インターネットの世界では、膨大な情報が日々生み出され、更新されています。その中から必要な情報を見つけ出すために、多くの人が検索エンジンを利用しています。しかし、検索エンジンがどのようにして求める情報を提供しているのか、その仕組みを理解している人は多くはないでしょう。実は、検索エンジンの中核を担っているのが、「クローラー」と呼ばれるプログラムなのです。クローラーは、ウェブサイトを巡回し、ページの情報を収集することで、検索エンジンの情報源となるデータベースを構築しています。
本記事では、このクローラーの役割や動作原理、そしてウェブサイト運営者がクローラーとどう向き合うべきかについて、詳しく解説します。クローラーの特性を理解し、適切に対応することが、検索エンジン上での自社サイトの表示順位やユーザーの流入数に大きな影響を与える可能性があります。ビジネスにおける検索エンジンの重要性が増す中、クローラーについての知識は欠かせません。
クローラーとは、検索エンジンがウェブ上の情報を収集するために使用するプログラムです。「スパイダー」や「ボット」とも呼ばれ、インターネット上の膨大なウェブページを自動で巡回し、そのページの情報を収集・分析します。クローラーが収集した情報は、検索エンジンのデータベースに格納され、ユーザーが検索した際に適切な検索結果を表示するために使用されます。
クローラーの主な役割は以下の通りです。
例えば、あるブログに新しい記事が投稿されたとします。クローラーは、そのブログを定期的に巡回しているため、新しい記事の存在を発見し、そのページの情報を収集します。同時に、その記事に貼られた内部リンクや外部リンクの情報も分析し、リンク先のページの情報も収集します。こうして収集された情報は、検索エンジンのデータベースに反映され、ユーザーがその記事に関連するキーワードで検索した際に、検索結果に表示されるようになるのです。
クローラーは、その動作や役割から、いくつかの別名で呼ばれることがあります。
これらの別名は、クローラーの特徴をわかりやすく表現したものです。ただし、正式な名称は「ウェブクローラー」や「ウェブスパイダー」であり、一般的には「クローラー」という名称が広く使われています。
クローラーは、それぞれの検索エンジンごとに存在します。代表的なクローラーには以下のようなものがあります。
これらのクローラーは基本的な動作原理は同じですが、各検索エンジンのアルゴリズムに合わせて最適化されています。そのため、ウェブサイト運営者は、主要な検索エンジンのクローラーに対応したSEO対策を行う必要があります。
特にGooglebotは、シェアトップのGoogleの検索結果に大きな影響を与えるため、最も重要視されているクローラーと言えます。Googlebotには、以下のような特徴があります。
このように、クローラーの種類によって多少の違いはありますが、基本的にはウェブページの情報を幅広く収集し、検索エンジンのデータベースを構築するという役割は共通しています。ウェブサイト運営者は、主要なクローラーの特性を理解し、各検索エンジンに最適化されたSEO対策を行うことが求められます。
検索エンジンは、クローラー、インデックス、ランキングの3つの主要な機能で構成されています。これらの機能が連携することで、ユーザーに適切な検索結果を提供しています。
(図版Place holder:検索エンジンの仕組み)
クローリングは、検索エンジンの仕組みの中で最も基礎的かつ重要な工程です。クローラーがウェブページを発見し、そのページの情報を収集することで、検索エンジンのデータベースが構築されます。クローラーは、以下のようなプロセスでウェブページを巡回します。
クローラーが収集した情報は、インデックスと呼ばれるデータベースに格納されます。インデックスは、ウェブページの情報を検索可能な状態で保存したものです。ユーザーが検索エンジンで何かを検索すると、インデックスからクエリに関連するページが検索され、ランキングアルゴリズムによって順位付けされた上で、検索結果として表示されます。
つまり、クローラーは検索エンジンの仕組みの出発点であり、クローリングの質がインデックスの質に直結し、最終的な検索結果の質にも大きな影響を与えるのです。そのため、ウェブサイト運営者は、クローラーがサイト内のページを適切に巡回し、重要な情報を収集できるよう、サイト構造やページ設計を最適化する必要があります。
クローリングのプロセスは、以下のような手順で行われます。
以上のプロセスを大規模に繰り返すことで、クローラーはウェブ上の膨大なページを網羅的にクロールし、検索エンジンのデータベースを構築していきます。
ただし、実際のクローリングでは、以下のような課題に直面することがあります。
これらの課題に対して、検索エンジン各社は独自のアルゴリズムや技術を開発し、効率的かつ効果的なクローリングを実現しています。また、ウェブマスターツールなどを通じて、ウェブサイト運営者がクローラーに指示を出すこともできます。サイトマップの提出やクロール頻度の設定など、クローリングをコントロールする手段が用意されています。
クローラーは、ウェブページから様々な情報を収集します。収集する情報の種類と、それがどのように検索エンジンで活用されているかを以下に解説します。
