オンラインニュースの歴史ーオンラインニュースの問題点とは?

デジタルマーケティング
みなさんは毎日どうやって情報を取得しているだろうか?ネット上の大量のニュース記事に圧倒されているのではないだろうか? アメリカのベンチャー企業でマーケティング・ディレクターを務めるキャセー・ウインターズが、現在のインターネット上でのニュースの仕組みの問題点を解説してくれている。すごくまとまっていて、参考になるのでご紹介したい。
オンラインニュースの歴史ーオンラインニュースの問題点とは?
私は、ベンチャーで働き始めるようになって、インターネットでニュースを沢山読むようになった。業界の動きについていくには、インターネットのニュースを読むしかなかったからだ。またニュースを読む事で、他の人よりも先にビジネスチャンスをつかむ事も出来る。問題は、インターネットでニュースを配信する仕組みがうまく機能していないことだ。
オンラインニュースの問題点
具体的に説明しよう。毎日、多くのニュースが投稿される。ほとんどが、何の意味付けもされないまま忘れ去られていく。我々のようなプロフェッショナルにとっては、ニュースの持つ意味を正しく解釈してこそ、初めて価値が生まれる。「私にとって、このニュースはどんな意味があるのだろう?」との質問に答えられなければ、そのニュースは読む価値がないのだ。
さらにやっかいなのは、ニュースを提供するメディアが沢山あって、そこから大量のニュース記事が配信されるという事だ。量が多すぎるのである。ニュースサイト、ブログなどの多数の情報源からどれを購読するのか。どの記事を読むべきか。すべて我々読者が判断しないといけない。
問題を整理するために、オンラインニュースの歴史を見てみよう。
第1段階:プロによるキュレーションの時代
Webの黎明期には、多くの人は新聞社のニュースサイトやYahooのようなポータルサイトで、ニュースを読んでいた。インターネット以前と同様に、編集者が重要だと思う情報をニュースとして公開していた。読者は、プロの選んだ中から自分の好きな記事を読んでいたのだ。コンテンツの種類は多様で、質の高い分析をしているものもあれば、速報性を重視したニュース記事もあった。
第2段階:クラウドソース時代
次の段階は、ブログの登場だ。1999年にブロガーがサービスを開始し、2003年にはワードプレスが登場した。誰でも簡単にブログの作成ができる技術が提供されたのだ。ブロガーは受ける記事、すなわち、ニュース性、話題性の高い記事をブログに掲載するようになった。それまでプロが選別していたニュースが、素人の投稿するブログニュースとの競争にさらされるようになったのだ。
ブログニュースでは、深い分析を行った記事よりも、ニュースの速報性が重視される。ポータルサイトとニュースサイトは、編集サイクルを早めていき、リアルタイムにニュースを提供できるように対応を進めて行った。
速報性が重視された結果、分析や調査を必要とするニュースは、後回しにされるようになった。
一応、ブログにはコメント欄がある。そこで読者がニュースにコメントをつける事は出来る。ただ、コメント欄がブログ記事の下に追いやられている、コメントが読者全員に公開される、そして友人や知人とコメントをシェアする事は出来ないなどの問題があった。
第3段階:クラウドによるキュレーション時代
多くのオンラインニュースが出現し、最適なコンテンツを探すのが難しくなってきた事で、ひとつの解決策が生み出された。
Diggは2004年に、大勢の読者が、自分の見つけたニュース記事を投稿しあう事で、ニュースを探しやすくするサービスを開始した。(宗像 注:日本だと「はてなブックマーク」のようなサービスに近い。最近の例だと、NAVERまとめと(少しだけ)似ている)
Diggがサービスを開始した当初は、最新のニュースを提供することが中心だったが、やがて読者からの投稿数の多いニュースを優先的に表示するようになった。同様に、Redditも、「インターネットにおける新聞の第一面になる」になるというミッションのもとサービスを開始し、ニュースの共有が一般的になった。
第4段階:ソーシャルネットワーキング時代
DiggとRedditは、ITマニアの間で人気を博したが、一般のインターネットユーザーにとっては、かえって敷居の高いサービスになってしまった。DiggやRedditのユーザーは、独特のコミュニティを形成した。また、ニュースを表示するアルゴリズムが工夫された。一部のコンテンツは、トップページに表示され、多くの人に読まれるようになったが、多くのニュースは人の目に触れる事はなかった。
ITや政治の分野で、スーパー人気ブロガーが登場した。一方で、良い記事を書くライターでも、DiggやRedditのコミュニティに入り込めなかったり、最新の技術動向などを題材にしないライターにとっては、とても活用できるようなサービスではなかった。政治ニュースが、おもしろネタの画像と並べて表示されるので、技術に詳しくない一般の読者にとっては、かえって判りにくくなってしまった。
