小さなソフトウェア企業でも出来るマーケティング・コミュニケーションのやりかた

コンテンツマーケティング

sonicgarden_1.jpg今回は、私が仲良くさせて頂いているソニックガーデンの倉貫さんに、ブログの記事を寄稿頂いた。倉貫さんは、ブログを使ったマーケティングに積極的に取り組んでいて、今や、営業や広告宣伝を全くせずに、ブログだけで新規の取引を獲得している。まさにコンテンツ・マーケティングの成功事例だ。

倉貫さんのブログは、強いメッセージ性を持っているのが特徴だ。このような強いメッセージ性を持つブログを、英語では「ソート・リーダーシップ」(Thought Leadership )と呼んでいる。

ソート・リーダーシップとは、文字通り、考え方、アイディアで、ビジネスのリーダーシップを取る事だ。この良い実践例は、Appleのスティーブ・ジョブズだろう。彼の持つデザインへの強いこだわりは、顧客を魅了し、競合他社を一切寄せ付けないのだ。 倉貫さんは、このソート・リーダーシップをシステム開発や会社経営という分野でブログを書く事で実践している。彼のブログは、今までのシステム開発、従来型のサラリーマン型のワークスタイルへ疑問を投げかける。そして、あるべき未来を描き、それを実践していく。まさに、ソート・リーダーシップそのものである。

今回は、倉貫さんが自ら、ソート・リーダーシップを実践する中で学んだ事をシェア頂く。

彼自身の会社も昨年創業したばかりだ。倉貫さんが、限られた予算、限れた時間の中で、試行錯誤を重ね、現在のブログ中心のマーケティングにたどり着くまでの様子を是非参考にして頂きたい。

小さなソフトウェア企業でも出来るマーケティング・コミュニケーションのやりかた

「マーケティング」というと難しく聞こえるかもしれません。よくあるCMや広告もマーケティングのひとつです。なので、大手企業だけがするものだと思ってしまっている人たちもいるかもしれません。しかし、実はそんなことはありません。

小さな会社であってもマーケティングは出来ます。むしろ、小さくてもしっかりとマーケティングをしている会社は、ブランド力をもち、ファンがいて、利益を上げることが出来るのです。たとえば、"Ruby on Rails"を作ったDHHのいる37signalsという小さな会社は、世界でもっとも有名な成功事例でしょう。 私たちソニックガーデンも小さなソフトウェア企業です。それなりにメディアにも取り上げて頂くこともあるので、印象としてはもっと大きな会社だと思われるときもありますが、実際には現時点で私を入れて7人の小さな会社です。小さな会社ですが、今のところ、ありがたいことにソニックガーデンは、受託開発では下請けの仕事はしていませんし、自社サービスの販売も代理店などは入っていません。私たちが直接お客様に価値を届けることが出来ています。

この記事では、マーケティング活動の中でも「マーケティング・コミュニケーション(マーコム)」の部分に焦点をあてて、ソニックガーデンがどのようにマーコムを行っているのか、紹介したいと思います。

 

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Dorchester market / MarilynJane

 

ソニックガーデンの考えるマーケティング

ソニックガーデンでは、ブログやWebサイトで私たちの考えかたや仕事の進めかたなどを知ってもらい、その上でお問い合わせや紹介からのご相談などを頂いて、お仕事に繋げています。私たちのところに、ご相談に来て頂ける時点で、私たちのことをよくよく知って頂いてることが殆どです。そうすると、話がとてもスムーズに進むことが多いように感じます。

また、企業向けの社内SNSのSKIPというサービスでは、導入や運営に関するノウハウなどを惜しみなくWebサイトで公開しています。そこでは、自社の製品に関することではなく、どのツールを使ったとしても役に立つ内容となるように心がけています。そこから私たちのことも知って頂いて、ご相談を頂くことが多いです。 今は、広告などは出しておらず、有料のイベント出展などもしていませんし、電話での新規営業先の開拓などもしていません。しかし、最初からそうだった訳ではありませんでした。事業を立ち上げたばかりの頃は、そういったマーケティング活動を沢山していました。それなりにお金をつぎ込んで、イベント出展も広告も、テレアポの会社にお願いしたりもしていました。

