ポジティブ心理学のススメ

デジタルマーケティング

「ポジティブ心理学」という言葉をご存知だろうか?

かつて、ハーバード大学で学生たちが殺到した人気講義である。数々のビジネス誌でも取り上げられ、話題騒然となった。

その内容もさることながら、「幸せになるため」の心理学に、世界でもトップクラスと言われる大学生たちが、こぞって興味を示していることに注目したい。「エリート」と呼ばれる人であっても、最終的に求めているものは、他の人間と同じなのだ……。

エリートを自分とは全く違う存在のように感じていた人々にとっては、そうした発見が自分にとって「ポジティブ」に受け止められるニュースだったからこそ、さらに話題となったのかもしれない。

今回は、この「ポジティブ心理学」という考え方をマーケティングに活かし、ユーザーとの関係性をより深める方法について考えてみよう。

「ポジティブシンキング」とは別物である

世間であふれ返っている「ポジティブ」という言葉。

「なんでもかんでも前向きに考えりゃいいってもんじゃない!」と、この言葉自体に、ネガティブなイメージを持つ人も少なくないだろう。

だが、ポジティブ心理学とポジティブシンキングは別物である。後者は、ネガティブな側面を否定して、発想の転換をはかる考え方であることが多いが、前者では、ポジティブな側面とネガティブな側面、両方の“バランス”を重視する。

つまり、良いところ、悪いところを含めた「ありのままの自分」を認め、「なりたい自分」になるための努力を続けていくという主旨なのだ(大ヒットした『アナと雪の女王』の主題歌そのものである)。

そして、この考え方は、個人の人生にはもちろん、企業の発展にも貢献することが各種データから明らかになっている。

繁栄(Flourish)への方程式

ポジティブ心理学では、最終的に目指す「充実期」のことを、繁栄(Flourish)と呼び、そこに至るまでに必要な5つの要素を「PERMA」というもので表している。

この考え方を、マーケティングに応用してみよう。

positive-psychology_2.png出典:一般社団法人日本ポジティブ心理学協会

P : ポジティブ感情(Positive Emotion)

「感情」は、人の判断に大きな影響を与える。

心理学者のBarbara Fredricksonは、「ポジティブな感情には、良い思考パターンや行動を起こさせる効果があり、相手に対しても“Me”という考え方から“We”という考え方を持ちやすくなる」と述べている。

つまり、ポジティブな感情は、人に対して親愛を感じさせ、オファーなどを受け入れやすくするという。

まずは、企業自身がポジティブな感情を持とう。それに対し、顧客は無意識のうちに“Welcome感”を感じ取るものだ。

E : 没頭(Engagement)

自分のやっていることに時間も忘れるほど没頭する状態をフロー(Flow)という。

そして、ここで言う没頭(原語はEngagementだが、次項にあるマーケティング用語のエンゲージメントとは意味が異なる)は、フロー状態になるために、文字通り“没頭”して、長期的に、顧客に満足を与える手法とは何かを模索することである。

R : 関係性(Relationship)

これが、マーケティングで言うエンゲージメントに当てはまる。

ポジティブな体験は、ポジティブな関係性の始まりだ。顧客に対し、ポジティブな関係性の始まりを演出し、時間をかけて紡いでいこう。

たった1度の商取引でも、常に顧客との関係性をつくる“きっかけ”であることを忘れずに。

M : 意味・目的(Meaning and Purpose)

顧客に対して、物理的なメリット以外のものを提供できているかを考えよう。そこに、企業自身も向上させる“何か”を見出せれば理想的だ。

A : 達成(Achievement)

まずは、小さな目標を立て、それを達成する喜びを味わおう。そこから、大きな目標を立て、それを達成するため決して傍観者にならずに、常に実践者として臨む。

そうすれば、たとえ目標が達成されなくても、強い充実感が残り、次の戦略への活力となるはずだ。

企業の「目的」そのものが「幸せ」という発想

このポジティブ心理学を起用して成功した企業に、Zapposがある。

Zapposが掲げるのは、ズバリ「Delivering Happiness:A Path to Profits, Passion, and Purpose(幸せを届けよう:利益・情熱・目的への道)」だ。

つまり、企業の存在目的そのものが、「企業」の幸せであり、「従業員」の幸せであり、ひいては「顧客」の幸せであるという発想なのだ。

必ずしも一致しないはずのステークホルダーの利害を統合しているところに、「成功したから幸福になるのではなく、幸福だから成功する」という、ポジティブ心理学の真髄を感じないだろうか。

参考元: 一般社団法人日本ポジティブ心理学協会 How Positive Emotions Increase Long-Term Conversions and Customer Lifetime Value 『顧客が熱狂するネット靴店 ザッポス伝説―アマゾンを震撼させたサービスはいかに生まれたか』(トニー・シェイ著 本荘修二監訳 豊田早苗/本荘修二訳) 『幸福優位7つの法則 仕事も人生も充実させるハーバード式最新成功理論』(ショーン・エイカー著 高橋由起子訳)

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