MBA思考 vs.起業家思考:米国ヴァージニア大学教授の研究の紹介

経営・ビジネスハック
ビジネス環境が激変するなかで、どうやってキャリアを築いていくのか模索している人が多いのではないだろうか?
MBAを取って経営者を目指したい、独立して起業家になりたいなど、目指すゴールは人それぞれだ。
今回は、MBAの思考パターンと起業家の思考パターンを分析したユニークな論文をご紹介したい。
目次
MBA思考 vs.起業家思考
バージニア大学ダーデン経営大学院で起業論を研究しているサラスヴァシー教授は、長年に渡り起業家についての調査を積み重ねて来た。
- 何が起業家を起業家たらしめるのか?
- 起業家は、特有の考え方や思考スタイルを持っているのか?
そして、彼女は、起業家の思考法とMBAの思考法を比較する事で、両者に大きな違いがある事を発見したという。
MBA的思考モデル
MBA的な思考モデルとは、以下のような方法である。
- 初めに何か具体的な目標を設定し、
- それを達成するために必要な手段は何か?と考え、
- 選択肢をスピード、コスト、インパクトなどで評価して、
- 理論的にベストな選択肢を探す
以下の図を見ると分かりやすいだろう。左が手段、右側が目標だ。決まった一つの目標に向けて、手段をリストアップしていく。
これを、彼女は、Causaul Reasoningと名付けている。
Causalというのは、原因があって結果があるという事、Reasoningは予測する事、すなわち、原因と結果という考え方で、予測する方法である。
MBAは、この思考モデルを用いてビジネスプランの策定やROI(投資回収率)の計算などに取り組んで行く。
どうだろう?会社で働いている人には、馴染みのある考え方ではないだろうか?
起業家の思考モデル
一方、起業家たちの思考法は極めてユニークだ。
彼らは、
- 特に固定的な目標は設定しない。
- 自分たちの資産や能力などの制約条件に応じてビジネスを展開する。
- 創業メンバーや関係者の間でのディスカッションやブレインストーミングを行い、
- 新しく浮かんで来たビジネスアイディアなどに即応して、目標を変えて行く。
そして、起業家の手法の特徴は、外部から資金調達などをせずにコツコツとビジネスを育てたり(ブートストラッピングと呼ぶ)、プロトタイピング、ゲリラマーケティングなどの手法を展開して行く。
以下の図のイメージだ。左側が手段、右が目標だ。手段から、目標を設定していく方法である。
目標ありきではなく、むしろ、今自分が持っているリソースを最大限に活かしていく、というのが特徴だ。
2つの思考モデルの違い
さらに、2つの思考モデルには、以下のような違いがある。
- MBAは、利益をいくら得られるかを予測する。起業家は、いくらまでなら損失可能かを予測する。
- MBAは、競合を分析し、シェア奪う事を考える。起業家は、人と人とのつながりを重視する。
- MBAは、未来を予測する。起業家は、未来をコントロールする。
起業家が未来を作る方法
しかし、一体どのように未来をコントロールすると言うのだろうか?
その方法はこうである。
小額の資金を出来る限りかき集め、
不測の事態は、避けるものではなく、防御すべきものだと考える。
実際に不測の事態が発生した際には、素早い対応を取る。
このようなやり方によって彼らは、自らの力で未来を作り出して行くのである。
起業家が活用するリソースとは?
起業家は、3つのリソースを活用して、ビジネスを始める。
- 自分自身。自分がどんな人物か、価値観、能力などである。
- 知識。教育や専門知識、ノウハウ、経験など。
- 人のつながり。友人、ビジネスパートナー、人的ネットワークなどだ
起業家は、自分の持っているリソースを用いて、起こりうる未来、ビジネスへのインパクトなどを、日々想像し、実行に移していく。ビジネスプランは、日々の業務や、顧客・出資者・取引先などの反応を受け、変更・修正を繰り返す。
まとめ
どうだろうか?参考になっただろうか?
ハーバードビジネスレビューが、この論文を取り上げて、これからの時代は起業家的な発想が求められると主張している。
変化が激しすぎて未来を予測するのが困難だからだろう。これからの時代は、未来を予測するよりは未来を作って行く時代である。まさに、起業家的な思考法、行動様式が求められていると言えるだろう。
僕は、MBAを取得した後に転職をして、起業をしているので、このMBAと起業家の違いが良くわかる。MBAを取った事を良かったと思っているけれど、起業には直接役に立たないと実感している。むしろ、邪魔になる事さえある。
ちなみに、起業家的な思考法はトレーニングによって身につける事が可能だと言われている。僕も起業するに当たっては、ヴァージン・グループを創業したリチャード・ブロンソンや、アマゾンを創業したジェフ・ペゾスなどの、起業家の本を沢山読んだ。
そんな中でも、特に参考になったのは、ピーター・シムズの”Little Bets”である。翻訳(小さく賭けろ)が出ているようなので、ご紹介したい。深く考えずにやってみる、そういう考え方の重要性が理解できるだろう。
記事執筆:(株)イノーバ。イノーバでは、コンテンツマーケティングのノウハウを詰め込んだ無料のebookや事例集をご提供しています。ダウンロードはこちらからどうぞ→https://corporate.clst01.innova-jp.net/library/
Photo Credit:brexians
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