企業が多数の顧客に直接アプローチするのではなく、ターゲット層が自らフォローしているインフルエンサーを通じてPRを行うことで効果が注目されているインフルエンサーマーケティング。
しかし、新しい手法であるがゆえに、どのように効果測定をすればいいかわからないという担当者も多いのではないでしょうか。マーケティング活動における効果測定は慣れていないとただでさえ難しいもの。今回は効果的なKPIの設定とインフルエンサーの実施にあたって肝心なポイントについてまとめました。
インフルエンサーマーケティングとは、特定のコミュニティに対して影響力のある「インフルエンサー」を介してターゲット層にアプローチする手法です。インフルエンサーには、俳優やモデルなど芸能人だけではなく、SNSやプラットフォームで多くのフォワーを持つブロガーやYouTuberのような個人も選ばれます。従来のように企業が消費者に直接情報を発信してもなかなか興味を持ってもらえない時代となり、その中でインフルエンサーを通じた情報の拡散は、フォロワーの興味や購買意欲をより効果的に喚起するとして注目されています。
ますます盛り上がりを見せるインフルエンサーマーケティングを自社でも実践してみよう、という企業も多いことでしょうが、実施にあたっては気をつけておきたいポイントもあります。1つが「目的」をはっきりさせること。ただ単に流行っているから、よいイメージを作れそうだから、というあいまいな理由でスタートしては、大きな効果も期待できません。自社の利益となる何がインフルエンサーマーケティングを実施するにあたっての目的なのか、事前に明確にしておきましょう。
インフルエンサーマーケティングで目指すものとしての例は、新しい製品やブランドの認知を向上させる、これまでリーチできていなかった層への認知を上げる、既存顧客のリピート率を上げる、などがあるでしょう。こうした目的をより具体化した指標は「KGI(Key Goal Indicator)」と呼ばれます。KGIは「最終目標を達成するための指標」なので、具体的に設定することがポイントです。先の例でいえば、「これまでアプローチできていなかった20代前半の顧客からの購入比率を10%上げる」や「現在30%のリピート率を50%まで向上させる」のように、誰が見ても「達成した・しなかった」がわかるようなKGIを設定します。
次に設定したいのがKPIです。これは「Key Performance Indicator」の略で、どちらかというとビジネスシーンではこちらの方がよく聞かれるかもしれません。混同しやすい言葉ですが、KGIは「結果」についての指標ですが、KPIは「過程」を評価するための指標です。つまり、KGIを達成するための取り組みをKPIで測る、ということになります。一般的にKPIを設定するにはSMARTを意識する、といわれます。このSMARTとは、以下の5つの言葉の頭文字をとったものです。
さて、そんなKPIですが、インフルエンサーマーケティングではどのように設定するのが適当でしょうか。代表的なSNSやプラットフォーム毎に見ていきましょう。
インフルエンサーマーケティングでもっとも注目されるのが写真の投稿をメインにしたインスタグラムです。インフルエンサーマーケティングの観点から見た他のプラットフォームとの違いは、URLを貼ってダイレクトに企業ページやプロモサイトに誘導するやり方ができないこと(URL自体は書き込めますが仕様としてリンクされないようになっています)。これはユーザの閲覧やその投稿を見てどのような行動をとったかの分析が難しいということでもあります。また、ハッシュタグの活用が他よりも重要になってくるという点も押さえておきましょう。KPIとしては以下のようなものが想定されます。
うまく活用すれば写真よりも大量の情報を効果的に発信できるプラットフォームがYouTubeです。インフルエンサーとしてはYouTuberと呼ばれる(いわゆる芸能人ではない)個人が大きな力を持っており、「xxを使って〇〇できるか試してみた」のように実際の使用シーンの投稿が期待できるところもポイントです。KPIとして考えられるのは以下のようなものでしょう。
Twitterはテキストと写真によるプラットフォームなので、ある意味これまでのWeb広告と似た感覚でKPIを設定できます。ただし、逆に文字と写真だけなので差別化が難しいこと、かなり広範な業種の企業が参入しているプラットフォームであることから、インフルエンサーマーケティングとして効果を生むには質の高いコンテンツが求められます。
インフルエンサーマーケティングにおいて重要なのは、どのような人物を「インフルエンサー」として起用するか。多くのフォロワーを抱える芸能人を起用したものの、狙いたい層にリーチできず結果的に購買にも結びつかなかったとなると、意味がありません。一般的に多くのフォロワーを抱えるインフルエンサーになるとその分エンゲージメントの率も下がることを覚えておきましょう。また、インフルエンサーの普段の投稿から、キャラクターやフォロワーのタイプが自社(またはPRしたい商品)に合っているか、を見極めることが重要です。特にどういったタイプのユーザがコメントや拡散などの反応をしているかは、一般的な認知とずれがある可能性もあり、大切です。注意したい点としては、#PRのタグをつけてもらうことや「(商品を)いただきました」など企業との関係性を明示して、ステマになってしまわないことです。
これらを踏まえたうえでインフルエンサーを起用したら、彼らのひらめきを生むような「ネタ」を企業側からはどんどん提供しましょう。あくまで彼らのクリエイティビティを信じ、自由な発想で投稿をしてもらうことが必要ですが、そのきっかけとなる情報やイベントは企業側しか提供できないのです。
インフルエンサーマーケティングは特定の人物を介するため、これまでのマーケティングとは少し違った発想も必要になってきます。そうした中で大切にしたいのは、インフルエンサーと良好な関係を築くことです。また、成功のために必要なKPIの設定をしたら、測定に関して専門のツールを使うことが望ましいといえます。企業の担当者がマニュアルで解析をするにはかなりの手間がかかるためです。そうした管理・評価プロセスは効率化して、自社の利益に効率的に貢献するインフルエンサーマーケティングを目指しましょう。