車の購入も、iPadで  今話題の「タブレットショッパー」とは

EC(Eコマース)

東北楽天ゴールデンイーグルスが球団創設9年目にして初の日本一に輝いた。 最後を締めた田中将大投手の投球とともに、歓喜に沸いた読者も多かったのではないだろうか。

そして、楽天の優勝決定と同時に、球団オーナーである「株式会社楽天」が運営するオンラインショッピングモール「楽天市場」では「日本一大セール」と銘打った優勝セールが盛大に開催されている。

星野仙一監督の背番号77にちなんだ「77%OFF」商品の中には、新車の国産車や「ロレックス」などの高級時計も並んでいる。

そして、「楽天市場」に出店するショップを含め、いまECビジネス界が熱い視線を投げかけているのがiPadをはじめとするタブレット端末から買い物をするユーザー=「タブレットショッパー」だ。

彼らはPCやスマートフォンからアクセスするユーザーよりも高額な商品を、しかも高い頻度で購入するというのだ。

リビングのソファから、ワンタップでクルマを買える時代。

今日は「タブレットショッパー」の実態についてご紹介しよう。

急増するタブレット

2010年、AppleがiPadによって切り開いたタブレット市場。 その後の競合の参入から約3年が経ち、市場は今まさに百花繚乱といった様相だ。

都市部では日常的にもタブレットで読み物をしている人や、タブレットを片手に商談をしているビジネスマンなどがよく見かけられるようになったように思う。

米国のシンクタンクPew Research Centerが米国に住む16歳以上の男女6,224人を対象に行った調査によると、現在のタブレットの普及率は35%だったという。ちなみにスマートフォンの普及率は55%とのことだ。

続いてタブレット所有者のデモグラフィックについて見てみよう。

米国のタブレット所有者の特徴は

1.女性が多い 2.アジア系アメリカ人が多い 3.16歳〜17歳の高校生の46%がタブレットを所有 4.所有率は学歴に比例 5.所有率は所得に比例 6.郊外居住者>都市居住者>地方居住者

この全てが日本でも当てはまるとは考えにくいが、”4”や”5”はうなずける結果だろう。 "1.女性が多い”というのは、こういった電子機器では珍しいように感じるが、PCに比べとっつきやすいということかもしれない。

ちなみに、総務省が作成した「情報通信白書2013年版」によれば、日本のタブレット普及率は12.3%だ。

次に、タブレットユーザーの購買行動を数字で見てみたい。

「タブレットショッパー」の誕生

ECサイトにとってのタブレットユーザーの重要性は、2011年にAdobe社が実施した大規模調査の調査レポート"The Impact of Tablet Visitors on Retail Websites”(2012年初頭に発表)でも述べられている。

同調査によれば、2011年の1年間でタブレットによるWebアクセスは4倍に増加し、タブレットユーザーのオンラインショッピング時における平均消費額は対スマートフォンユーザーで50%、対PCユーザーで20%も多かったという。

Adobe社の調査から約2年を経ても、タブレットユーザーが「買い物好き」である傾向に変わりはないようだ。

comScore Data Mineに今年8月に掲載された記事によると、2013年の上半期にモバイル端末(スマートフォン/タブレット)上でなされた消費活動の総額は100億6千万ドル。そのうちタブレットからのものは37%。

しかし、ユーザー数ベースで、タブレットは未だスマートフォンの半数にも満たない。 ユーザー単価に直すと、タブレットユーザーの平均消費額はスマートフォンユーザーの2割増し、といったところのようだ。

タブレットショッパー達は何を購入しているのだろうか?

下記は米国AOLが行った消費者調査による「タブレットを使ってよく買うアイテムリスト」だ。

1.電化製品(53%) 2.書籍(41%) 3.おもちゃ(39%) 4.衣服(27%) 5.音楽(33%)

では、いったいなぜタブレットショッパーはよく買い物をするのだろうか?

タブレットでのショッピング=「バーチャルウィンドウショッピング」

タブレットユーザーに対するAOLの調査の中で興味深い結果がある。

買い物好きと言われる彼らだが、「お目当ての商品などをもともと買うつもりで」購入にいたった割合はわずか13%に過ぎないという。

多くのユーザーは特定の商品を探して購入しているのではなく「なにかいい物はないかな?と思いながらサイトを見て回っているうちに突発的に」買い物をしているというのだ。

また、彼らはタブレットを使い始めてから以前より「より多くのお金を(20%)」、「より頻繁に(26%)」、「より衝動的に(21%)」、オンラインショッピングに費やすようになったという。

この結果は、タブレットによるショッピングが明確な目的を持った買い物ではなくいわゆる「休日のウィンドウショッピング」に近いものであることを暗示している。

これを裏付ける別の調査結果がある。

多くのタブレットショッパーは、オンラインショッピング時をする時に何か別の事を同時に行っているという。

つまり「ながら買い物」だ。

そして、彼らがタブレットでショッピングを楽しむ場所は「自宅のソファー(61%)」であり「自宅のベッド(20%)」だ。 PCで行われるオンラインショッピングの40%が書斎からという結果と非常に対照的である。

また、タブレットショッパーの多くが割引クーポンやキャンペーンなどの利用といった賢い買い物を好んでいるという結果にも注目したい。

特定の目的やお目当ての商品を持たず、リラックスしたシチュエーションでタブレットからWebサイトを見て回り、宝探しのように期間限定のクーポンやキャンペーンを探し出し、なにか良い商品に出会ったら衝動的に買い物をする。。

彼らはそんな「バーチャルウィンドウショッピング」そのものを楽しんでいるのだ。

タブレットショッパーを惹き付けるには?

商品の購入ではなく、ショッピングという行為自体を楽しみとするタブレットショッパー。 そんな彼らを惹き付けるためには、どんなECサイトでなければならないのだろうか?

一つには、「好奇心をくすぐる仕掛け」の用意だ。

商品についての詳細やキャンペーン情報などを、タブレットで映える高画質写真や動画、インタラクティブな仕掛けといったリッチコンテンツで提供しよう。

彼らは、あたかも路上から見えるショーケースの商品の写真を撮るかのように、あなたのサイトの商品画像をクリップしてくれるかもしれない。

また、ソーシャルプラグインを設置して、彼らがオシャレなアイテムやお得なサービスを見つけた時の「友達に教えたい」という欲求にも応えてあげよう。

そして、特定の目的なく買い物をする彼らに対しては、集客面でもこれまでと違った考え方の導入が必要かもしれない。

従来のROIやコンバージョン率という評価基準に加えて、タブレットショッパー達が「ワクワクしながらウィンドウショッピングを楽しめるインターフェースかどうか」というユーザーエクスペリエンスデザインの要素がより重要になっていくだろう。

まとめ

いかがだっただろうか? オンラインショッピングはもはや「便利で、早い」だけの代替的手段ではなく、「楽しい」を提供する段階にあると言える。

そこで必要となるのは、いかに道行く人の足をとめ、ワクワクした気持ちで店に入ってもらうか、という観点だ。

ECサイト運営者も、たまにはディスプレイの前を離れ、若者で賑わう繁華街で「ウィンドウショッピング」をしてみてはいかがだろうか?

意外な発見があるかもしれない。

<参考> Tablet and e-reader ownership The Impact of Tablet Visitors on Retail Websites Tablets Drive About 20% More Average Spending Than Smartphones From Browsing to Buying: The Tablet Shopper One-third of all Americans now own a tablet, and one-fourth own ebook readers Tablet Shoppers Don’t Shy Away From Making Purchases Who is the tablet shopper? 総務省:情報通信白書

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