今、CMOを悩ませる「マーケティング業界の変化」とは?

デジタルマーケティング

2年間。

あなたは、短く感じるだろうか? 長く感じるだろうか?

こうやって年末が押し迫ると、人々は、急に「時間」に対して敏感になる。

つまり、人間はなんらかの区切りを与えられないと、時間というものを短いスケールでしか考えず、無頓着になりがちだが、そこに「終わり」が見え始めると「焦燥感」を感じ、時間の貴重さに思いを馳せる(はせる)ものだ。

以前、こちらの記事でもお伝えしたが、雑誌『FORBES』によると、CMO(Chief Marketing Officer=最高マーケティング責任者)の平均在籍期間は、たった2年。思わず「たった」という言葉が漏れてしまうほど、2年という期間のなかで、彼らに求められているものは大きい。

今回は、そんなCMOの苦悩から、「マーケティング業界の変化とその対策」について考えてみたい。

CMOたちは、ローリングストーンズだ!?

かの有名なロックバンドのことではない。

ヒントになるのは、”A rolling stone gathers no moss.”(転がる石に苔むさず)という、ことわざのほうである。

この“ことわざ”には、2つの異なる意味があることをご存知だろうか?

主にイギリスでは、「何事も腰を落ち着けて当たらないと、身に付くものがない(結果が得られない)」という戒めとして使われ、主にアメリカでは、「常に活動している人は、時代に遅れることがない」という変化への柔軟さを尊ぶ意味で使われている。

つまり、この2つの要素に“板ばさみ”されているポジションこそが、CMOなのだ。

CMOたちは、時代に合った“目新しいもの”へと多様な変化を求められながらも、不可逆で絶対的な“時間”というものから常に制限されている。

さらに、彼らの抱える苦悩の元凶は、この一見矛盾した結果をもたらす、2つの要素の整合性をいかに図り、“数字(結果)”を出していくかにあるのだ。

CMOを悩ませる、4つの変化

では、具体的に、CMOたちを悩ませる変化とその対策を見ていこう。

変化その1:CMOの職務内容

業界では、テクノロジー、マーケティング、セールスといった分野が、これまで以上に複雑に絡み合っている。そのため、CMOが加担するべき職務内容も広く変化し、その全体像が把握しづらくなっているのだ。

そんな背景があるからこそ、「CMOの焦点をどこに合わせるのか」を明確に定義することが必要である。

「市場のなかで、どのような姿に映し出されたいのか」、その社内ビジョンと一致させたマーケティングを推進させられるかどうかが、ブランドの成否を分かつだろう。

変化その2:現代マーケティングの定義

そもそも「現代マーケティングの定義」とは何か? 近年、激変を繰り返す市場のなか、それを知ること自体が困難である。

また、その変化に対応するため、エージェンシーをたびたび変更することは、必ずしもプラスに働かない。問題の多くは、広告クリエイティブを刷新すべきかどうかではなく、エージェンシーが広告の「効果測定」をうまくできていないことにあるのだ。

そして、CMO自身も「効果を数値化できない」という同じ問題を抱えているのが事実である。

その結果が、「エージェンシーの契約年数、CMOの在籍年数のいずれも短くなった」というデータであることも否定できないだろう。

なぜなら企業は、“クリエイティブ”という抽象的な要素だけを頼りに、事業を継続していくことはできない。そこにCMOが、CEOを始めとした社内の人々を納得させる「数値」を示せてこそ、持続性が生まれるのだ。

変化その3:ユーザーにリーチしづらい

今や、ユーザーはマーケターと同等に、いや、場合によってはそれ以上に商品について研究している。

製品レビュー、Facebookのフィードバック、はたまた競合他社のWebサイト……。これらオンライン情報の普及が、ユーザー側のリサーチを容易にさせたのだ。

もはや、今まで戦略の基礎にされてきた「最新のユーザー視点」というものがどこにあるのか、わからない時代になったと言える。

では、どう対処していくべきか。

「飼っている犬のドッグフードを自分で食べてみろ」(“eat your own dog food”)という言葉が、シリコンバレーにはあるそうだ。「人に使ってもらう前に、自分で使ってみろ」、つまり「自分が欲しいものを作れ」という意味である。

その言葉にならって、CMOたちは、「顧客がどんなものを求めているのか」という“ユーザーファースト”から、「自分ならどんなものが欲しいか」という“ファーストユーザー”へと、視点をシフトさせる必要がありそうだ。

変化その4:クリエイティビティ VS データ分析(数値)の闘い

アメリカの食品・飲料会社モンデリーズ・インターナショナルのCMOであるダナ・アンダーソンは、ある2つの要素の“バランス”について質問されたときに、こう答えたという。

「サイズのぴったり合ったドレスを作ることはできる。けれど、それはすなわち、そのドレスが美しいということではない」

この言葉に比喩されるのは、“クリエイティビティ”と“データ分析”との闘いだ。

前述した「変化その2」の通り、一昔前のCMOとは比べ物にならないほど、彼らには「データ分析(数値化)の重要性」が叫ばれている。

だが、このダナ・アンダーソンの言葉は、「美しいドレス(クリエイティビティ)は、サイズ(データ分析)調整していくことができる」が、「サイズ(データ分析)がぴったり合っていても、美しいドレス(クリエイティビティ)に仕立てるのは難しい」ということを示しているのだ。

データ分析から計測される“数値”は重要だが、あくまでも、優れたクリエイティビティがもたらすブランドイメージや商品に従属すべきものなのである。

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だからこそ、今後、業界がどんなに大きな変化を遂げようとも、CMOに求められるものを挙げるとすれば……。

データ分析という盾を持ちながら、なおも強く“クリエイティビティという采配(さいはい)”を振ることだ。

いつの時代も、ブランドを最も理解するクリエイティビティこそが、影響力のある”ストーリー”を紡ぎ出し、その原動力として、君臨し続けるだろう。

参考元:?5 Industry Changes Keeping CMOs Up at Night?What attribution means for CMO, agency tenure?There Are No Awards For Data People In A Creative Agency?The Chief Marketing Officer?ビジネス文章力研究所?『企業文化のe改革』 著者: Rosabeth Moss Kanter

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