非営利団体のコンテンツマーケティングにも「ひとひねり」加えよう!動物保護施設の海外事例3選

コンテンツマーケティング
ビジネスにおけるコンテンツマーケティングの目的の一つは、収益を上げることだ。非営利団体の場合は、寄付金を増加させることになるだろう。
非営利団体でも、動物の保護施設の場合はどうだろうか? 寄付金に加えて、動物たちの里親とボランティアの獲得も大事な目的だ。
本記事では、海外の動物保護施設三つを取り上げ、それぞれがどのようなコンテンツマーケティングを行っているかをご紹介する。
緻密な戦略で勝負するAustin Pets Alive!
Austin Pets Alive!は、アメリカのテキサス州オースティンにある、犬と猫の保護施設だ。
実は、オースティンはアメリカ最大の「ノー・キル」(施設で保護される動物の90%を、殺処分しない)都市。Austin Pets Alive!でも、これまでに2万5000匹以上の犬や猫を安楽死から救っている。
公式サイトで、注目したいポイントが二つある。一つ目は、常に100人ほど存在するボランティアが作成している、バラエティ豊かなコンテンツだ。動物たちのプロフィール、画像、動画、ブログ記事、ハウツーガイド、インフォグラフィックスなど、コンテンツ数の合計は何千にもなる。
特に重要なのが、各動物の紹介コンテンツだ。里親になるのが可能な動物の一覧ページで、気になる画像をクリックすると、その犬や猫の基本情報や性格を知ることができる。また、複数の画像や動画の閲覧も可能だ。
以下は動画の一例である。作成しているボランティアの、犬に対する愛情が伝わってくる作品だ。
Clementine(Austin Pets Alive!による犬の紹介動画の例)
http://www.youtube.com/watch?v=p1eS2q1sGjM
公式サイトの訪問者は1日約2600人、1人あたりの平均閲覧数は約6ページとのことなので、悪くない。
二つ目のポイントは、CTA(Call To Action)だ。公式サイトの全てのページに、寄付を呼びかける、見やすくて分かりやすいCTAボタンが設置されている。
寄付といっても、お金だけではない。おもちゃやドライフードなどの不足しているもののリストや、スポンサー希望者のページへのリンクも貼られている。
こうした細やかな工夫が、全て結果につながっていくのだろう。私たちも、ぜひ見習いたいものである。
ユニークなキャンペーンを仕掛けるThe Lost Dogs' Home
オーストラリアのメルボルンにあるThe Lost Dogs' Homeは、1910年に創設されたオーストラリア最大の動物保護施設。年間3万1000匹以上の犬や猫を保護している。
この団体が行っているマーケティングで特筆すべきなのは、興味深いキャンペーンやプログラムだ。
その一つが、「Human Walking Program」。犬の参歩であれば「Dog Walking」のはずだが、「Human Walking」となっている。
そう、これは人が犬を散歩させるのではなく、犬が人を歩かせるというもの。つまり、人間側が癒されて、救われるキャンペーンなのだ。
昼休みにオフィスを抜け出して、犬のセラピーを受けた数は5000人以上。そして、犬たちは皆、里親を見つけられたとのこと。また、次の動画は56万回以上も再生されている。
The Human Walking Program
http://vimeo.com/92823193
長年The Lost Dogs' Homeは、動物保護関連にありがちな、涙を誘うタイプのCMで勝負してきた。しかし、効果が薄れてきたため、大きな方向転換を図ったのだそうだ。このプログラムの姿勢やチャレンジから、私たちが学べることは多いのではないだろうか?
小規模ながらも基本を押さえているFeline Rescue, Inc.
アメリカのミネソタ州セントポール市にあるFeline Rescue, Inc.は、1997年に設立された猫の保護施設。収容限度が70匹なのでかなり小規模だが、安楽死はほぼ100%させないというポリシーを持っている。
実は、筆者は10年以上前にFeline Rescue, Inc.でボランティアをしていた時期がある。今回この記事の執筆をきっかけにWebサイトを訪問し、コンテンツマーケティングをしっかり取り入れていることを知った。
ブログやそれぞれの猫の紹介といったコンテンツを提供し、Twitter、Facebook、YouTube、Pinterestでも情報発信している。ささやかな規模ではあるが、コンテンツマーケティングの基本をちゃんと押さえていることを頼もしく感じた。
中でも目を引いたのが、卒業生(?)たちのコーナーだ。ここでは、Feline Rescue, Inc.から巣立った猫たちのその後の様子が、里親たちのつづるメッセージを通して紹介されている。この心がほっこりする「ストーリー」が、強力なコンテンツのひとつであることは間違いない。
最後に、Feline Rescue, Inc.のスローガンをご紹介する。
「Kneading paws, needing homes」 (意訳:足でふみふみする猫たちは、お家を必要としています)
「Knead(ふみふみ)」と「need(必要)」、「paws(足)」と「homes(家)」をかけている。印象的で可愛らしいと同時に、強く心に響くキャッチコピーではないだろうか。
出典:スローガンと、卒業生のその後の様子が分かるコンテンツの一例(Feline Rescue, Inc.のWebサイトより)
最後に
コンテンツマーケティングでやるべきことは、企業でも非営利団体でもほとんど変わらないのが分かるだろう。また、次のような共通点が見えてくる。
・訪問者に役立つ、または楽しめる情報を提供する ・ブランド/団体そのものや、行っている活動の認知度を高める ・見込み客/協力者との関係を構築する ・ファンを増やす ・Webサイトへのトラフィックを増やす
筆者は今回、非営利団体の事例を知ることで、コンテンツマーケティングの強力さ、幅の広さを改めて実感させられた気がする。たとえ小さな団体でも、多くの動物達を殺処分から救うことができるのだから……。
参考元: This Org’s Content Marketing Saves Thousands of Dogs and Cats From Euthanasia Each Year Austin Pets Alive! Why This Dog Adoption Initiative Is the Perfect Example of Content Marketing About The Lost Dogs’ Home Feline Rescue
関連記事: 非営利団体におくるコンテンツマーケティングのススメ 非営利団体におくる「ブログことはじめ」 小さな組織とIKEA(イケア)の異色コラボ!犬の里親探しプロジェクト「Home for Hope」
人気記事
関連記事