マーケティング活動の効果を高めるパーソナル・ブランディングとは?

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米国の大手PR会社バーソン・マーステラが行った調査で、企業評価の48%はCEOによって判断している結果からも、企業のトップ個人と企業のブランド力には強い相関があることが分かります。

また、購買プロセスが複雑で高度な製品・サービスになると、パーソナル・ブランディングによって確立された信頼、信用イメージは、購買決定要素となり得ます。そういった傾向が強いBtoBビジネスでは、パーソナル・ブランディングはセールスやマーケティング活動の効果を高めるといわれています。

ここでは、パーソナル・ブランディングの基本情報、事例と構築手順について紹介していきます。

 

パーソナル・ブランディングとは

企業のCEOもしくはそれの代替えとなる主要なポジションにいる一個人をブランディングすることを指します。企業の経営責任を負い、業務執行において重要な役割を担う強い権限を持つ個人をブランディングし、認知度を向上させることが、企業ブランディングや製品・サービスブランディングを強固にする効果があります。

(下図がそれぞれブランディング活動の位置づけ)

図1.png

ここで補足です。近年、セルフ・ブランディングという用語もよく耳にするかと思いますが、パーソナル・ブランディングとセルフ・ブランディングの意味は異なります。セルフブランディングは、企業や組織に所属しない個人をブランディングすることを指し、企業の利益向上を目的としない点で大きく異なります。

 

パーソナル・ブランディングをする5つのメリット

パーソナル・ブランディングは、企業や製品販売などに相乗効果をもたらします。下記に具体的な5つのメリットをご紹介します。

 

1.企業やフィロソフィーについて一から説明する必要がなくなる

パーソナルブランディングによって、知名度が確立できれば、いちいちプレゼンや商談で、自社について事細かくに説明するプロセスが省け、本題に注力することができます。ベンチャー企業や中・小企業の方は経験があるかと思いますが、企業のブランド力がない場合の営業活動は信頼、認知の確立から始める必要があり、購買までのプロセスが増えてしまうため、すでにブランド力のある企業に比べて営業活動が長期化します。また、ウェブサイトや一従業員からフィロソフィーを伝えるよりも、経営に携わる一個人からの発言は、説得力が高く印象に残りやすくなります。

 

2. 人材採用のコストを抑え、効果をあげる

就職決定企業に決めた理由のランキングでは、社会貢献度、職場雰囲気、仕事内容、将来性、福利厚生、有名企業といった理由があげられています(マイナビ2016年調べ)。これらの魅力はパーソナルブランディングの活動を通して、差別化ポイントとして世間に発信することが可能です。企業という大きすぎる組織よりも、経営層の個人のから発信されるメッセージには、ストーリーがあり、採用活動をしている個人の心に響きます。この結果、ロイヤリティの高い、志望度の高い人材が集まりやすくなり、流動化を防ぐというメリットもあります。

 

3. セールス部門やマーケティング部門の成約率がアップする

パーソナルブランディングによって確立された企業イメージが、製品やサービスの高付加価値となる場合があります。高付加価値とは、主に、競合他社が容易に真似できない技術やノウハウのある製品はサービスを一般的に指しますが、ここにブランディングも該当します。その企業にしか持ちえないブランド力をパーソナルブランディングによって明確に発信できていれば、それが購買決定要素の一つとなるため、セールス、マーケティング活動の効果を後押しします。

 

4. マーケティングコンテンツが正確に、多くの人にリーチする効果が見込める

企業が発信するコンテンツに比べ、特定した個人から発信されるコンテンツは、企業アカウントよりも強い拡散力があります。パーソナルアカウントのフォロワーは、発信者にすでに興味・関心が高い、もしくは一ファンでありロイヤリティが高い傾向にあるからです。コンテンツが確度の高い層にリーチし、かつフォロワーがコンテンツをシェアすることで、共通の領域に興味・関心がある、もしくは関連のある層へ的確にリーチしていきます。

 

5. 自尊心を高めることができる

これは、パーソナルブランドをする個人のメリットです。パーソナルブランド力をつけることで、自信がつき、自尊心が高まります。パーソナルブランディングを確立する過程で、業界における自分の価値、専門性や強みが明確になります。

 

 

パーソナル・ブランディングの事例

パーソナル・ブランディングで成功をしている3人をご紹介していきます。

 

アリアナ・ハフィントン

HuffPostの創業者アリアナ・ハフィントンは、「メディア界でもっとも影響力のある女性」に選ばれる(2009年フォーブス誌)強力なパーソナルブランドを持つ一人です。2013年にローンチされた日本版は、2018年2月時点で、2170万ユーニークユーザーを記録するニュースとブログの要素を組み合わせたリベラル系オンラインメディアです。

彼女は、創業当初よりメディアに多く露出し、ハフポストの創業理念や、彼女自身が仕事を成功させる上で実践してきたノウハウを発信してきました。

 

ハフポストでは、アリアナ・ハフィントンの記事も創業当初より投稿され続けています。(2013年時点では2日に1回のペース)

また、アリアナ・ハフィントンはビジネスで成功するためには睡眠が重要であることを独自の考えとして世に啓蒙しています。書籍やTEDトーク、各メディアで行っている The sleep revolutionをまとめたサイト「ARIANA HUFFINTON」も運営しています。

 

 