しかし、イベント出展も広告もあまりうまくいった印象はありませんでした。イベントに出せば名刺は沢山集まるのですが、私の印象では、イベントに来るのは同業者や勉強のための若手社員、という方々が多かった気がします。あるとき、それまで何度か出したイベント出展をまったくやめてみるという実験をしました。結果として、事業に対して影響はまったくありませんでした。イベントに出しても出さなくても同じ!だったのです。

私たちが扱っている商品の性質もあったと思いますし、イベントで得た名刺の活用について私たちのやり方が未熟だったというのもあったと思いますが、当時の私たちにとっては、やり方を考え直す大きなきっかけになりました。 もう一つ大きなきっかけがありました。電話による新規営業先の開拓をしよう、ということで、自分たちでもやってみたことがあります。もともとエンジニアである私も、当時から営業を担当していた藤原(今の副社長)も、電話で新規開拓は初めての経験でした。何日か、日がなやってみて、結果として何件かのアポイントをとることは出来ましたが、同時に、私たちの心も折れてしまいました。これはもう無理だと。自分たちに向いてないやり方を続けることは出来ない、ということで、別の方法を模索しようと考えたのでした。 そうして、私たちは今のような、私たちの将来のお客様になるかもしれない皆様にとっての役立つコンテンツを沢山発信していくことで、そうした有益なコンテンツによって私たちのことも知ってもらって、そこからお客様にとってお役に立てるお仕事に繋がっていける、というスタイルを目指すようになりました。 以降で紹介するのは、ソニックガーデンでやっている「マーケティング・コミュニケーション(マーコム)」です。マーケティングというと言葉が広過ぎて事業活動すべて、みたいになってしまうので、お客様に知って頂く活動の部分にフォーカスをあてています。

 

インバウンドマーケティングに繋がる活動

ソニックガーデンのマーケティングのスタイルは、最近よく言葉を耳にするようになった「インバウンドマーケティング」(宗像注:コンテンツ・マーケティングとインバウンドマーケティングは、ほぼ同義です)に近いように思います。ただ前述の通り、インバウンドマーケティングを勉強して取り組んだ訳ではないので、正しく実践できているかはさておき。

「インバウンドマーケティング」とは、広く役に立つコンテンツを自社で発信していくことで潜在顧客から自分たちを見つけてもらい、そこで繋がった見込み顧客にとって役に立つ情報提供を続けて信頼関係を高めていき、お役に立つタイミングでお客様になって頂くというスタイルのことです。即決で購入を決める商品でなく、購入まで時間がかかる商品や、企業向けの製品を販売する企業に向いたやり方ではないか、と思います。 インバウンドマーケティングのうちの「Get found」と呼ばれる見つけてもらう為の活動としては、ブログ、Webサイト、そして、Facebookページを私たちは活用しています。 ブログを書く際には、そのカテゴリに興味のある方にとって、なるべく誰にでも役に立つ情報であることを心がけています。商品やサービスの情報提供も大事なことですが、それは既に商品について調べている方にとっての話です。実際には、商品そのものを知る前に、何か課題があったり興味があったりする訳で、その段階では商品の情報は必要ありません。それよりも、その分野に関する情報、それも一般的な情報を知りたいと思っている筈です。そうした方々にとって役に立つことは何かを考えると良いでしょう。

ブログの良い所は、その記事が償却されることのない資産になっていくことです。記事を蓄積すればするほど、そのブログの価値は高まりますし、より多くの人から知ってもらう入り口が増えます。継続することが重要です。 Webサイトでは、なるべく詳しく考えかたや仕事の進め方などを載せるようにしています。特に、商品やサービスを提供する上で、大事にしていることや、なぜそういった事業をしようとしているのか、といったことも伝えようと心がけています。商品やサービスのスペックも大事なことですが、それなりに高価なものの場合や、コンサルティングやシステム開発などといったプロジェクトで一緒にやっていくようなサービスの場合は、どういった人たちがどういう考えでやっているのか、というのはとても大事な要素です。

