【失敗事例から学ぶ】そのままで大丈夫?気をつけたいクーポン発行の落とし穴

EC(Eコマース)

語源は「切り取る」という意味を持つクーポン。だが、最近はモバイル端末やインターネットの普及により、紙のチラシから切り取るタイプのクーポンではなく、デジタルクーポンが主流となりつつある。

デジタルクーポンは、消費者の購買意欲を上げるのにとても効果的だ。切り取って持ち運ぶ手間や、うっかり紛失してしまうこともなくなり、他の人とのシェアもしやすくなったことで便利度が向上。使用率・普及率が上がり、それが売り上げにつながって万々歳に思えるが、思いもかけない落とし穴もたくさんある。

今日は実際にあった失敗例をもとに、クーポン発行時に押さえておきたい重要なポイントを紹介したい。

割引率100%!?:HubShopの実例

マーケター向けのキャッチフレーズ入り小物やアパレル、人気の書籍などを扱うEコマースサイト、HubShop。

ある日、ECチームがサイトのクーポン使用率の異常な増加をキャッチ。すぐに原因の調査を開始すると、複数の数百ドル相当のオーダーが全て支払額“0”で処理されていることが発覚。さらに調査を進めてみると、数種類あるクーポンのうち1種類の割引率が“100%”で、かつ繰り返しの使用が可能な状態だったことがわかった。

不幸中の幸いだったのは、この事故が起こったのが通常注文があまり入らない火曜日の夜だったことと、原因究明から修正まで32分で対応できたこと。それでも、損失は数千ドル。そしてこの問題は消費者には全く責任がない。会社としては、顧客を失う覚悟で注文のキャンセルの連絡を入れる、または苦虫を噛み潰しながらも全損失をカバーする、のどちらかしかないのである。

消費者を侮るべからず:Best Buyの実例

アメリカの大手家電量販店、Best Buyは使用制限を甘くみたために、賢い消費者たちに弱点を突かれて大きな損失を出した。

問題となったのは、100ドルの買い物をしてMastercardで支払いをすると半額の50ドルの支払いが免除されるというクーポン。使用制限は「iPodと特定のテレビの購入には使用不可」というものだけだった。

この話を聞いただけでは、何が問題だったのかがわからない方も多いのではないかと思うが、「1人の消費者が使用できるクーポンの枚数に制限がなかった」ことが大きな落とし穴に。消費者によってはここぞとばかりに欲しかった品物の大量購入に走ったり、高額ギフトカードの半額での購入(例:1000ドル分のギフトカードを半額の500ドルで購入)を始めた。

事態の深刻さに気づいたBest Buyは、本来1週間使用できるはずだったクーポンを発効当日に無効とし、新たな制限をつけたクーポンの再発行に踏み切った。これに対する消費者の不満は容易に想像でき、SNSでの批判はもちろん、失ったロイヤルティは計り知れない。

自社のキャパシティを知るべし:グルーポン(Groupon)の実例

クーポンのデジタル化によって多くの人が簡単にクーポンを入手できるようになったことが裏目に出てしまった実例もある。

数年前に世間を騒がせた「おせち問題」。覚えている方も多いのではないだろうか。2010年の12月、クーポン共同購入サイト・グルーポンにて2万円のおせちを半額の1万円で購入できるというクーポンが発行された。このとき、約500個のおせちが販売されたものの、サンプルの写真と全く違う内容の商品が消費者に届いたり、期日に届かなかったものもあった。予想以上の注文を受け、材料不足、人手不足など問題が山のように発生してしまったために起きたことだ。

同じようなことが、イギリスの個人経営の小さなベーカリーでも起こった。12個のカップケーキを75%OFFで提供するグルーポンを発行したところ予想以上の注文が入り、計10万個以上のカップケーキをせっせと焼く羽目に陥ったらしい。この結果、損失額は日本円で約200万円。これはベーカリーの1年分の利益額に相当するものであったという。オーナーは「間違いなく過去最低のビジネス上の決定だった」と後悔を隠せない。

ここを押さえて失敗無し:クーポン発行時にチェックすべき8つのポイント

上記の失敗事例をみると、「本当にクーポンに意義はある?」という根本的な問題に突き当たってしまうが、やはり消費者に購買意欲を上げてもらうにはとても効果的なマーケティング手法である。

では失敗しないクーポン作りに必要なのは何か?

① 計画性:ゴールを定め、そこに到達するまでに必要な情報、経費のアウトラインを作成しよう

② 設定の確認:発行前に割引額の確認をしつこいほど繰り返そう。ゼロの数、小数点の打ち間違え、タイプミスなど、ほんの些細なことが大きな落とし穴につながる

③ 期限:有効期限の設定を怠ると、気づかないうちに長期にわたって損失を出し続けることになりかねない。タイプミスはもちろん、有効期限の欄を空白にしてしまうことなどもないように

④ ネーミング:複数のクーポンを発行する計画がある場合、各クーポンの内容の区別がつくよう、名前をつけ、社内・グループ内での混乱やミスをなくそう

⑤ 金額設定:クーポンを使用するために顧客が一定金額を使用しなければならない場合は、下限・上限の設定を忘れずに

⑥ アクセスポイント:消費者へクーポンを提供するために設けたCTA(コール トゥ アクション)ページ(Eメール、リンク、ブログ、ホームページ、プリント広告等)の作動確認を忘れずに

⑦ アクティベイト:消費者がクーポンを使用できない……という事態が発生しないようにクーポン期限に合わせてきちんとシステムを作動させよう

⑧ 終了確認:設定した有効期限が終了したら、システム上にもそれが間違いなく反映されているか、再確認しよう

上記のポイントをしっかり抑えて、効果的で失敗のないクーポンを上手く消費者に届け、売り上げにつなげていって欲しい。

人気記事


 

 

 関連記事