プロダクトレッドグロースとは?顧客獲得につながる新しい手法のメリットと準備を解説

BtoBマーケティング
プロダクトレッドグロースとは、「プロダクトがプロダクトを売り込む」というスタイルで進められる新しいマーケティングの形です。
プロダクトレッドグロースは企業の成長戦略の一環として捉えられていて、近年は実際に成果を出した企業の事例が増えたことで注目度を高めています。
こちらではプロダクトレッドグロースの意味などの基本に加えて、具体的な流れ、実施によるメリット、必要な準備などを解説します。
目次
プロダクトレッドグロースの意味
プロダクトレッドグロース(PLG)とは、日本語で「製品が主導として成長する」という意味を持つ言葉です。
これまでは営業担当者やマーケティング担当者が、顧客へのアプローチやプロモーション活動を主導するのが当たり前でした。
しかし、プロダクトレッドグロースは「プロダクト自身が商品であると同時に営業担当者である」という状況を構築し、製品主導でセールスを進める戦略となっています。
プロダクトレッドグロースに対応させることで、見込み顧客の獲得やナーチャリング(顧客育成)、認知度の向上などを手間をかけずに行うことが可能です。
プロダクトレッドグロースの仕組みを取り入れた製品の開発および既製品の改善は、企業のマーケティング活動を効率化させるきっかけになり得るでしょう。
従来のセールスレッドグロース(SLG)との違い
従来の営業主導のマーケティングは「セールスレッドグロース(SLG)」と呼ばれ、セールス担当者がプロダクトを販売するお馴染みの形式でした。
例えば「A」という商品を売るためには、営業担当者がターゲティングや顧客情報の収集を行い、見込み顧客を選定してアプローチ方法を工夫し、興味を持って買ってもらう流れがセールスレッドグロースの基本です。
あくまで人による能動的なアクションがメインになっているため、営業担当者の手腕や努力に成果が左右されたり、チームで情報共有をしながらマーケティングを進めたりといった特徴があります。
この人間主導のスタイルから脱却したのが、製品主導のプロダクトレッドグロースです。
プロダクトレッドグロースは製品が直接顧客に売り込みをかけてくれるため、先に紹介した営業の流れが必要ありません。
チームによる大規模な施策や連携も求められないため、プロダクトに多くの営業活動を任せられるのが特徴です。
プロダクトレッドグロースの流れ
プロダクトレッドグロースと、従来のセールスレッドグロースの流れは、基本的に以下のようになっています。
プロダクトレッドグロースの流れで注目されるのが、実際に製品を使用してもらうまでの早さです。
プロダクトを認知してもらったら、その機能を使ってもらうことからはじめるため、顧客に魅力やメリットをスピーディに伝えられます。
その後、見込みのある顧客に対して積極的な営業アクション取り、実際に製品を利用するユーザーとして迎え入れるのがプロダクトレッドグロースの流れです。
プロダクトレッドグロースと比較すると、セールスレッドグロースは実際に製品を使用してもらうまで長い時間がかかっていることが分かります。
コストが増大しやすく、さらに顧客に他サービスと比較する時間を与えてしまうため、乗り換えを検討される原因にもなっているのです。
このようにプロダクトレッドグロースとセールスレッドグロースの流れには、大きな違いがあります。
プロダクトレッドグロースならではのスピード感とその後の営業活動のしやすさは、企業にとって大きな魅力になるでしょう。
プロダクトレッドグロースのメリット
プロダクトレッドグロースの活用には、多くのメリットがあります。
以下を参考に、プロダクトレッドグロースのメリットを確認してみましょう。
すぐに製品・サービスを試してもらえる
先に紹介したプロダクトレッドグロースの「流れ」を見ると分かる通り、プロダクトをすぐに試してもらえる点はメリットです。
特別な営業をかけなくても製品・サービスの特徴や使い心地を実体験してもらえるので、テキストや画像・動画によるセールスよりもその魅力をはっきりと伝えられます。
顧客が購入前に抱える「本当に使いこなせるのか」「自分には合わないのではないか」といった不安を早い段階で払拭できるため、具体的な購入・契約を検討してもらいやすいでしょう。
顧客の利用状況に合わせた最適な提案が行える
プロダクトレッドグロースには、顧客の利用状況に合わせた最適な提案を行えるメリットがあります。
例えば顧客が製品を試している最中に、「〇〇の機能を使ってみませんか?」とプロダクト内で訴求したり、
「〇〇の利用方法はこちら」といったメッセージを表示して、顧客が求めるであろう機能の存在をアピールするプログラムを組めます。
そこから有料プランへの誘導や、アップセルにつながる選択を検討してもらえるでしょう。
そのほか、プロダクトへのログイン時に「今なら〇〇が期間限定で無料!」といったセールスを表示することも可能です。
ログインという顧客の能動的なアクションに合わせてお得な情報を提供できるので、成約につながる可能性は高くなるでしょう。
特にSaaSやサブスクリプションサービスを展開する企業にとって、プロダクトレッドグロースによる最適な提案のメリットは魅力です。
コストを削減しつつ利益の拡大につながる
プロダクトレッドグロースは、コスト削減と利益の拡大を同時に進められる点でもメリットがあります。
