コンテンツマーケティングにストーリーを取り入れた事例紹介

コンテンツマーケティング

心の琴線に触れる物語(ストーリー)は、人の共感を呼ぶ。その共感は拡散され、現実をドラマチックに変えてしまうことがある。物語にはそれだけのチカラがあるのだ。

コンテンツマーケティングで「成功するコンテンツ」を考えたとき、「共感」は外すことのできないキーワードになる。だが、どうやって共感を呼ぶコンテンツを作るかで多くの人が悩んでいるのも現実である。

……いや、悩む必要はない。物語のチカラを活用すればいいだけだ。

というわけで今回は、コンテンツに「物語」を導入して、「成功するコンテンツ」にする方法を提案してみたい。まずは、多くの人の、心の琴線に触れた二つの物語を紹介することから始めよう。ちなみに、どちらも実話である。

コーヒーショップで起きた奇跡の循環

アメリカ、サウスカロライナ州のブラフトンという町にある、小さなコーヒーショップにまつわる物語は、まさに「物語の持つチカラ」を象徴したものだ。

「Corner Perk」は、地元の人から愛されているが、特別な何かがあるわけでもない、ごく普通のコーヒーショップである。

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出典:Corner Perk

この店に、ある日、一人の女性客がやってきた。コーヒーを飲みながら、しばしのゆったりとした時間を過ごしたあと、女性客は店員を呼び、100ドル札を渡してこう言った。

「このお金がなくなるまで、お店を訪れる客にコーヒーをご馳走したい。だから、お金を預かってほしい」

店員は女性客の提案に驚いた。驚きながらも、女性が真剣なことを確かめると、その提案を受け入れたのだった。

それから、店に来る客からコーヒー代は取らず、その代金は女性客が置いていった100ドルのなかから支払うようにした。事情を知らない客は驚いて言う。「なぜコーヒー代を受け取らないのですか?」と。そのたびに店員は、女性客の提案を説明していった。

この話は町中に広まった。噂を聞きつけ、多くの人がコーヒーショップを訪れるようになる。そして、そのなかからさらにこの女性客と同じように、これから来店する人のためにと、お金を置いていく客が何人も現れるようになった。

さらに噂は拡散し、テレビや雑誌で取り上げられるようになる。すると、今度は全米中から客が訪れるようになり、“他人のためのコーヒー代”を置いていく人が引きも切らぬようになったのである。

ホームレスの少年のアメリカンドリーム

2009年、NFL(National Football League)のドラフト会議の席上、一人の大柄な黒人青年が、中年の白人夫婦と抱き合って涙を流しているシーンが話題になった。

涙を流していた巨漢の青年の名前は、マイケル・オアー。その日に行われたドラフトで、人気チームのボルチモア・レイブンズから1巡目指名(全体で23番目の指名)を受けたフットボール選手である。

マイケル・オアーは、1986年にテネシー州メンフィスの最も貧しい地区で誕生した。生まれてから一度も父親には会ったことがなく、母はコカイン中毒で育児放棄という最悪な家庭環境だったため、学校にも満足に通えず、ホームレス状態にまでなっていた。

ある感謝祭の夜。オアーは帰る場所もなく、雪の降るなかをTシャツと短パン姿で歩いていた。そこをたまたま通りかかった、裕福な白人夫妻がいた。

夫妻は、寒さに震えているみすぼらしい身なりの少年に同情し、彼を自宅に連れ帰り、一夜の宿を提供した。こうして、マイケル・オアーは、暖かな家と教育環境、そして家族を手に入れた。少年の身の上を知った夫妻が、彼を養子にして育てることにしたからである。

マイケル・オアーが生まれて初めて得た家庭の安らぎは、彼が持っていたアスリートとしての才能を開花させることになった。ハイスクールのフットボールチームに加入後、ぐんぐんと頭角を現し、養父母の母校であるミシシッピー大学に進学する。

2009年、全米中(いや、世界中のフットボールファン)が注目するNFLドラフト会議当日、マイケル・オアーの名前が23番目に呼ばれた。ドラフト1順目指名だ。登壇したマイケル・オアーは、同席していた養父母に感謝のメッセージを読み上げる。そして、冒頭のシーンにつながるのであった。

マイケル・オアーのこの「物語」は、多くの人の注目を集めた。マスコミは、物語性のある人間が好きだ。アメリカばかりでなく、日本をはじめとする世界中のスポーツジャーナリストが彼のサクセスストーリーに注目し、それぞれの国のスポーツ・マガジンで紹介された(日本では『Number』という雑誌で紹介されている)。やがて、マイケル・オアーの物語はハリウッドで映画化されるに至るのである。

映画「しあわせの隠れ場所」予告編

 

 

 

「物語」には構造がある:心の琴線に触れる物語とは?