これらの情報は、検索エンジンのアルゴリズムに入力され、検索結果の順位付けに利用されます。また、検索結果ページのスニペットやリッチリザルト(動画や画像などを含む検索結果)にも反映されます。
クローラーが収集した情報はすべてインデックスに保存され、必要に応じて随時参照されます。例えば、ユーザーが「Apple」と検索した場合、インデックスからAppleに関連するページが検索され、テキストコンテンツやメタ情報、リンク情報などが総合的に評価されて、検索結果が生成されるのです。
ウェブサイト運営者は、クローラーが収集する情報を最適化することで、検索エンジンからの評価を高め、検索結果での露出を増やすことができます。具体的には、以下のような対策が有効です。
このように、クローラーが収集する情報を理解し、それに合わせてウェブサイトを最適化することが、SEO対策の基本となります。
検索エンジンのアルゴリズムは常に進化し続けており、それに伴ってクローラーの役割や重要性も変化しています。初期の検索エンジンは、単純にキーワードの出現頻度などを基準にランキングを決定していましたが、現在でははるかに高度で複雑なアルゴリズムが使用されています。
例えば、Googleは2011年に「Panda」アップデートを実施し、ページの品質評価を強化しました。オリジナルで価値の高いコンテンツを持つページを高く評価する一方、コピーコンテンツやスパム的なページを減点するようになりました。これにより、クローラーはページの品質をより深く分析することが求められるようになりました。
2012年の「Penguin」アップデートでは、リンクスパムへの対策が強化されました。不自然なリンクを大量に持つページを減点するようになり、クローラーはリンクの質や自然さを見極める必要が出てきました。
2015年の「RankBrain」は機械学習を用いたアルゴリズムで、ユーザーの行動を分析し、検索結果の最適化を行います。クリック率や滞在時間など、ユーザーシグナルを考慮するようになり、クローラーもユーザー体験を推定するための情報収集が求められています。
さらに、2018年の「Medic」アップデートでは、EAT(Expertise, Authoritativeness, Trustworthiness)という概念が重視されるようになりました。専門性、権威性、信頼性の高いコンテンツを評価するため、クローラーは著者情報や参照元、レビューなども分析するようになっています。
このように、検索エンジンのアルゴリズムは年々高度化し、単なるキーワードマッチングから、コンテンツの質、ユーザー体験、専門性など、多様な要因を考慮するようになっています。それに伴い、クローラーの役割もより広範囲で複雑なものになっていると言えます。
現代の検索エンジンにおいて、クローラーは以下のような役割を担っています。
ウェブサイト運営者は、こうした検索エンジンアルゴリズムの進化や、クローラーの役割の変化に合わせてSEO対策を行う必要があります。キーワードを詰め込むだけではなく、ユーザーに価値のあるコンテンツを提供し、自然なリンクを獲得し、ユーザー体験を高める工夫が求められます。また、EATを意識し、専門性や信頼性を高めることも重要です。
検索エンジンとクローラーは、より良い検索体験を提供するために進化し続けています。ウェブサイト運営者は、その変化を理解し、適切に対応することが求められているのです。
クロール最適化とは、クローラーがウェブサイトを効率的に巡回し、重要なページを確実にインデックスに登録できるようにすることです。クローラーの巡回を最適化することで、検索エンジンからの評価を高め、検索結果での露出を増やすことができます。
クロール最適化の目的は、以下の3つです。
クロール最適化の基本的な考え方は、「クローラーにとって優しいウェブサイト」を作ることです。具体的には、以下のような取り組みが必要です。
また、クロール最適化には以下のような具体的な手法があります。
これらの取り組みを通じて、クローラーがウェブサイトを効率的に巡回できるようになれば、検索エンジンからの評価も高まります。クロール最適化は、SEOの基本であり、長期的な検索パフォーマンスを左右する重要な要素なのです。
ウェブサイトの構造とナビゲーションは、クローラーがサイト内を巡回する際の道しるべとなります。ユーザーにとっても、情報を探しやすく、直感的に操作できるサイト構造は重要です。サイトの構造とナビゲーションを最適化することで、クロール効率とユーザー体験の両方を高めることができます。
最適化のポイントは以下の通りです。
例えば、EC サイトの場合、以下のようなカテゴリ設計が考えられます。
このように、階層を3階層程度に抑え、各カテゴリページからサブカテゴリページへ内部リンクを設定します。また、パンくずリストを設置し、ユーザーとクローラーがサイト構造を把握しやすくします。
ニュースサイトの場合は、以下のような構造が考えられます。
記事ページには、関連記事へのリンクを設置し、ユーザーの回遊を促します。また、全記事ページへのリンクを集めたHTMLサイトマップを用意することで、クローラーの巡回をサポートします。
サイト構造とナビゲーションの最適化は、SEOの基本中の基本です。ユーザーとクローラーの両方に優しいサイト設計を心がけることで、検索パフォーマンスの向上につなげましょう。
