オウンドメディア事例:ターゲットとメルセデス・ベンツ

デジタルマーケティング
消費者との絆(エンゲージメント)を深めるという点から、中立性と透明性を担保した情報の提供は、ブランドにとって、重要な課題となっている。
米国の大手ディスカウントストア、Target社と自動車メーカー、メルセデス・ベンツ社のオウンドメディアから「魅せるコンテンツ」について考えてみよう。
目次
Target社のオンラインマガジン「A Bullseye View」
Target社は、ウォルマートに次いで米国のディスカウント業界2位の企業だ。もともとTarget社はデパートから出発したという経歴から、ディスカウントストアでもウォルマートと異なりファッショナブルなイメージを持つ。
同社のオンラインマガジン「A Bullseye View」のコンセプトは、ジャーナリズムのモットーである「事実を見せろ、語るな」をもじり、「事実を見せろ、売るな」である。つまり、ハードな売り込みをしないということだ。
同社のPR&ソーシャルメディアシニアグループマネージャー、エリック・ハウスマン氏は、「最新のコレクションを用いて、インテリアや生活を楽しむためのヒントのような記事は投稿するが、特定の製品について書くことはない」と述べている。
このような中立的なサイトを自社で運営するには、先ほど述べたような編集方針、もしくは編集長の存在が重要になる。また、著名なファッションブロガー16名と契約し、自身たちのブログでTargetの商品を取り上げてもらっている。
また、画像アプリPinterestのトップピナー(ピナーとはPinterestで画像を貼りつける人)と組み、パーティグッズの企画を行うなど、「A Bullseye View」単体としてではなく、ソーシャルに拡散する機能も組み入れ、売り上げにつながる設計を行っている。
メルセデス・ベンツ社の「mb! by Mercedes-Benz」
メルセデス・ベンツのオウンドメディア「mb! by Mercedes Benz」は、直接的な車関連の記事は少ない。主にファッションや最新の音楽(無料ダウンロードできる)、小説などのカルチャーのカテゴリー、アーティストやクリエーターへのインタビュー記事で構成されており、ぱっと見た目には、自動車メーカーのサイトとは思えない。
また、米国で最近公開された新型「GLA」の2015年モデルのキャンペーンでは、写真共有SNSのInstagramを活用し、「GLA」の着せ替えプロモーションを実施している。Instagramの「GLA」公式アカウント上で、車のオプションを選択すると、自分好みにカスタマイズした車体に仕上げることができる。完成した画像はSNSに公開し、シェアすることも可能だ。
消費者視点のコンテンツを作り、消費者とのエンゲージメントを深めている好例と言えるだろう。
なぜ情報に中立性が求められる?
『アドボカシー・マーケティング』の著者であるグレン・アーバン氏によれば、「企業が真実を歪めても、顧客はそれを見抜いてしまう」と述べている。そのため、あらゆる情報を隠さず、消費者に提供することの重要性を指摘している。この情報には、自社のみならず他社の情報も含んでいる。
つまり、企業は、中立性、透明性を担保し、消費者に偏りのない客観的な情報を提供しなければならない。それによって、消費者は自分たちを支援する企業に信頼を寄せる。そこから長期的なロイヤリティが生まれ、エンゲージメントが強化されるのだ。
エンゲージメントは購入意向に貢献する
では、「エンゲージメントを強化すること」が、ブランドにどのような影響を与えるのだろうか? 電通の「ソーシャルメディア利用実態調査2014調査」では、以下の点が挙げられている。
1.企業/ブランドと顧客がデジタルで直接つながることで、ブランドへの親しみや興味関心、好意度といった態度形成に寄与する。?2.企業/ブランドの自社サイトやSNSアカウントの登録者は、ブランドの購入意向や購入頻度が高い。
また、ブランドと直接つながった顧客層は、一般層に比べて高い品質イメージを持つ傾向がある。「商品に込めたブランドの思想・ストーリーの伝達」「自分の生活を楽しく、幸せにしてくれる提案」をブランドが行っていると認識している顧客層ほど、購入意向が高い。エンゲージメントは、購入意向に貢献すると言ってよいだろう。
まとめ・スタイルにあった表現手法を取り入れる
消費者が求めるのは、商品・サービス自体そのものではなく、彼らが理想とし、満足するような、ライフスタイルや価値観の具現化だろう。あくまでも、商品・サービスはその目的を果たす手段でしかない。それゆえ、最終的に消費者にもたらすメリットを、楽しさとともに想起させることが重要だ。
今回、ディスカウント小売りチェーンと高級自動車メーカーという2つの事例を取り上げたが、どちらもターゲットとする消費者のライフスタイルを支援する記事の提供により、「魅せるコンテンツ」を作っている。また、自社のサイトだけでなく、InstagramなどのSNSや画像と組み合わせ、オープンな設計にしている。
コンテンツマーケティングの成功例として知っておきたい。
参考記事:?今さら聞けないオウンドメディアの意味とは?
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