ソーシャルメディアで「社員キャラクター」を作った方が良い理由

コンテンツマーケティング

最近は、TwitterやFacebookの企業アカウントやページにオリジナルの「社員キャラクター」が多く登場している。あなたも、ご存知の、もしくは贔屓のキャラクターが1人はいるのではないだろうか?

「1人」という数え方が、実は今回この記事でお伝えしたいことのニュアンスをよく表している。それはつまり、企業がキャラクターを持つということはブランドを人格化するということである。

まずはじめに、「社員」の姿や設定をまとった「社員キャラクター」に限らず、企業が何がしかの「キャラクター」をつくり、ブランドを人格化することがなぜ効果的かについて、心理学的背景を説明した記事を紹介しながら考えてみよう。

「キャラクター」〈=人格化されたブランド〉が効果的なのはナゼ?

その記事とは、Mashable等に掲載されたJohn Lee氏の”Why Brands Should Be Human on Social Media“である。

鍵となるのは、「コードスイッチング(code-switching)」と呼ばれる言語学で用いられる用語だ。

これは、1つの会話・文章の中で使用言語や話法を変えることをさす。近年、言語学の一概念として確立されたばかりだが、文化的・社会学的な応用もされ始めている。

消費者が企業ページに接するときの2つの接し方

記事の中で紹介されているように、「コードスイッチング」とは仕事中に家族からの電話があった際、私たちの口調がフランクなものに一転するといったようなことである。この概念をソーシャル時代の消費者行動に置き換えてみよう。

消費者が企業のアカウントやページを訪れるとき、

1. 取引相手やただの購入先としてだけ、そうした発信を見ていることはなく、 2. 一個人の発信としてアカウントやページでの発言を捉えてもいる。

これが、消費者が企業のFacebookページやTwitterアカウント、その他に接するときの2つの接し方だ。

そして、消費者のそうした「2つの」接し方のスイッチは間断なく切り替わっていると考えることができる。

とするならば、上の2の接し方から生じるブランドへの愛着が、消費者の意思決定に関係してくるのは自明の理といえるのではないだろうか。

単なるコーポレート・キャラクターから「社員キャラクター」の時代へ

企業のキャラクター自体は、新しいわけでもなく、例えばコーワ(興和株式会社)のケロコロ(ケロちゃんコロちゃん)は、1949年に誕生し、TVCMにも幾度も登場している。近年では、ソフトバンクのお父さん犬が最も人気を博したキャラクターだろう。

しかし、そうしたキャラクターが消費者とコミュニケーションを取りやすいのは、テレビCMやキャラクターを使用した関連グッズなど、いわゆる従来の広告やマーケティング手法に留まっているのではないだろうか。

逆に言えば、マスの広告において消費者とコミュニケートするために上記のようなコーポレート・キャラクターは必要だったと考えられる。

そうしたコーポレートキャラクターは、双方向性を有するソーシャルメディアにおけるコミュニケーションでは先述した一個人としての側面が相対的に弱くなった。

そこでキャラクターに付加されたのが「社員」という属性だ。それにより、企業はソーシャルメディアで消費者と1対1、もしくは双方向のコミュニケーションをとることが容易になった。

彼ら「社員キャラクター」はソーシャル時代の企業の顔となる可能性を秘めているのだ。

日本では「社員キャラクター」を用いたコミュニケーションが盛ん

Social Media Exprience に、2011年11月28日に掲載されたayumi fukaya氏の「ソーシャルメディアのコミュニケーションを担う社員キャラクター:設計と運用」という記事がある。

そこでは、日本企業で「社員キャラクター」を用いた消費者とのコミュニケーションが盛んでなことや、「社員キャラクター」の設計と運用にまつわるメリット・デメリット、そしてその方法が詳しく書かれている。

伊藤ハムのハム係長、IKEAのAnnaなどいくつかの「社員キャラクター」も紹介されているが、IKEAにおいては、社員キャラクターが存在するのが日本だけのようで、日本における「社員キャラクター」の活躍ぶりを裏付ける例となっている。

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出典:イケア・ジャパンAsk Anna

まとめ

さて、ここまで「コードスイッチング」をキーワードに、キャラクターが効果的な理由とソーシャル時代に「社員キャラクター」が有効な理由を述べてきた。

ブランドに愛着を持ってもらうため、企業の発信には一個人的な側面が必要である。そのために、マス時代からコーポレート・キャラクターが多く作り出されてきた。

それが、ソーシャル時代になり、双方向や1対1のコミュニケーションの必要性が発生し、キャラクターに「社員」という属性が付加されるようになった、という流れであった。

今後も、”社員キャラクター”を作るという手段は、ユーザーとのエンゲージメントを高めるために非常に有効な施策となっていくだろう。

事例紹介:鉄道ダンシプロジェクト

最後に、今話題の「北三陸」からの気になる「社員キャラクター」の事例を紹介して締めくくりたい。

岩手県の三陸鉄道は、現在話題沸騰中のNHK連続テレビ小説『あまちゃん』に出てくる「北鉄」のモデルだ。

実際の「三鉄」では現在、「鉄道ダンシプロジェクト」なるものが進められている。三鉄の各駅毎に男性鉄道社員の「社員キャラクター」が制作されており、既に田野畑駅の「田野畑ユウ」などが誕生しているという。これらのキャラクターは二次元のイラスト風で、女性アイドルを主人公にしたドラマとはターゲットは全く異なるのは興味深いところだ。

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出典:三陸鉄道株式会社Webサイト

気になるのは、三鉄のFacebookページやTwitterアカウントでは、「さんてつくん」という企業キャラクターが発信をしていることだ。「鉄道ダンシ」は現地の駅のみでの活躍に留まっているようだ。

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出典:三陸鉄道株式会社Facebookページ

しかし、本記事の論旨からも、ソーシャルにおけるコミュニケーションは「鉄道ダンシ」の方に可能性があるのではないだろうか。今後こうした「社員キャラクター」がソーシャルの領域でもどう広がっていくのか注目してみたいところだ。

参考元: ・Why Brands Should Be Human on Social Mediaソーシャルメディアのコミュニケーションを担う社員キャラクター:設計と運用 Photo: Some rights reserved by egaku, flickr

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