プロダクトレッドグロースは、利用時のデータを分析して顧客ごとに特化したマーケティングが可能です。
そのため顧客に合わない・興味を持ってもらえない無駄なマーケティングを行う機会が減り、コスト削減が実現します。
個々の利用者ごとに必要となる機能やプランを提案できるので、アップセルや長期契約も成立しやすいです。
顧客は既にプロダクトの価値を知った上で購入・契約しているため、高い信頼を得ていると想定できます。
そのためより高度な機能を持つプランへの変更や、長期的な契約への移行を成功させやすいのです。
結果的にプロダクトレッドグロースが事業拡大の支えとなり、コストの削減につながるでしょう。
プロダクトレッドグロースに必要な準備
プロダクトレッドグロースを活用を進めるためには、必要な準備があります。
以下を参考に、どんな準備がプロダクトレッドグロースに必要なのかをチェックしておきましょう。
プロダクトの価値を高めて明確にする
プロダクトレッドグロースによるマーケティングを行う際には、まずプロダクト自身の価値を高めて明確化します。
どれだけプロダクトレッドグロースの仕組みを工夫しても、肝心のプロダクトの価値や質が低ければ、顧客は購入や契約を検討しません。
あくまでプロダクトレッドグロースは、「良質なプロダクトを売る」ためのものであるため、まずは基本的なマーケティングと同様に機能やサポート体制などを充実させましょう。
顧客自らが「良い製品だ」と判断できるように、分かりやすい価値を提示するのが目標です。
プロダクト内における具体的なマーケティング活動を決定する
プロダクトレッドグロースを進める際には、プロダクト内で実行される具体的なマーケティング活動を決める必要もあります。
例えば先のように、顧客の動きに合わせてプロダクト内にメッセージを表示したり、お得な情報を提示したりするのがひとつの方法です。
また、顧客が求める機能を持つ別プランへの変更を促すために、期間限定で無料利用ができるように設定を変更するセールス方法なども考えられます。
そのほか、事前に設定した条件にマッチしたとき、オペレーターに連絡がいくようにプログラムすることで、外部からマーケティングのアプローチを進めることもできます。
プロダクトレッドグロースだけに頼るのではなく、従来通りの人間の力も合わせて営業をかけることで、成果を高めることに期待可能です。
複数プランを用意する
プロダクトレッドグロースの際には、複数プランを用意するのが重要です。
無料プラン、スタンダードプラン、プレミアムプランなど、顧客が自分の目的に合わせて選択できる環境を作るのが基本となっています。
複数のプランがあると、顧客が「もっと便利な機能を使いたい」と思ったときに、すぐにプランの変更からそれを叶えられます。
プランごとに金額や搭載機能を調節して、顧客が変更を検討しやすい価格帯や機能の搭載数を検証していくのもポイントです。
プロダクト内に問題を解決できる環境を整える
プロダクトレッドグロースは、可能な限り製品の中で問題やトラブルを解決できる環境を構築するのもポイントです。
わざわざベンダーに連絡を取らなくても、顧客自身で問題を解決しやすいように環境を整えることで、プロダクトへの信頼感や評価を高められます。
企業としてもサポートにかかるコストが減るため、ほかの事業やマーケティングに集中できるメリットがあるでしょう。
具体的には、FAQの設置、使い方のヒントの表示機能などを付与して、迷ってもすぐに解決できる道筋を作るのがポイントです。
また、万が一解決できなかったときのことも考慮して、カスタマーセンターへの簡単なアクセス機能を搭載するのも良いでしょう。
プロダクトレッドグロースの事例
プロダクトレッドグロースが注目されはじめた背景には、具体的な成功例の広まりが関係していると考えられます。
例えばチャットツール「Slack」や、ビデオ会議ツール「zoom」は、まずそのプロダクトの機能を体験してもらい、そこから顧客獲得やアップセルにつなげることで業績を伸ばしてきたプロダクトレッドグロースの代表事例です。
現在Slackやzoomを使用している人の多くが、直接営業を受けたりした経験はないでしょう。
それよりも「ビジネスの相手がSlackやzoomを使用しているから、自分も使うことになった」「無料で使えるので、とりあえず利用している」といった人が圧倒的に多いと想定できます。
結果的にSlackやzoomは事業に欠かせないツールとなり、BtoB事業として大きな成功を収めているのです。
こういった事例によって、プロダクトレッドグロースの価値は多くの企業に認知されるようになりました。
今後も自社プロダクトのマーケティング手法として、プロダクトレッドグロースを取り入れるケースが増えるでしょう。
プロダクトレッドグロースでプロダクト主導の営業を進める
プロダクトレッドグロースは、プロダクト自体が自分の価値や機能をアピールして売り込みをかける新しいマーケティングスタイルです。
特にSaaSでは広く利用されていて、今後もプロダクトレッドグロースによるマーケティングは広まっていくと予想できるでしょう。
この機会にプロダクトレッドグロースの特徴を確認し、自社のプロダクトに活用できないか検討してみることもおすすめです。
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