「大人だって、○○したい」~ピーターパンなあなたに贈るARアプリ“kakutoAR”マーケティング事例

デジタルマーケティング
「AR(拡張現実)」「企画しだいで、まぁまぁ使えそう」
Webを学ぶために通った専門学校時代のノートには、汚い字でそう書かれていた。中年と呼ばれる年で入校したので、「まぁまぁ」とは、ずいぶんと「上から目線」のコメントである(苦笑)。
現在、ARアプリは、「まぁまぁ」どころか、「けっこうな」人気を博している。特に、印刷物の広告媒体からWebサイトに誘致するための有効なツールとして、注目されている。
今回は、そんなARアプリの魅力を、また“ひとあじ”違った視点で活用した「kakutoAR」のマーケティング事例をご紹介しよう。
目次
大人だって、落書きしたい
思い出してほしい。学生時代、ノートや教科書の隅っこに、落書きをしたことはないだろうか?
なかには、1ページではおさまらず、十数ページにもおよぶ大作を仕上げ、パラパラ漫画にして遊んだ人もいるはずだ。
なんとも単純な方法ではあるのだが、自分の書いたイラストが、実際に動き出したときの感動。そして、何度繰り返しても、「わぁ」と、思わず顔がほころんでしまうようなキラキラとした喜び……。
この“甘酸っぱい”感情を、大人になった私たちに、もう一度体験させてくれるのがARアプリ「kakutoAR」なのだ。企画・配信したのは、サインペンや絵の具でお馴染みの文具メーカー、「ぺんてる」である。
1.「できたらいいな」をかなえる魔法、ARアプリ「kakutoAR」の遊び方
出典:ぺんてる2014新着情報
ARアプリ「kakutoAR」の遊び方は、
1.専用の認識用イラストカードに、サインペンを使って、自由に落書きする(2014ワールドカップ開催を意識してか、“サッカー”がモチーフである) 2.スマートフォンに無料アプリをダウンロードし、書いたイラストを読み込む(AR画面をキャプチャーして、SNSで配信することも可能) 3.自分の書いたイラストが、そのままCGアニメーションで動き出す!!
というものだ。これこそ、AR技術が生み出した「ハイテク版」パラパラ漫画といっていいだろう。
2.もっと、もっと自由に。「大人だからこそ」の楽しみ方って?
出典:ぺんてる特設サイト
「う~ん。楽しいけど、子ども向けじゃないの?」
確かにARアプリの配信だけなら、ターゲットについてそう思われても仕方がない。
だが、「ぺんてる」では、「いいえ。“大人のあなた”へ贈ります」というメッセージを強調するため、ARアプリの配信と同時にイベントを開催することで、それを払拭し、魅力的なキャンペーンに仕上げている。
イベントの開催地は、大人の街の代表格ともいえる「銀座」。都内からも地方からもさまざまな人が集い、イベントショップを出店するロケーションとしては、抜群のエリアである。そこに、カフェバー「GINZA RAKUGAKI Caf? & Bar by Pentel」をオープンしたのだ。
しかも、このカフェバーは、ARアプリで使用できるイラストカードが配布され、それで遊べるだけではなく、テーブルや壁・床・窓ガラスなど、店内のいたるところに「落書き」し放題というコンセプトなのである。なんともワクワクさせてくれるではないか!
もう1つ、「夜の銀座で酒を飲みながら、落書きできる」という点が、個人的にはとても心に響いた。「夜の銀座」「酒」という、“超おとな”なキーワードと、「落書き」という“子ども、まる出し”なキーワードが、うまく融合しているからだ。
「こたつで、アイスクリーム」「地味な少女が、メガネを捨ててドレスに着替えた瞬間」etc……。例えはいまひとつだが、人は相反するものから生まれる「ギャップ」に非常に弱い。
このショップは期間限定のため、2014年7月に残念ながら終了したが、その“もくろみ”どおり、ユニークなコンセプトで、予約が殺到するほどの大人気となったようだ。
ARという「最新技術を取り入れただけ」で満足せず、「大人だからこそ」の楽しみ方を提供できたところが、今回の企画を成功させた最大の要因だろう。
まとめ:ピーターパンでもいいじゃないか
この事例から、気づいたことがある。
「大人だって、○○したい」という欲求は、成長した人々の心の奥で、静かに眠らされているのではないだろうか。
ピーターパンシンドロームという言葉に代表されるように、大人の見識が支配する世の中では、「未熟」で「悪い」ものとされる、「自己中心的」で「子どもっぽい」欲求。
それを、「大人にならなくても、いいじゃないか」と抱きしめ、満たしてくれる“ウェンディ”のような役割をはたすマーケティングが、これからの時代には、最新技術に匹敵する価値を生み出すのかもしれない。
参考元:?ぺんてる2014新着情報?ぺんてる特設サイト
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