検索エンジンのクローラーは、ユーザーにとって価値のある良質なコンテンツを高く評価する傾向があります。オリジナリティが高く、関連性の高いコンテンツは、クローラーからも好意的に受け取られます。
クローラーから高く評価されるコンテンツの特徴は以下の通りです。
また、検索クエリとの関連性の高さも、クローラーによる評価を左右します。ページのテーマやトピックを明確にし、タイトルやメタディスクリプション、見出しにキーワードを自然に盛り込むことが大切です。
内部リンクと外部リンクも、クローラーがウェブサイトを評価する上で重要な要素です。適切にリンクを設置することで、クローラーからの評価を高められます。
内部リンクは、サイト内の重要なページに適切に割り振ることが大切です。リンク元のアンカーテキストには、リンク先ページの内容を表すキーワードを含めると良いでしょう。また、ユーザーの回遊性を考慮し、関連性の高いページ同士を内部リンクで結ぶことも有効です。
一方、外部サイトからの被リンクは、サイトの権威性や信頼性の指標となります。質の高いコンテンツを提供し、他サイトから自然にリンクを獲得することが理想的です。ただし、被リンクの獲得に際しては、スパム的なサイトからのリンクは避けるなど、リスク管理も必要です。
サイトマップとrobots.txtは、クローラーの効率的なクロールをサポートするためのツールです。これらを適切に設定することで、クローラーからの評価を高められます。
サイトマップには、ウェブサイト内の全ページのURLを網羅的に記載します。これにより、クローラーはサイトの構造を理解しやすくなり、新しいページや更新されたページも速やかに発見できるようになります。
一方、robots.txtでは、クロールしてほしくないページやディレクトリをクローラーに指示できます。クロールの負荷を軽減し、重要なページに優先的にクロールリソースを割り当てることができるのです。
ただし、robots.txtはクロールの制御のみを行い、インデックスには直接影響しないことに注意が必要です。クロール以外の施策と組み合わせて活用しましょう。
ウェブサイトの表示速度と、モバイル端末での使いやすさも、クローラーによる評価を大きく左右します。
表示速度が遅いサイトは、ユーザー体験が悪いだけでなく、クロールの効率も下がってしまいます。画像の最適化やブラウザキャッシュの活用など、さまざまな高速化の手法を実践することが大切です。
また、モバイル端末に最適化されていないサイトは、クローラーからも低く評価されがちです。レスポンシブデザインの採用や、タップターゲットのサイズ調整など、モバイルユーザーに配慮したサイト設計を心がけましょう。
サイトスピードとモバイルフレンドリーは、ユーザー体験とSEOの両方に大きな影響を与えます。これらの要素をしっかりと最適化することで、クローラーからの高い評価を得られるでしょう。
イノーバでは、ユーザー目線とクローラー目線の両方を兼ね備えたコンテンツ設計を心がけています。ユーザーにとって価値があり、クローラーにとっても評価の高いコンテンツを作ることが重要だと考えているからです。
具体的には、以下のようなコツを押さえています。
このように、ユーザーとクローラーの両方を意識したコンテンツ設計を行うことで、良質なコンテンツとSEOの相乗効果を生み出すことができます。イノーバでは、こうしたノウハウを活かし、クライアントのコンテンツマーケティングを支援しています。
コンテンツマーケティングにおいて、クローラー対策の重要性は年々高まってきました。クローラー対策は一時的な取り組みではなく、継続的なサイト運営の中に組み込んでいくことが肝要です。本コラムで紹介したイノーバの考え方や手法が、皆さまのコンテンツマーケティングの一助となれば幸いです。クローラー対策に関するご相談は、ぜひイノーバまでお寄せください。
クローラーは検索エンジンのためにWebページを巡回しますが、スクレイピングは特定の情報を抽出することが目的です。
サイトの規模やページの更新頻度、権威性などによって異なります。人気のサイトは1日に複数回クロールされることもあります。
robots.txtでクロールがブロックされている、noindexタグが設定されている、canonical違反などが原因として考えられます。
サーバーエラーやブロッキングの設定を確認します。robots.txtやhtaccessの記述ミス、ファイアウォールの設定などをチェックしましょう。
サイトマップを提出する、内部リンクを増やす、定期的にコンテンツを更新する、外部からの被リンクを増やすなどの方法があります。
Google Search Consoleなどのツールで、クロールエラーやインデックス状況、検索パフォーマンスなどを確認できます。
GooglebotはJavaScriptを解釈できるため、動的コンテンツもクロールされます。ただし、適切に実装する必要があります。
画像や動画に関連したテキスト情報(ファイル名、alt属性、キャプションなど)を最適化することで、クローラーによる認識を高められます。
各言語版のURLを明確に分離し、HreflangタグやXMLサイトマップを使って言語バージョンの関係性をクローラーに伝えることが重要です。
301リダイレクトを使って旧URLから新URLに適切に転送することが大切です。サイトマップの更新とSearch Consoleでの変更通知も忘れずに行いましょう。