ブログとFacebookを上手に利用してコンテンツマーケティングの王道を行く、小麦粉ブランド「King Arthur Flour」の事例

コンテンツマーケティング
1790年設立のKing Arthur Flourは、アメリカで一番古い小麦粉ブランド。種類豊富な小麦粉から、菓子材料、ベーキング用品、料理本まで販売している。
実はこの会社、決して派手ではないが、堅実でユニークなコンテンツマーケティングを行っている。コンテンツを順番にご紹介していくので、ぜひ参考にしていただきたい。
ブログ「Flourish」
「Flourish」は、King Arthur Flourがコンテンツを提供しているブログだ。タイトルの「Flourish」は、小麦粉の「flour」と栄養を供給するといった意味の「nourish」をかけている。
King Arthur Flourブログ「Flourish」
このブログの中心コンテンツは、バラエティに富んだレシピだ。King Arthurの小麦粉を使うものもあれば、そうでないものもある。トレンドもバランス良く取り入れていて、例えば2013年には、当時流行(はや)っていた野菜、ケールを使ったピザのレシピを提供している。
レシピと言っても、ブログ記事はあくまでもブログ記事なので、ただ材料のリストと作り方が説明されているのではない。
ちゃんとイントロダクションから始まっていて、読み物のようなレシピになっている(でも、レシピだけをプリントアウトすることも可能)。各レシピには複数の画像も載っているので、わかりやすく見た目もきれいだ。
「tips technique」では、「ケーキに使う小麦粉の基礎知識」や「ケーキのアイシング」といった記事を載せている。料理のちょっとしたコツやテクニックを学べるコーナーだ。グルテンフリーのレシピに特化したカテゴリーもある。
レシピの下にあるコメント欄にも注目していただきたい。書き込まれた各コメントに、きちんとコメントを返している。記事の執筆者が直接返していることも多い。
読者に役立つコンテンツを提供しているだけでなく、読者とのつながりを大切にしていることが、一目見ただけでわかっていただけるだろう。
King Arthur FlourのWebサイト
本体のWebサイトの方にも、ユニークなコンテンツが用意されている。小麦粉を使ったレシピ集もその1つだ。
特に興味深いのは動画コーナーである。「小麦粉の量り方」といったベーキングのハウツー動画から、従業員や小麦の生産者、会社の歴史の紹介動画までそろっている。
また、フォーラム形式のコミュニティも充実しているコンテンツの1つだ。プロから素人までを含むユーザが質問をしたり、レシピを共有したり、料理やベーカリー事業についてのディスカッションなどで盛り上がっている。
もちろん、ニュースレターも配信されていて、メールアドレスを入力するだけで登録することができる。
ソーシャルメディアでの成功にも注目
King Arthur Flourはブログやサイトだけでなく、SNSでのコンテンツマーケティングでも成果を上げている。
特に注目したいのはFacebookページで、現時点(2014年7月)で獲得している「いいね!」は26万以上。コンテンツはブログに掲載されているレシピの紹介や、小麦生産者に対するサポートの呼びかけなどいろいろだ。なかには、2000以上の「いいね!」を獲得している人気記事もある。
「いいね!」の数もすごいが、もっと驚くのはコメントが70以上もついている投稿がけっこう多いこと。これは、ファンとのつながりがどれだけ深いかを物語っていると言えるだろう。
タイムラインの使い方もとてもユニークだ。ページの右端のタイムラインを見ると「2008年」から「最近」まではいいのだが、注意深く見ると1900年代、1800年代と、さかのぼることができる。
冒頭でも触れたが、King Arthur Flourは200年以上の歴史を持つ。それをタイムラインをうまく使って、1790年の「設立」から順番に歴史を紹介しているのだ。
ちなみに、先ほどご紹介した動画は全てYouTubeで公開されているのだが、チャンネル登録者は約6000人。動画の総再生回数は130万回以上だ。
King Arthur Flourから学べること
King Arthur Flourは、提供するコンテンツのなかで商品のプロモーションを全く行っていない。レシピの材料リストのなかに自社で扱っている商品がある場合だけ、控え目にリンクを張っているだけだ。
この小麦粉ブランドが行っているのは、小麦粉の売り込みや紹介ではない。小麦粉を使った料理法を教えたり、ベーキングの楽しさを伝えたりしているのだ。つまり、自社商品を使って何ができるかを提示することで、得られるもののイメージを膨らませるお手伝いをしているのである。
King Arthur Flourは、コンテンツマーケティングの基本の基本を押さえていると言えるだろう。
ユニークなコンテンツのアイディアを含めて、ぜひ見習いたいものだ。そして、この記事がコンテンツマーケティングの基礎を見直すきっかけになれば幸いである。
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