そこでソニックガーデンのWebサイトも、これまでよりも一層「誰が作っているか」といった、産直野菜のようなイメージで、中の人の働く姿勢や考えを出していくようにリニューアルを行いました。これまでの静的な情報提供から、生きた情報発信のスタイルに変えていく実験です。 Facebookページでは「舞台裏を見せる」というコンセプトで情報発信をしています。Facebookページに「いいね!」をして頂けた皆様には、少なくとも興味を持って頂けたということで、Webサイトやブログでは書ききれない、舞台の裏側を見て頂いて、素顔の私たちを知って頂くことを心がけています。Facebookらしく、リアルタイムに今考えていることを発信したり、社内の様子を見せたり、自分たちのこと以外でも、良いと思った情報をシェアするようにしています。

人との信頼関係は短期間で出来るものではなく、じっくりと時間をかけて知ってもらうことで出来上がるものだと思いますし、そのために少しずつ継続的に伝えていく場として、Facebookページは向いているように思います。 これらの方法を実践するのに、人数や資金は殆ど必要ありません。なので、インバウンドマーケティングは中小企業でも出来るマーケティングだと言われています。 ただし、私の経験上ですが、こうしたスタイルは「儲かる為にやろう」という気持ちだけでは出来ないように思います。というのも、ブログを書き続けるというのは、やっぱり大変です。これは、お金だけでは解決できません。

私がブログを書くのは、もちろん会社のことを知ってもらえれば嬉しいけれども、それよりも、役に立つと思ってくれる人に私の経験や考えを伝えたいという思いや、なんとも怒ったり憤ってしまう状況を改善したい気持ちを伝えたいという思いが強いです。だから、続けられています。

人もお金もなくても始めることはできますが、情熱や考えが無ければ続けることのできないやり方です。だからこそ、しっかりとしたポリシーと情熱を持って、日々を考えて仕事をしている小さな会社にとっては有益な方法であり、それを求めている必要とする人にとっても嬉しい方法なのだと思います。

 

小さくても素敵な会社がきちんと信頼される社会に

マーケティング、というと何ともお金の匂いがしてイヤらしいと思ってしまう人もいるかもしれませんね。

しかし、自分たちのことを知ってもらわなければ、価値を届けることは出来ません。そして、本当に成し遂げたいビジョンがあるならば、それを伝えていかなければ伝わりません。マーケティング・コミュニケーションは、企業活動の中でそれを実現するための手段なんだと考えています。まずは知ってもらうことから、そして信頼してもらえることが大事です。その結果として、お仕事に繋がれば良い、という位の気持ちでいます。 ブログがあって、ソーシャルメディアがあって、バイラルがあって、と色々なチャネルはあるけれど、いきつくところはコンテンツであって、つまり"中身"がなければ、何も始まりません。企業における中身とは、そこで取り組んでいる事業活動そのものでしょう。そうした自分たちの事業に対して情熱を持っている会社が、これまで以上にきちんと評価されるのだとしたら、こうしたコンテンツを使ったマーケティングは良いものだと思いませんか? もっともっと沢山の、小さくても中身のある良い会社が、世の中の表に出て来て、それがきちんと信頼されるような社会になれば良い、と考えています。

その為の方法として、インターネットを活用すれば、自分たち自身のコンテンツを表出化していくことで、必要としている人に知ってもらえる機会を増やすことができます。インターネットの世界では、お金だけでは戦えない世界なので、戦略さえ間違えなければ、小さな会社であっても大きな会社とも対等に渡り合えるはずです。

たとえ小さな会社であっても、恐れずに情熱をもって、自分たちの考えやこだわりを世の中に発信していきましょう。それが世界を変える一つの流れになるはずです。

【ゲストブロガープロフィール】

sonicgarden_3.jpg倉貫義人さんSonicGarden 代表取締役社長 ソニックガーデンの創業者で代表取締役社長。日々アジャイルソフトウェア開発とリーンスタートアップを実践しています。クラウドを活用したワークスタイルの変革を目指しています。「心はプログラマ、仕事は経営者」がモットーです。