ソフトバンク/孫正義社長

1981年に、「情報革命で人々を幸せに」というビジョンの下、ソフトバンクを創業した孫正義社長のパーソナルブランディングが、ソフトバンクの企業ブランドを共に成長させてきました。孫正義社長は、通信事業だけでなく、最先端テクノロジーやビジネスモデルに高い興味を持ち、同分野への企業への長期的投資を目指した財団を設立。震災後には自然エネルギー財団も設立しています。

孫正義社長の存在が一般に広まったのは、ソーシャルメディアを使ったパーソルブランディングも一つの理由です。2015年頃までに積極的に行っていたTwitterが認知度アップに大きく影響しました。246万人のフォロワー(2018年4月時点)をもつTwitterアカウントでは、ビジネスや社会問題、通信業界に関する独自の見解をつぶやき、多くのフォロワーにコメント、シェアがされてきました。孫社長は、論理的見解だけでなく、独自の感情や想いを交えたビジョンを発信することで、投資家やビジネスマン、消費者の共感を得てきました。

 

 

グロービス経営大学院/堀義人学長

グロービス経営大学院の創業者の堀義人学長は、社会人MBAの認知度を高め、同校の入学者数は10年で10倍という偉業を達成してきました。堀学長は、グロービス経営大学院が運営するオウンドメディア「グロービス知見録」の中で、専門分野であるビジネス、MBAに関する個人の見解を発信しています。また、朝日新聞、プレジデントオンライン、ベンチャー通信オンラインなどのターゲットとなり得る人物にアプローチしやすいウェブメディアや、自著書籍の出版を通して、パーソナルブランドを確立しています。

 

 

パーソナルブランディングの5つの手順

それでは、実際にパーソナルブランディングの確立を目指す場合の手順をご紹介していきます。

 

ステップ1:ペルソナ設定

企業ブランディングではステークホルダー、製品ブランディングでは消費者に向けてブランディング活動をしますが、パーソナル・ブランディングでは個人との関係性を構築していきます。自分のブランディング活動をどういった個人に発信していきたいのかを明確にするペルソナ設定は、より具体的な計画を立てるために、重要なプロセスです。

 関連資料:BtoB 向けペルソナ作成ワークブック

ステップ2:ミッション・ステートメントを立てる

ミッション・ステートメントを考える際に、下記の3つの問いがヒントとなります。

 

問1:自分のパーソナルプロフィールの差別化ポイントは?

どういった責任あるポジションであるのか、どういった専門領域にいるのか? 他者と差別化が図れるポイントを過去と現在の視点でリスト化し、まとめます。

 

問2:ペルソナに共感を得られる自分の価値とは?

人々の共感を得るポイントは、「なぜ?」にあります。なぜ、その企業でその役職を担っているのか。何があなたを突き動かしているのか?例えば、業界のボトムアップ、イノベーション、自分の信念を共有していくこと、仕事を通して人々に刺激を与えサポートすること、などが挙げられます。

 

問3:将来の明確なプランニングは?

3ヶ月後、半年後、1年後、5年後のスパンでどんなことをなし得たいのかを考えます。大いなる目標は、ペルソナの期待感を高め、具体的なプランの進捗報告は、その人物の信頼度を高めます。

 

これらの問いを掘り下げ、統合したものがミッション・ステートメントになります。ただの、経歴やこれまで成し遂げてきたことを羅列するだけでは、受け手の共感を得ることはできません。論理的かつ感情面に訴えかけるミッション・ステートメントを目指しましょう。

 

ステップ3:パーソナルブランドを発信する

ステップ1で明確にしたパーソナル・プロフィールとミッション・ステートメントを軸に世論へ、個人の専門領域に基づいた見解、意見を発信していきます。自分の存在を認知させることのできる具体的な手法をいくつかご紹介します。

 

従来は、テレビや雑誌、新聞といったメディアが一般的でしたが、現在はそれ以外のオンラインメディアが多くあります。オフィシャルサイト上に、CEOブログを併設することも可能ですが、medium やnoteといった個人ブログウェブアプリケーションを使う人も増えています。従来のブログサービスとは異なり広告サービスが一切ありません。またソーシャルメディアとしての要素が高く、情報発信と人との繋がりを目的としたアプリです。Mediumはデザインも洗練されているにもかかわらず、特別な技術は必要とされないため、書き手にとってもストレスのない環境で情報発信することが可能です。 

また、ポッドキャストやYou tubeなどの動画は、感情面に訴えかけやすく、有用です。公の場となる、講演会や懇親会での意見交換の場で自らの意見を発言することも重要なパーソナルブランディング活動の一つです。

  

ステップ4:認知度を高め信頼を確立する

ソーシャルメディアを使ったコンテンツの拡散や書籍の執筆は、より多くのペルソナにリーチする手段です。専門領域が高い場合には、ホワイトペーパーなど執筆もその一つです。 

オンラインとオフラインの手法を戦略的に実施することで、パーソナルブランディングは着実に確立されていきます。

 

まとめ

パーソナル・ブランディングは、企業ブランディングや製品ブランディングとコア・バリューに強い関係性があり、相乗効果を発揮します。経営層のパーソナル・ブランディングでは、意志決定者や消費者などの一個人の感情面にアプローチがしやすく、ブランド構築がしやすい手法といえるでしょう。

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