今、小売業にコンテンツマーケティングが必要な訳

コンテンツマーケティング
アメリカでは今、小売業のコンテンツマーケティングが盛んに行われている。How to 動画や商品豆知識など、ユーザーの必要とする情報を、きめ細やかに提供している良質なコンテンツも多い。この業界におけるコンテンツマーケティングの重要性が、理解され始めたからであろう。
多種多様な商品を扱う小売業では、これまで蓄積してきた、商品に関する膨大なデータが存在するだろう。それを利用すれば有益なコンテンツ制作が可能だと思うのだが、国内ではまだコンテンツマーケティングを本格的に行っている企業は稀である。あるいは、行っていても、「実に惜しい。あと一歩!」というケースもよく見られる。
今回は、なぜ小売業がコンテンツマーケティングを取り入れるべきかという理由を概観した後、いくつか事例を紹介していきたい。
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目次
なぜ小売業にコンテンツマーケティングが必要なのか?
なぜ小売業にコンテンツマーケティングが必要か?それは端的に言って、「顧客がその店で商品を買わなければならない理由を作るため」である。
小売業界では、他社と同じ商品を取り扱う企業も多く、他企業との差別化を図るのが難しい業種である。これまで価格競争やサービスの向上などによる差別化を図ってきたと思われるが、それもあまり差がなくなってきた場合、どうすればよいのか?
そのような時、自社ならではのユニークさを発揮でき、他社との差別化を図るのに有効なのがコンテンツマーケティングなのである。
これは、商品の単価を10円下げるか、20円下げるかといった短期間のみ有効となるような戦略ではない。これまで培った深い商品知識を元に、他社の追随を許さないような内容の濃いコンテンツを制作して、長期的な効果を期待することができる、新たなマーケティング手法である。
顧客は迷っているのだ。どの店が自分の欲しい商品を提供してくれるのか、どこで買えばいいのか、分からない場合も多いのである。そのような時、彼らの求める情報をタイミングよく確実に発信する企業があれば、購買意欲を後押しすることができるだろう。また、「自分の欲しい情報を提供してくれる企業」という認知形成に役立ち、ブランディング効果も期待できる。
このように購買促進・ブランディングという理由の他、小売業がコンテンツマーケティングを始めるべき理由に、次のようなことが挙げられる。
1. 情報の収集
コンテンツを制作して、コメントなどを投稿してもらうと、顧客の求めていることが分かり、プライベートブランド(PB)商品開発などに役立つ。
2. コンテンツマーケティングはコスト効率がいい
小売業界では、実店舗用のWEBサイトとオンラインショッピング用サイトの両方を持っている企業も多い。一度コンテンツを制作すれば、それを両方のサイトで共用したり、少し形を変えてソーシャルメディアに投稿したりすることもでき、非常にコスト効率がいい。
では、具体的にはどのようなコンテンツを提供していけば、顧客の信頼を高めることができるのだろうか。また、見込み客にリーチすることができるのだろうか。事例を見ていきたい。
ソーシャルメディアを活用し、カスタマーの細かなニーズに対応しているWhole Foods
アメリカの小売り大手のWhole Foods については、THE CONTENT MARKETINGでも何度かご紹介させていただいた。コンテンツマーケティングの手本として、多くのメディアに紹介されるオーガニック系スーパーである。
参考:ローカライズ型コンテンツマーケティング戦略で顧客との信頼関係を築く方法
以前のブログではWhole Foodsの、ローカルなソーシャルメディアアカウントについて書かせていただいたが、同社はテーマ別のソーシャルメディアアカウントも多数作成している。
例えば、レシピ専門のTwitterアカウントや、ミート専門のFacebookアカウントなどがあり、顧客のニーズに合わせて様々なコンテンツを提供している。自社サイトにはチーズ専門ページなどもある。
ミート専門のFacebookアカウントを覗くと、「脂肪分が多い肉に味付けするには、より多くの塩が必要。なぜなら…」という「勉強になる」投稿などが見られる。また、自社サイトにもミート専門のページがあり、肉の種類別に関連記事が見られるようになっている。
このようにテーマ別のメディアを作ると、顧客に対し、よりきめ細やかな対応ができるのである。
ビジュアルプラットフォームを活用して、バラエティに富んだコンテンツを制作するThe Home Depot
The Home Depot (ホームデポ)は、アメリカで多店舗展開している大手ホームセンターである。人気ドラマにも登場するなどアメリカではお馴染みの店で、プロアマ問わず利用している。
同社はカスタマーサービスを重視していて、実店舗を訪れると、そのスタッフ数の多さに驚く。そのようなCRMが功を奏したこともあって、業績は好調。第2・四半期(8月4日終了)の決算では、売上高9.5%増。既存店売上高は10.7%増、米国内では11.4%増加し、市場シェアを競合ロウズから奪う形となった。
この顧客重視の姿勢は、同社のコンテンツ制作にも表れている。オウンドメディアできめ細かなHow To 情報などを提供している他、Pinterestでも魅力的なコンテンツを多数掲載しているのだ。
DIYやガーデニングに関するHow to 情報やハローウィン用の装飾アイディアなど、バラエティに富んだコンテンツが集められ、美しい写真が多く、何度も訪れたくなるボードとなっている。ビジュアルプラットフォームを上手く活用した例である。
日本で参考になる事例は?
ここまで主に海外の事例を見てきたが、日本の小売業界にも参考となるコンテンツ制作が見られるようになってきたので、いくつかご紹介したい。
例えば日本のホームセンターの中にも、充実したHow To情報をコンテンツとして発信している企業がある。THE CONTENT MARKETINGで何度か紹介させていただいたコメリの他に、カインズホームなどもWEBサイト上で細かいHow To情報を提供しているので、覗いてみてほしい。
*カインズ how to
ルミネはWEBサイト内にルミネのスペシャルコンテンツを設けて、スタッフの接客秘話や、ルミ姉の歴代CM集などのコンテンツを提供している。また、LUMINE MAGAZINEというWEBマガジンも運営していて、「SHOP仕掛け人を追う!」などのコンテンツを発信している。
西友のWEBサイトには、商品情報などの他に、こうちゃんの幸せレシピというレシピコンテンツなどがある。
無印良品のくらしの良品計画所というコンテンツでは実にユニークな取り組みが行われているので、ぜひ覗いてみてほしい。ブルーベリーの豆知識のようなお役立ち情報などと共に、こんな商品があったらいいな、という「顧客の要望」を掲載し、その商品が実際にできたかどうかも表示されるのだ。
まとめ
いかがだっただろうか?
小売業界には、今回ご紹介した事例の他にも、ブログなどを掲載しているサイトも見られるが、「商品の宣伝」に終始してしまっている場合があって、実に惜しい。もっと幅を広げて顧客目線のコンテンツを発信すれば、サイト訪問者が増えていくだろう。
これまで蓄積された情報を元に、バラエティに富んだコンテンツを制作し、幅広いカスタマー層へのリーチを狙っていってほしい。
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参照元:
・4 reasons why retailers should invest in content marketing
・米ホームデポの5─7月は予想上回る増収増益、住宅市場回復が追い風
Photo: Some rights reserved by Payton Chung, flickr
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