

今回のキャンペーンが面白いのは、アプリを「世界最小のTESCO」と位置付け、看板に小さな自動ドアを設置するなど、徹底して興味を引き起こす仕掛けを施したところにある。世界最小と言われれば、誰でも少しは気になるし、自分が看板の前に立ったときに自動ドアが開けば「何が入っているんだろう?」と思ってしまうだろう。

見る人の「これは何だ?」という興味をここまで引き出すことができれば、たとえニュースがありふれたものでも、「何を今さら……」とは思われにくい。人々の反応は「あ、なるほどね」という、どちらかと言えば好意的なものになるのではないだろうか。

ニュースは常に話題性があるとは限らない

自分たちが伝えたいニュースは、常に話題性のあるものばかりとは限らない。中には今回の事例のような「重要だけど面白みに欠ける」ものもあるかもしれない。しかし、工夫次第でいくらでも興味を引くことができるのは紹介した通りだ。

「ネタが面白くないから仕方ないよね」とあきらめるのではなく、どう伝えれば面白く見えるのかを常に突き詰めるようにしたい。解決策は必ず見つかるだろう。

参考元:?The world’s smallest Tesco?The World’s smallest Tesco ? Citylight

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