アピール下手な企業が知るべき「感性価値」の考え方や成功事例

経営・ビジネスハック
デパ地下のショーウィンドウには、味も見た目も洗練されたお手頃価格のオシャレなお菓子がたくさん並んでいるのに、手土産にはいつも創業80年の老舗の地味な和菓子を買ってしまう、なんてことはありませんか。しかも安くないにもかかわらず、です。
これは、老舗の和菓子の「伝統」や「懐かしさ」に、新しさや安さに負けない「価値」があるということ。このように、商品に付加価値を与えるには、従来にない角度から検討してみることが大切です。今回は、その指標となる「感性価値」という考え方を軸に、商品やサービスの魅力を伝えるコンテンツ作成のヒントをご紹介しましょう。
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目次
経済産業省が主導した「感性価値」という考え方
日本のものづくりやサービスを推進していこうという流れのなかで、2007年に経済産業省が発表した「感性価値創造イニシアティブ」という提言において、初めて「感性価値」という言葉が登場しました。
日本の技術力の高さに感性価値を加えることで産業を活性化
この文書では、生活者の感性(五感やセンスなど)に働きかけ、感動や共感を得ることで生まれる商品やサービスの付加価値を、「感性価値」と呼んでいます。この考えを示す目的は、技術力の高さという従来の日本の強みに感性価値を加えることで、日本の産業を活性化させようというものでした。
感性価値の高い商品やサービスとは?
具体的に、感性価値の高い商品やサービスとは、以下のように定義されています。
- 企業の価値観や美意識、こだわりが反映されている
- 技術やデザイン、機能などに裏打ちされている
- 「ストーリー」や「メッセージ」を持っている
- 生活者に驚きやワクワク、充足感や安らぎなどの「感動」や「共感」を与える
こうした「感性価値」の考え方が、苦戦している製造業を救う一助となり、生活者の心を豊かにするのではないかと予測されました。
技術を生かすも殺すも企業努力次第
日本企業のなかには、高い技術力を持ちながら、その価値を十分に伝えられず、利益につながっていないところがたくさんあります。これだけものが多い時代ですから、「良いものを作れば売れるはずだ」と待っていても、なかなか商品は売れません。流通や販売において、作り手の思いやメッセージを伝えて、生活者に感動や共感を与える必要があります。
冒頭で挙げたような和菓子の老舗が生き残っていけるのは、受け継がれた味やブランド力にあぐらをかくのではなく、そうした企業努力を怠っていないからでしょう。商品カタログに店の歴史や職人の思いを掲載する、レトロなイメージのパッケージにする、季節限定の復刻版の和菓子を販売するなど、自社の商品の感性価値を最大限に生かす方法をいつも考えているのです。
生活者の目利き力を育てる
一方で、このような商品やサービスが増えることが、メディアや生活者の目利き力を育てていきます。海外のブランドを盲目的に崇拝して日本の良さに気付かない、便利なだけの使い捨ての商品で済ませる、といったことがなくなります。生活に充足感が生まれ、心が豊かになっていくのです。
経済産業省は、2008年度から3年間を「感性価値創造イヤー」として位置づけ、感性価値創造イニシアティブを定着させていく施策を重点的に展開しました。それ以降、産官学、それぞれの分野でさまざまなプロジェクトや研究が続けられています。
プレミアムホテルでの成功事例
感性価値は、商品やサービスの企画・開発から流通や販促まで、すべてのプロセスにおいて、その付加価値を引き出す効果を果たします。2015年に入ってからは、観光産業や旅行産業において、感性価値の重要性が指摘されました。
早稲田大学WBS研究センターが発表した論文「顧客のための感性価値マネジメント成功要因~プレミアムホテルの事例研究」によると、調査対象となった高級旅館「星のや京都」やプレミアムホテル「アマンリゾーツ アマンダリ」などは、いずれも顧客の感性価値に訴えかける演出が上手いのだとか。立地の良さや充実した整備のほかに〝特別感〟を与える演出で、顧客に感動だけでなく優越感を与えています。
「星のや京都」
例えば、100年以上前に建てられた旅館をリノベーションした「星のや京都」は、伝統的な日本建築の魅力を残した本物らしさと、日本固有のおもてなしが特徴的です。伝統的な日本を楽しみたいという外国人観光客を中心に、京都を訪れる人々の心をぐっとつかんでいます。
「アマンリゾーツ アマンダリ」
インドネシアのバリ島にある「アマンリゾーツ アマンダリ」は、少数の客に対して大勢のスタッフが常駐する丁寧なサービスに加えて、緑を眺めながらスパに入れる、ヨガのプライベートレッスンが受けられるなどの癒しを強調した施設やアクティビティが充実。顧客に“心を磨く”体験をさせることで、ホテルの存在感を高めているのです。
このように、上記の2例を見るだけでも、顧客の感性価値に訴えかけることが、上向きと言われる旅行産業をけん引するプレミアムホテルの成功につながっていることが伺えます。
「感性価値」の軸から商品やマーケティング活動を見直す
感性価値という考え方を軸にすると、商品やサービスに付加価値を生み出せることが、お分かりいただけたと思います。自分が担当する商品やサービスの重点をどこに置くべきか迷ったり、広報資料やブログ、SNSなどのネタ不足に悩んだりしたら、感性価値という視点から見直してみましょう。
会社のこだわりが反映されているだろうか? 商品を作った人はどんな思いだっただろうか? サービスを受けたお客様はどんな気持ちになってくれるだろうか? そうすると、これまでには見つからなかった魅力が見えてくる気がしませんか? それは、あなたが新しいコンテンツを準備するときに必ず役立つはずです。
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参考:
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