2006年、ツイッターが登場した。140文字で何でも書けるというフォーマットを決める事で、誰でも簡単にコメントを投稿したり、面白い記事を紹介する事ができるようになった。編集、解説、出版などを簡単にできる機能を提供した。
140文字という文字制限のおかげで、コンテンツは簡素化され、理解されやすい形になった。ブログを作る必要もない。ツイッターの登録・投稿は数秒でできる。さらに他のユーザーをフォローし彼らのコンテンツを読んだり、容易にコメントしあえるため、ネットワーク形成も簡単になった。Diggのような難しいサイトを使わなくても、自分自身でニュースを選別し意味づけすることができるようになった。
一方、ツイッターには問題もある。140文字という文字制限のため、多くのニュースはリンクだけで共有される。背景の説明や解説は一切ない。これではDiggやRedditと変わらない。たくさんのニュースが共有されるが、ほとんどは議論されない。
第5段階:ソーシャルコンテクスト時代
さて、次のフェーズには何が来るだろうか?私が期待していることは、多くの人によって、ニュースのコンテクスト(文脈や解説)が付与される、ソーシャル・コンテクストの時代だ。
ニュースの意味やその重要性がその読者によって検証される。読者は、進行中の会話やディスカッションを楽しむことができる。我々は、ある記事読んで思った事、感じた事を、インターネット上で他の人と共有する。そこでは、ニュース記事に対してフィードバックループが働くようになる。記事に対する読者のコメントが記録される事で、記事のもつ意味が明らかになり、読者はより深く記事を理解する事ができる。
ソーシャルコンテクストとは、どのようなものか理解するためには、Quibbというサービスを試してみるといいだろう。
Quibbは新しいWebサイトで、ユーザーが仕事で読んだ記事をシェアしたり、おなじ業界で働く人同士が、記事にコメントを付ける事が出来るサービスである。これにより、ブログのコメント欄とは別の場所で、同業界の人とニュース記事について話し合いをする事が出来るようになる。あなたの仕事にとって重要な記事を集めていく事が出来る。
Quibbでは、同業界の人達がコメントを付け合うので、なぜその記事が重要なのかが判る。将来、Quibbのようなサービスが、最新のビジネス情報に追随していくためのデファクトの方法になると思う。
なぜクラウドソースコンテクストが次に来ると考えているか。冒頭で述べたように、現状では、ニュースを共有しコメントする事が機能していないからだ。
多くの人は、怖さを感じてブログへのコメントしないし、もしコメントしたとしても、ページを一番下までスクロールしないとコメントは見えない。あなたがその記事を読んでいるのか、コメントをしたのかどうかは、ブログのコメント欄に行くまで判らない。
ツイッターも別の意味で機能不全を起こしている。ツイッターの文字制限のため、記事のリンクを投稿するだけの容量しか提供できていない。なぜある人がツイートしたのか、どんな事情・理由・意見があるのかはわからない。DiggとRedditは最も人気のあるニュースを表出・公開しているが、ギークでない一般の人には入りにくい上に、ディスカッションする場がない。
ソーシャルコンテクストに焦点をあてたサイトは、あなたにとって重要なニュースを届けてくれる。なぜそれが重要なのか、チームや同僚が同じものを読んだかどうかがわかる。そして、あなたがなぜそのニュースが重要なのかを説明することで、他の人に対して貢献することができる。コメントは一般公開もできるし、ネットワーク内の限定公開も可能だ。
まとめ
どうだろう?なかなか面白い記事だったのではないだろうか?
今やネットで情報を取るのは当たり前になったけれど、情報の絶対量が増えたせいで、本当に意味のある情報、役立つ情報というのが見つけにくくなっているのではないだろうか?
記事の中に書いてある通り、ニュース記事に対して、コメントを付けたり、意見を交換する事で、より深い意味付けが出来たら、もっともっとニュースの価値が高まるのではないだろうか?
Quibbというシリコンバレーのベンチャーがやっているサービスは、そうしたオンラインニュースの抱える問題点を解決しようとするサービスを提供している。まだ、クローズドβの段階で、シリコンバレーのベンチャー企業で働く人を中心にテスト利用を進めている所だ。僕も、毎日利用しているが、質の高さ、ディスカッションの深さが桁違いだ。
もし、Quibbを使ってみたいという人は、Message Leaf、もしくは、Twitter @sunaomunakata 宛に、簡単なプロフィールを添えて、ご連絡下さい。招待状を送ります。なお、現在β期間中で、テック系、ベンチャー系の人、限定となっているそうです。(日本語は未対応です)
この記事は、Casey Winters氏の好意により、彼のブログ記事を翻訳し掲載しています。 出典:Online News is Broken, or A Brief History of Online News and a Startup That’s Re-inventing It
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