田舎町のコーヒーショップで起こった小さな奇跡と、ホームレスの少年の運命を変えた奇跡。一見、関連性のない別々の物語のようにみえるが、実は、この二つの物語には共通する原理(法則)が働いている。それは、「人の琴線に触れる物語の普遍的な構造」である。

人の心をつかむ(=琴線に触れる)物語には法則がある。これを指摘したのが、神話学者であるジョセフ・キャンベルであった。彼の名前は知らなくても、ジョージ・ルーカスの名前は知っているだろう。映画監督でプロデューサーのジョージ・ルーカスだ。

ジョージ・ルーカスは、映画「スターウォーズ」シリーズを作る際、ジョセフ・キャンベルから個人教授を受け、神話の構造に基づいてシリーズの脚本を執筆した。ジョセフ・キャンベルは、世界中の神話を収集し、そこから共通する原理を見つけ出して「物語の基本的な構造」を明らかにした人物なのである。

彼によると、古今東西の神話には、ある一つのルーツがあるという。それを「原質神話」と名付けた。その構造は、「出立」、「通過儀礼」、「帰還」の三層から成り立っており、人の心をつかむ物語は必ずこの構造になっている。そう解き明かしたのである。

そして、それをさらに単純化すれば、「足りないもの、失ったものを回復させる過程」=「欠如の回復」こそが、物語の骨格になるとしている。

ここで紹介した二つの物語を見てみると、まさにどちらも「欠如の回復」の構造になっていることがわかる。

「コーヒーショップの小さな奇跡」は、一人の女性客が見知らぬ他人にコーヒーをふるまいたいという「親切心」から始まった物語だ。本来なら誰の心にもある、眠っていた「親切心」が一人の女性客の行動で目覚め、多くの人がそれに倣ったことで作り出された物語だ。つまり、眠っていたものが目覚め、本来の力を取り戻すという形の、「欠如の回復」である。

「ホームレスの少年の奇跡」は、もっとわかりやすい。家庭も教育も温かい家族もなかった少年が、たまたま彼の境遇を知った夫妻の愛情で、家族と才能を手に入れる物語だ。まさに、「欠如の回復」である。

このように、心の琴線に触れる物語には、共通する原理がある。この原理をコンテンツに組み込めば、多くの人の共感を呼ぶコンテンツが作れるのではないか?

物語は強力なコンテンツツールだ!

コンテンツ・マーケターであるScott Aughtmon氏は、自身のブログ記事「3 Ways to Tap Into the Most Powerful Content Tool Ever Created」のなかで、こう語っている。

「物語は、非常に重要で強力なコンテンツツールになる」

その理由として、以下の3点を挙げている。

  • 物語は人の注意を喚起する
  • 物語の文脈がコンテンツの内容にインパクトを与えて魅力的にする
  • 物語をコンテンツに組み込むことで人の記憶に残りやすくなる

つまり、「注目」させ、「インパクト」を与え、「記憶」に残すという、コンテンツマーケティングで必要な三つの要素を、物語はすべて兼ね備えているのだ。

そして、コンテンツに盛り込むべき物語は、「欠如の回復」に基づいている必要がある。

例えば、以下のような案はいかがだろう。

  • 「なぜあなたの会社でブランディングができないのか?」という疑問の提出から始まり(欠如)、実際にブランディングに成功した「物語」を提出することで、疑問の氷解になる(欠如の回復)ようなコンテンツ
  • 「我が社は現在こういう問題点を抱えている」(欠如)という告白から始まり、その問題点を解決するためにどういう取り組みをし、どうやって難問を解決しようとしたのか(欠如の回復)という、自社のストーリーをつづる

他にも、応用すればいろいろなやり方が考えられる。

おわりに

コンテンツに物語を組み込む方法を長々と説明してきた。ここまで読まれた方は、この記事のなかで紹介した二つの物語を記憶に残すだろう。そして、そこから連想してこの記事の内容も思い出すに違いない。コンテンツに物語を組み込む利点を、この記事が証明しているはずだ。

ぜひ、物語を積極的にコンテンツに組み込んでみてほしい!

参考元:
Reel People: Quinton Aaron is Michael Oher
映画「しあわせの隠れ場所」予告編
People Are Awesome: The South Carolina Coffee Shop Where Everyone Pays for Everyone Else's Drinks
3 Ways to Tap Into the Most Powerful Content Tool Ever Created

「デビアス」から学ぶマーケティング戦略
商品のストーリーこそが極上のコンテンツになる